お役立ち知識

Q.従業員から副業の申出がありました。就業規則に則り拒否してもよいですか?

卸売業を営んでいます。従業員は20名。所定労働時間は一日7時間。休日は土曜・日曜。週の所定労働時間は35時間と定めています。さて、当社は就業規則において、従業員の副業・兼業を禁止しています。ところが、ある従業員から会社の休日にコンビニで働きたいとの申出がありました。子どもの学費の足しに、少しでも多く収入を得たいという理由です。就業規則どおりに拒否したいのですが、法的に問題はありますか?

 

A.就業規則を根拠として一律に拒否することは困難で、事案ごとに検討・対応する必要があります

厚生労働省・労働政策審議会安全衛生分科会の「副業・兼業に関する事業所調査結果(令和2年7月31日)」によれば、正社員の副業・兼業について、「医療・福祉」を除き、「認めていない」と回答した事業所の割合は「認めている」とした事業所を上回ったのに対して、非正規社員については、「複合サービス業」を除き、「認めている」事業所が「認めていない」事業所を上回りました。実際に副業・兼業を行っている労働者は、正社員・非正規社員全体で9.7%、希望する労働者は年々増加傾向とされています。

一方、判例等を見ると、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に自由であることから、会社が就業規則に則り 副業・兼業を認めないときは不法行為が成立するとして、損害賠償を命じた事例があります(東京都私立大学教授懲戒解雇事件(平成19年東京地裁)、マンナ運輸事件(平成24年京都地裁)。

また、厚生労働省のモデル就業規則は、労働者の副業・兼業を認める規定を定めています。

こうした中、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン(平成30年1月策定)」が令和2年9月に改訂されました。

〇 副業・兼業における労働者のメリット

・離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。

・本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。

・所得が増加する。

・本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

〇 企業のメリット

・労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得できる。

・労働者の自律性・自主性を促すことができる。

・優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。

・労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。

ディメリットについての記述は、ガイドライン上ありませんでした。私見では、メリットは労働者に大きく、企業にいささか小さいとも感じます。皆さんはいかがでしょうか?

なお、同ガイドラインは、例外的に副業・兼業の禁止又は制限が認められる場合として、次の4つを示しています。

①労務提供上の支障がある場合 ②業務上の秘密が漏洩する場合 ③競業により自社の利益が害される場合 ④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

司法面・行政面において、労働者の副業・兼業を原則肯定する方向にある中、就業規則の副業・兼業禁止規定を根拠に一律に拒否することは、もはや困難です。従業員が希望する副業・兼業の内容等を具体的に確認した上で、上記①~④のいずれにも該当しないのであれば、認めざるを得ないと考える次第です。

 

最低賃金が改正されます

首都圏における新たな最低賃金と引き上げ額は次のとおりです。

都道府県名

最低賃金(引き上げ額)

発効年月日

千葉県

925円(2円)

令和2年10月1日

東京都

1,013円(0円)

埼玉県

928円(2円)

神奈川県

1,012円(1円)

最低賃金法が施行されたのは、昭和34年(1959年)4月1日のことです。法律に基づいて賃金の最低限度額を定め、労働者に対し、その額以上の賃金支払を使用者に義務付ける制度です。仮に、労働者、使用者双方の合意の下に、最低賃金より低い賃金を定めても無効であって、使用者は最低賃金との差額を支払わなければなりません。民法に定める契約自由の原則の例外であり、強行法規又は強行規定と呼ばれるものです。違反した場合、最低賃金法により50万円以下、及び労働基準法により30万円以下の罰金を課せられることがあります。

最低賃金は、国の中央最低賃金審議会が示す引き上げ額を目安に、都道府県の地方最低賃金審議会から地域の実情を踏まえた審議・答申を得、異議申出に関する手続を経て、厚生労働省都道府県労働局長が決定します。国・地方とも、審議会は公益代表・労働者代表・使用者代表、それぞれ同数の委員により構成されます。

