お役立ち知識

Q.台風に伴う計画運休に備えるため36協定対象外の従業員に超過勤務をさせました

大型台風の襲来が見込まれる中、交通事業者が始発から一定の時間、計画運休を実施すると発表しました。その日は、顧客対応で外せない業務を予定しています。そこで、定時に出勤困難な従業員等は会社に前泊させることとし、総務担当に指示して貸布団や食事の手配など翌日の備えをさせました。ところで、総務担当はこれまで超過勤務の実績もなかったことから、36協定の対象外です。その日は結果として超過勤務になってしまいましたが、法令違反にあたりますか?また、必要な対応等があれば、ご教示ください。

 

A.労働基準監督署長が災害等による臨時の必要があると認めたときは法令違反になりません

従業員を、法定労働時間を超えるか又は法定休日に労働させる場合、使用者は、あらかじめ労働基準法(以下「同法」と言います。)第36条に基づく労使協定(以下「36協定」と言います。)を締結し、労働基準監督署長(以下「監督署長」と言います。)に届け出る必要があり、怠った場合、同法違反として処罰の対象となります。

一方、同法第33条(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)は、災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合、使用者は行政庁の許可を得て、必要な限度において法定労働時間を延長し、又は法定休日に労働させることができる旨を定めています。つまり、36協定なしで時間外労働等をさせても違法にはあたらない、ということです。

 

事前届出が原則ですが、事後に遅滞なく届け出れば問題ありません。「平成28年労働基準監督年報」(厚生労働省)によれば、同年の申請件数は全国で159件、うち許可を得たのは113件でした。許可を得た場合、当該労働時間は36協定に基づく時間外労働又は休日労働にはカウントしません。ただし、割増賃金の支払はもとより必要です

具体的にどのような場合、「臨時の必要」があると認めるかは、労働基準局長の通達によって基準を定めています。その一部について、令和元年6月1日付で改正がありました。

(1)単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと

(2)地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認めること。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコールは含まれること

(3)事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めないこと。例えば、サーバへの攻撃によるシステムダウンへの対応は認めること

(4)上記(2)及び(3)の基準については、他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命又は公益の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能のなる場合には認めること

許可の対象は、災害その他避けることのできない事由に直接対応する場合に加えて、当該事由に対応するにあたり、必要不可欠に付随する業務を行う場合を含むとされています。具体的には、例えば、事業場の総務部門において、当該事由に対応する従業員に供するために食事や寝具の準備をする場合等です。

設問はそうしたケースに該当すると考えられますが、翌日の顧客対応の内容に従業員を前泊させるまでの必要性があったかは、監督署長の判断次第です。計画運休を知った時点で直ちに「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書」を提出し、許可を得ることが最も望ましい対応でした。仮に、許可を得られなかった場合は、36協定の対象の従業員に業務を行わせる必要があります。今回は次善の策として、遅滞なく事後の届出を行うことが必要です。その場合、仮に、不許可となっても、監督署長名の指導程度に止まり、直ちに罰則を適用される懸念はまずありません。

 

 

 

 

 

特定求職者雇用開発助成金(安定雇用実現コース)について

いわゆる就職氷河期に正規雇用の機会を逃したこと等により、十分なキャリア形成がなされず正規雇用に就くことが困難な方を、ハローワーク等の紹介により、正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対する助成です。

対象となる労働者は、次の(1)~(4)全てに当てはまる方です。

(1)雇入れ時点の年齢が満35歳以上60歳未満

(2)正規雇用労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下であり、雇入れ日の前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない

(3)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介の時点で失業状態にある

(4)正規雇用労働者として雇用されることを希望している

留意点は、本助成金の対象労働者であることをあらかじめ把握せずに雇い入れた場合、助成金の対象とならないことです。

助成額はとおりです。

大企業   支給総額 50万円(第1期25万円+第2期25万円)

中小企業  支給総額 60万円(第1期30万円+第2期30万円)

尚、支給対象期間は大企業及び中小企業とも1年間です。また、雇い入れ日から起算した最初の6カ月間を第1期、以降の6カ月間を第2期と言います。

 

治療と仕事の両立支援助成金(制度活用コース)について

がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎など反復・継続して治療が必要となる疾病を負った労働者に対し、治療と仕事の両立の支援に資する「一定の就業上の措置」を講じた事業主に対し助成されます。

「一定の措置」としては、①時間単位の年次有給休暇付与 ②傷病休暇制度等(有給、無給問わない) ③フレックスタイム制度、時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度等 が挙げられます。1企業当たり、期間の定めのない労働者及び有期契約労働者それぞれにつき200,000円を1回限り助成されます。

また、手続の流れは次のとおりです。

ア 労働者に適用させる両立支援制度等の概要の作成

イ 両立支援制度活用計画の認定申請を労働者健康安全機構へ提出

ウ 両立支援制度活用計画認定通知の受取

エ 両立支援制度の実施:治療と仕事の両立支援助成金(制度活用コース)支給を労働者健康安全機構へ申請

オ 助成金支給決定通知の受取・助成金受領

留意すべきこととして、当該労働者は、制度活用計画期間において6カ月以上雇用が維持されていること、及び制度活用計画期間において月平均5日以上勤務していることが必要です。