安倍首相の「全国平均1,000円の最低賃金を目指す」との方針の下、近年は3%前後の引き上げが続いていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響による雇用・経済の厳しい状況に鑑み、今年度、中央最低賃金審議会は目安を示さず、地方審議会に判断を委ねました。その結果、引き上げ額は1円~3円と、リーマンショック後の平成21年以来の低水準となっています。北海道、東京都、岐阜、京都、大阪、広島、山口の7都道府県が引き上げを見送った反面、若年層の流出を防ぐ観点等から、東北や山陰、四国、九州の各県が2円~3円引き上げているのが注目されます。また、改定後の最低賃金の全国平均は902円と、1円のアップにとどまりました。

最低賃金を満たしているか確認する方法を、千葉県を例に示します。

〇 正社員(週40時間勤務)の1カ月の給与=基本給+手当

これが、163,818円(925円×177.1時間)を下回っていると、最低賃金を満たしていない可能性があります。なお、計算の際には、次の手当は含まれないことにもご注意ください。

(1)精皆勤手当 (2)通勤手当 (3)家族手当 

(4)時間外、休日労働の割増賃金、及び深夜労働手当

 

労働者災害保険法が改正されました(令和2年9月1日施行

近年、政府は、労働者の副業・兼業を促しています。年々増加傾向にある副業・兼業に従事する労働者の労災補償を手厚くする観点から、労働者災害保険法(以下、「同法」と言います。)の改正が行われました。

同法第1条において、副業等に従事する労働者を、「事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(『複数事業労働者』)」と定義づけ、それらの業務上及び通勤途上の被災を対象として、複数事業労働者(以下、単に「同」と言います。)療養給付、同休業給付、同障害給付、同遺族給付、同葬祭給付、同傷病年金、同介護給付の各制度を新たに設けました。

改正の重要なポイントとして、保険給付額の算定方法の見直しが挙げられます。これまで、二以上の事業に使用される労働者が、労災により給付を受ける際の補償額は、被災事業のみの賃金をベースに算定していました。改正後は、被災事業と非被災事業、それぞれの賃金額を合算して算定します。仮に三の事業に従事する労働者であれば、三の事業それぞれの賃金額を合算します。

こうしたことから、二以上の事業に使用される労働者が労災給付の申請を行う場合、事業主の証明は被災事業場が、平均賃金算定内訳は使用している事業場それぞれが作成することとなります。

 

厚生年金保険法の改正について

厚生年金保険法の規定に基づき、令和2年9月から厚生年金保険の標準報酬月額の上限が変更になります。従前の標準報酬月額の上限等級(31級.62万円)の上に1等級が追加されることにより、次のとおり上限が引き上げられます。

【改正前】

月額等級

標準報酬

月額(円)

報酬月額(円)

保険料(円)

全額

(18.3%)

被保険者

負担分

(9.15%)

第31級

620,000

605,000以上

113,460

56,730

 

【改正後】

月額等級

標準報酬

月額(円)

報酬月額(円)

保険料(円)

全額

(18.3%)

被保険者

負担分

(9.15%)

第31級

620,000

605,000以上

635,000未満

113,460

56,730

第32級

650,000

635,000以上

118,950

59,475

 

今回の改正に伴い、改正後の新等級に該当する被保険者の方がいる事業主に対して、令和2年9月下旬以降、日本年金機構より「標準報酬改定通知書」が送付されます。

なお、標準報酬月額の改定に際して、事業主からの届出は不要です。

(出典:日本年金機構 令和2年7月20日)

7月の算定基礎届で第31級の決定を受けた方が、第32級に該当した場合は、10月支給の給料から保険料が変更になります。事務処理に誤りのないよう、改めてご注意をお願いいたします。

 

高年齢就業者に係る改正社会保険労働関係法令が施行されます

令和3年度以降、60歳以上の高年齢就業者に係る様々な社会保険労働関係法令の改正が施行されます。主なものは次のとおりです。

(1)令和3年4月施行

高年齢者雇用安定法の改正により、事業主の努力義務として、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、労使同意した上で雇用以外の措置を講ずることなど、70歳までの就業支援が求められます。

(2)令和4年4月施行

① 雇用保険法の改正により、複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者に雇用保険が適用されます。

② 厚生年金法の改正により、

・ 60歳から64歳に支給される在職老齢年金の年金支給停止基準が、28万円から47万円に引き上げられます。

・ 65歳以上に支給される在職老齢年金は、現在は退職時まで改定されませんが、毎年改定されることとなります。

・ 現在60歳から70歳までの間で選択できる年金受給開始時期が、60歳から75歳までの間に拡大されます。なお、国民年金法の改正により、国民年金でも同様に拡大されます。

(3)令和7年4月施行

 厚生年金法の改正により、60歳時に比べて賃金が75%未満に低下した被保険者に対し、低下率に応じて支給されている高年齢雇用継続給付金が縮小されます。

 

65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置について

高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者就業確保措置については、労働者側の希望を前提に65歳以上の就業確保を義務付けた平成24年改正が、大きな節目でした。当時は60歳で定年を迎えれば、完全引退が普通でした。ところが、年金支給開始年齢の65歳への引上げに伴い、賃金から年金への移行に空白が生じることとなり、65歳までの雇用が事業主に課されたのです。改正当時は、労使協定により制度適用対象者の基準を定めることが可能でしたが、翌年には、原則、希望者全員を65歳まで雇用しなければならないとされました。それから10年足らずの令和3年4月1日以降、努力義務とはいえ、事業主には70歳までの雇用確保が求められます。

改めて改正内容を整理すると、次のとおりです。

(1)70歳までの定年引上げ

(2)70歳までの継続雇用制度の導入

(3)定年廃止

(4)過半数組合又過半数代表者の同意を得た場合、次の制度を導入することができます。

① 高年齢者が希望するとき、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度

② 高年齢者が希望するとき、70歳まで継続的に、事業主が自ら実施する社会貢献事業か又は事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う貢献事業に従事できる制度

ただし、(4)の諸制度を導入できる事業主は限られると考えます。平成24年改正の際の実態からも、(2)70歳までの継続雇用制度の導入 が大半となりそうです。努力義務からのスタートですが、70歳までの雇用が義務となる日は遠くないかもしれません。

 

高齢労働者の就労環境向上のガイドラインが公表されました

超高齢社会を迎えるわが国において、高齢者の労働力確保は不可欠です。年金制度や社会労働法令の改正等とも相まって、高齢者の就労拡大が続き、60歳以上の雇用者数は過去10年間で約1.5倍に増加しました。そうした中で、高齢者の労働災害も増加傾向です。休業4日以上の死傷災害に占める60歳以上の割合は約26%で、29歳以下と39歳以下(いずれも約14%)の合計に匹敵する水準です。中でも、転倒災害、墜落・転落災害の発生率が若年層に比べて高く、特に女性で顕著です。加齢による身体機能の低下等に伴い、高齢者の労働災害発生率は高く、休業も長期化する傾向にあります。

本年3月、厚生労働省は、高齢者が安心して安全に働ける職場環境づくりを通じ、体力に自信のない人や仕事に慣れていない人を含め、全ての働く人の労働災害防止を目指す「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(通称:エイジフレンドリーガイドライン)を策定・公表しました。その概要は次のとおりです。

法令等による義務付けのあるものへの取組はもとより、それぞれの企業における高年齢労働者の就業状況や業務内容など実情に応じて、国や関係団体等の支援も活用しつつ、実施可能な高齢者労働災害防止に対策に積極的に取り組むことを求めています。言うまでもありませんが、ガイドラインは、あくまでも努力義務です。しかし、従業員に占める高齢労働者の拡大は、全ての企業における趨勢であり、おおいに参考とすべきと考える次第です。

事業主の役割として、安全衛生管理体制の確立、職場環境の改善、高年齢労働者の健康や体力の把握など5項目を求めています。

一方、労働者の責務は、自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、自らの健康づくりに積極的に取り組むことです。

エイジフレンドリー補助金が新設されました

こうした取組を下支えするものとして、令和2年度にエイジフレンドリー補助金が新設されました。本年度分は、6月12日に申請受付が開始され、10月末日までが申請期間となっています。

次の要件を満たす事業主が、働く高齢者を対象として職場環境の改善対策を行った場合、それに要した費用の一部を助成します。

・ 常時1名以上の高年齢労働者(60歳以上)を雇用

・ 常時雇用者数か又は資本金等が一定規模以下の中小企業事業者。(例えば製造業等の場合、300人以下か又は3億円以下)

・ 労働保険及び社会保険に加入

また、改善対策として認められる対象は次のようなものです。

(1)身体機能低下を補う設備・装置の導入

  スロープ等段差解消や手すり、床等の滑り止め、照度改善など

(2)働く高齢者の健康や体力の把握

  体力チェック、健康診断等に基づいた栄養指導・保健指導など

(3)安全衛生教育

  加齢に伴う労災リスク増大の理解促進のための教育など

このほか、新型コロナウイルスの感染防止を図りつつ、高齢者が安心して働けるよう、利用者等との接触を減らす対策も対象です。具体的には、介護におけるリフトやスライディングシート、移乗支援機器等の導入、客室への荷物配送、配膳等の自動搬送機器の導入、体調急変を把握できる小型携帯機器(ウェアラブルデバイス)を活用した健康管理システム等です。ただし、使い捨てマスク等の消耗品やビニルカーテン等の仮設設備等は除きます。

かねがねお伝えしていますが、補助金目当てにオフィス改造を行うとすれば本末転倒。しかし、補助対象は、オフィス改善を行う場合には必然とも言える内容です。なお、この補助金は、一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会の中に設けた「エイジフレンドリー補助金事務センター」が受付から支払までの事務を担います。

 

新型コロナウイルス感染症のストレスを抱えた妊娠従業員への配慮義務が事業主に求められました

令和2年57日、男女雇用機会均等法(以下「均等法」と言います。)の指針(告示)改正により、妊娠中の女性労働者が母子保健法の保健指導又は健康診査に基づき、その作業等におけるコロナに感染する恐れに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師又は助産婦の指導を受け、それを事業主に申し出た場合、事業主は作業の制限や出勤の制限、具体的には在宅勤務又は休業等の必要な措置を講ずるべきことが義務付けられました。

この義務は、当面、本年57日から来年131日までの特例として適用することとされています。

具体的な手続等は次のとおりです

コロナの動向は依然として予断を許しません。そうした中で働く妊娠中の女性労働者が、職場の作業内容により、感染について不安やストレスを抱えることは容易に想像できます。そうした方々の母性健康管理を適切に図ることを目的として、今回の特例措置が設けられたと言えます。

従来から均等法においては、妊娠中又は出産後1年以内の女性労働者が保健指導・健康診査の際に主治医等から指導を受け、事業主に申し出た場合、事業主はその指導事項を守ることができるようにするために必要な措置を講ずる必要がありました。今回の措置は、具体的・定量的な健康上の懸念に加えて、心理的な要素であり個人差が大きく検証困難と考えられるストレスを対象にしたことが注目されました。

手続として、妊娠中の女性労働者は、主治医から指導を受けたとき、指導事項を的確に伝えるため、母子連絡カード(母性健健康管理指導事項連絡カード)を作成してもらい、それを事業主に提出します。これらの点は、従来からのコロナ以外の健康懸念のケースと何ら変わりません。提出を受けた事業主は、当該指導事項に沿って必要な措置を講じますが、具体的には次のようなことが考えられます。

(1)妊娠中の通勤緩和。具体的には時差出勤など混雑時を避けた通勤時間の設定など

(2)妊娠中の休憩に関する措置。具体的は労働基準法に定める休憩時間以上の休憩の付与など

(3)妊娠中、又は出産後の症状に関する措置。具体的には作業の制限や勤務時間の短縮、在宅勤務、休業など

また、 妊娠中の女性労働者がこれらの措置を求めたことや措置を受けたことを理由として不利益取扱いをすれば均等法違反にあたることは、これまでにもお知らせしたとおりです。

ただし、賃金等についてはノーワークノーペイの原則が優先すると考えられます。実際には、会社ごとの就業規則等における休業時の取扱いについての定めぶりに従って行えばいいでしょう。

 

民法改正に伴い賃金請求権の時効消滅期間の延長など労働基準法の一部が改正されました

民法改正に伴う労働基準法の主な改正は、次のとおりです。

(1)賃金請求権の消滅時効の延長(2年→5年)

(2)賃金台帳などの記録の保存期間の延長(3年→5年)

(3)付加金の請求期間の延長(2年→5年)

ただし、当分の間、延長は3年とすることとしています。また、退職金請求の消滅時効は現行どおり5年としています。

次に、その対象となる具体的内容です。

(1)

請求権が延長された賃金

(当分の間3年、ただし退職金を除く)

・金品の返還・賃金の支払・非常時払

・休業手当・出来高払制の補償給

・時間外、休日労働に対する割増賃金

・年次有給休暇中の賃金

・未成年者の賃金請求権

(2)

保存すべき記録

(当分の間3年)

・労働者名簿・賃金台帳・雇入れに関する書類・解雇に関する書類・災害補償に関する書類・賃金に関する書類・その他労働関係に関する重要な書類(出勤簿等)

(3)

付加金の対象となる違反

・解雇予告手当・休業手当・割増賃金

・年次有給休暇の賃金

Q.5月5日(火)の祝日に出勤を命じた場合割増賃金率は25%と35%のどちらで計算する必要がありますか?

当社は、1日8時間労働、土曜・日曜、その他国民の祝日を休日としています。今年、社員に5月5日の祝日に勤務を命じなければなりません。そのときの割増賃金の計算ですが、5月5日は休日に当たるので、休日労働の割増賃金率35%で計算すべきと考えました。しかしその一方、5日に出勤してもその週の総労働時間は24時間なので、割増率は25%でよい気もします。どちらが正しいですか?

A.割増賃金は発生しません

令和2年4月1日以降の賃金支払日から、改正労働基準法が適用されます。賃金未払いがあった場合、労働者からの賃金請求権はこれまでの2年から5年に延長されます。ただし、当分の間は3年とすることは前述のとおりです。

一方、割増賃金の未払いは、付加金の対象となる違反です。労働者の付加金請求を裁判所が認めた場合、事業主は割増賃金と同額の付加金を支払わなければなりません。つまり、2倍の割増賃金を支払うことになり、金額次第では、事業経営にも影響を与えかねません。したがって、未払い賃金を絶対に発生させないことが重要です。

さて、質問への答えです。設問の会社の場合、5月5日(火)の国民の祝日に勤務をさせても割増賃金は発生しません。割増賃金は、労働時間が週40時間又は1日8時間を超えた場合、超えた時間に対して25%増しの賃金を支給するものです。5月5日の祝日に勤務しても、週の総労働時間が24時間であれば、40時間を超えていないので、割増賃金は不要です。

ところで、55日の労働は、そもそも休日労働に当たるのでしょうか?労働基準法上の休日労働は、週に1日も休みがなかった場合の労働、又は月の休みが4日未満の労働です。設問の会社では、55日(火)に出勤しても、その週の休日は3日・4日・6日・9日と4日間あります。したがって、55日の労働は休日労働に当たりません。法令上はこのとおりですが、仮に就業規則等で法令を超えた処遇を定めている場合は、その規定どおりに対応する必要があります

法改正の動き

労働基準法の改正により賃金請求権の消滅時効期間が5年に延長される見通しです

民法の一部を改正する法律(以下「改正民法」と言います。)が、令和241日から施行されることに伴い、施行日以降の契約に基づく債権の消滅時効期間は原則5年に統一されます。旧民法の債権消滅時効は契約ごとに異なり、使用人の賃金請求債権の消滅時効は1年で、労働基準法は労働者の権利保護の観点から、賃金請求債権の消滅時効期間を2年に延長する例外的取扱いを定めていました。しかし、改正民法の施行により、このままでは労働基準法が民法を下回る逆転が生じてしまいます。そこで、賃金請求債権の消滅時効期間を改正民法と合わせて5年に延長するとともに、当分の間経過措置を講ずることが、今国会で審議されています。仮に成立したとすれば、令和241日から、賃金請求権の消滅時効期間、割増賃金未払い等に係る付加金の請求期間、退職手当請求権の消滅時効期間、賃金台帳等の書類保存義務は、いずれも5年となります。ただし審議中の法案は、使用者への影響を考慮し、退職手当請求権を除き、当分の間、消滅時効期間を3年としています。

 

高年齢者雇用安定法の改正が見込まれています

現在、高年齢者雇用安定法に定める高年齢者雇用として、事業主は65歳までの雇用確保を義務付けられています。しかし、今後は70歳までの雇用を求められることが見込まれます。現在審議中の法改正が成立した場合、令和3年4月以降、65歳から70歳までの高年齢者の就業確保措置として、①定年引上げ ②継続雇用制度の導入 ③定年廃止 ④労使で同意した上での雇用以外の措置の導入(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度) のいずれかを講ずることが努力義務とされます。これらは、近い将来に義務規定となるものと考えるべきでしょう。

 

雇用保険法等の一部を改正する法案も成立の見通しです

また、雇用保険法の改正も次のとおり見込まれています。

現在、60歳時に比べて賃金が75%未満に低下した被保険者には、本人の請求により、65歳を限度として、高年齢雇用継続給付金が支給されています。高年齢者雇用安定法が求める70歳までの高齢者雇用を後押しする観点から、令和7年度からこれらの給付は縮小されます。

一方、令和3年4月から65歳から70歳までの高年齢就業者確保措置の導入に対する支援を雇用安定事業に位置付けることが検討されています。具体的には、措置を講じた事業主への助成金支給となることが見込まれています。

こうした一連の動きに合わせ、令和2年4月1日から高年齢者への雇用保険料の免除が廃止されます。給与計算の際、注意が必要です。

 

 

Q.65歳の方の雇入れを検討しています。労務管理上注意すべきことはありますか?

託児所を経営する者です。先日、従業員を募集したところ、初めて65歳を超えた方から応募がありました。定年後にこれまでの経験を活かしつつ、新しい環境でチャレンジしたいとのことです。人柄も良いと見受けられ、採用を前向きに検討しています。高年齢者を雇い入れる際、労務管理上何か注意すべきこと等はありますか?

 

A.雇用保険、健康保険、厚生年金それぞれに留意すべきことがあります

超高齢社会を迎えるわが国においては、高年齢者の労働力を確保することが不可欠です。昨年秋に日本経済新聞社が実施した世論調査によれば、60歳代の54%が70歳以上まで働きたいと回答しています。政府も70歳までの雇用に向けて様々な取組みを始めており、近い将来、65歳以上の高年齢労働者が働く企業が当たり前となるかもしれません。そこで、65歳を超えた高年齢者を雇い入れる際の労働・社会法令関係においての注意点をご案内します。

(1)雇用保険について

65歳以上の方が、次の①、②の要件を満たした場合、雇用保険に加入します。

① 週の所定労働時間が20時間以上

② 31日以上継続して雇用が見込まれる

現在、労働保険料の保険料の徴収等に関する法律第11条の2に基づいて、年度初め(4月1日時点)に64歳以上の方は雇用保険料が事業主及び被保険者とも免除されています。令和2年4月1日以降、この規定は廃止され、全ての被保険者に保険料が発生します。

(2)健康保険の介護保険料について

介護保険料は40歳以上の方が納付しますが、40歳以上64歳までの方は、健康保険の第2号被保険者として、給与から天引きされます。それに対して、65歳以上の方の介護保険料は、年金から差し引いて徴収されます。こうしたことから、給与計算の際に誤って天引きしないよう、注意する必要があります。

(3)配偶者の年金について

健康保険の加入者(第2号被保険者)の配偶者は、本人が60歳未満、かつ、年収130万円未満など、一定の要件を満たす場合、国民年金の第3号被保険者となり、第3号被保険者は保険料負担がありません。ところで、第2号被保険者には年齢制限があり、65歳以上の方はなれません。それまで自らは第2号被保険者、配偶者が第3号被保険者であった方が65歳を迎えたとき、配偶者が未だ60歳未満の場合、配偶者自身が国民年金の第1号被保険者となる手続が必要です。しばしば見落とされているので、注意しましょう。

(4)活用できる助成金について

次の①、②の要件を満たした場合、厚生労働省の特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)を活用することができます。

① ハローワーク又は民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること。

② 65歳以上の高年齢被保険者として雇い入れ、1年以上雇用することが確実であると認められること。

支給額は下記のとおりで( )は中小事業主以外に対するものです。

《特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)》

支給対象者        支給額     助成対象期間

短時間労働者外の者   70万円(60万円)  1年

短時間労働者      50万円(40万円)  1年

「令和元年台風第1519号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A(厚生労働省)」から抜粋してお知らせします。

台風の影響に伴う休業に関する取扱いについて

Q1 今回の台風に伴う風水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たりますか?

A1 労働基準法第26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業のとき、使用者は休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないと定めています。ただし、天災事変など不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらないので、支払義務はありません。そこで設問のケースですが、休業の原因は事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることのできない事故に該当すると考えられます。したがって、原則として、使用者の責に帰すべき事由による休業には当たりません

Q2 今回の台風による事業場の施設・設備は直接的な被害を免れましたが、取引先や鉄道・道路等の被災により、原材料の仕入や製品の納入等が不可能となり、労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たりますか?

A2 事業場の施設・設備が直接的な被害を免れた場合は、原則として、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たると考えられます。ただし、当該休業について、①その原因が事業の外部より発生した事故であること ②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること の二つの要件を満たす場合、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たらないこともあり得ます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案して判断する必要があると考えられます。

 

労働基準法第36条(時間外・休日労働協定)について

 台風に伴い十分な企業活動ができなかったため、その後業務量が増加し、36協定で定めた延長時間を超えそうです。どのように対応すればいいでしょうか?

A 36協定を締結し届け出ている以上、それに定める範囲を超えて時間外労働をさせることはできません。範囲を超えた時間外労働を可能とするためには、改めて36協定を締結し直し、届け出る必要があります。

 

労働基準法第39条(年次有給休暇)について

Q 今回の台風によって会社の事業が滞り、当面の業務量が大幅に減少しているとして、年次有給休暇を取得するよう求められています。どうすればいいでしょうか?

A 年次有給休暇は、労働者が請求する時季に、使用者はこれを与えなければならないと定められています。使用者は、労働者に対して、年次有給休暇の取得を命じることはできません。

 

その他(賃金)について

Q 今回の台風の被害に伴って労働者が出勤できなかった場合、出勤しなかった日の賃金を支払う必要はありますか?

 労働契約や労働協約、就業規則等に労働者が出勤できなかった場合の賃金の支払について定めがある場合は、それに従う必要があります。一方、このような定めがない場合、ノーワークノーペイの原則から、支払は不要とも考えられます。ただし、労使で十分に話し合うなどして、労働者の不利益をできる限り回避するよう努力することが大切です

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