また、支援計画の作成は、両立支援両立支援コーディネイタ(コーディネイータ要請研修を受講終了した者)が行う必要があります。

いじめ・嫌がらせに関する労働相談は依然増えています

「いじめ・嫌がらせ」の労働相談が年々増加し、平成24年度以降は相談件数の首位を占めているとともに、その内容も一層深刻化しています。

そうした中で成立したいわゆる「女性活躍・ハラスメント規制法」は、職場のハラスメント対策強化に向けた事業主の取組を義務付けること等を目的とし、労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など5本の法律を一括して改正するものです。法案は30頁以上に及び、厚生労働省のホームページ等にも未だそのポイント等は示されていません。そのため、以下については、報道等を参考として、窺える内容を取りまとめました。

 

パワハラの定義やその防止に努める責務が事業主にはあること等を初めて法制化しました

セクシャルハラスメント(以下「セクハラ」と言います。)については、過去の男女雇用機会均等法改正において、事業主の配慮義務や防止措置の義務付が順次定められてきました。また、妊娠や出産に関連したマタニティハラスメント(以下「マタハラ」と言います。)についても、同様に過去の男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の改正に当たって、事業主の防止措置が義務付けられています。

しかし、パワーハラスメント(以下「パワハラ」と言います。)については、これまで法令上の定義や事業主等の責務は明らかにされていませんでした。今回、労働施策総合推進法の改正において、次の条文を新たに盛り込み、パワハラを「優越的言動問題」と捉えてその定義を示すとともに、防止に向けた事業主等の責務を定めました。

労働施策総合推進法 

(雇用管理上の措置等)第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

下線を付した部分が、優越的言動問題(以下、単に「パワハラ」と言います。)の定義にあたります。また、「言動」とありますが、身体的接触はもとより、身ぶり・表情等を幅広く含むと考えられます。事業主が講ずべき措置の具体的内容や該当事例等は、今後厚労相の諮問機関である労働政策審議会において議論の上、指針を示すとしています。また、パワハラへの関心・理解を深めるための広報・啓発活動、研修等の実施を国や事業者に義務付け、労働者に対しても自らパワハラを行わないよう注意するとともに、事業主が行う措置等に協力することを求めました。今回の改正は一定の抑止力は期待されるものの、罰則は定めていないことから、実効性の確保が課題となります。施行は、大企業は20204月、中小企業は同時期に努力義務として施行後、2年以内に本施行の見通しです。

その他の主なポイントを整理すると、次のとおりです。

(1)セクハラ、マタハラ、パワハラ対策の強化として、国・事業主・労働者に対し、他の労働者の言動へ注意を払う責務を規定。また、被害を相談した労働者の解雇など不利益取扱を禁止

(2)自社の労働者が取引先など社外でセクハラをした場合、事業主に被害者側事業主が行う事実確認等に協力する努力義務

(3)顧客等によるカスタマーハラスメント、就活生へのセクハラ等への対策等の指針化を今後検討

(4)女性活躍として、これまで従業員301以上の大企業に限っていた女性社員の登用や昇進等に関する数値目標の策定義務を、従業員101~300人の中小企業に拡大

 

36協定の特別条項についても限度時間等が設けられました

140時間、18時間の法定労働時間、及び毎週少なくとも1日又は44日の法定休日を超えた労働を、労働基準法(以下「同法」と言います。)違反に当たることなく行わせるために、使用者は同法第36条第1項に定める36協定の手続を行う必要があり、このことは改正前と変わりません。

 

一方、それまで厚労相告示に止まり、強制力のなかった時間外労働の限度時間が、今回の改正により同法第36条第4項において、原則1箇月45時間、1360時間と定められました。202041日から、中小企業においても改正後の規定が適用されます。

 

さて、年間の所定労働日数を365日から土日及び祝日を除いた244日、月の平均所定労働日数を20日とした場合、仮に毎日1.5時間の時間外労働をすると、月の時間外労働は1.5時間×20日=30時間となり、限度時間の45時間内に収まります。ところが、それを1年間で見ると1.5時間×244日=366時間となり、限度時間の360時間を超えてしまいます。つまり、時間外労働の管理は、月と年間の二つの観点から行う必要があります。

ところで、予見困難な業務量の大幅増など、企業活動上どうしても限度時間を超えて労働させることが必要なときがあります。これまでも36協定の特別条項として、例月の限度時間を超えて延長できる時間を定めることができました。そもそも例月の限度時間が法定されていなかったので、特別条項にも限度はありませんでした。今回の改正により、新たに同法第36条第5項において、特別条項の限度時間等が定められています。

条文を適宜要約して記載すると、次のとおりです。

同法第36条(時間外及び休日の労働)第5項 使用者は、事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1箇月及び休日並びに1年について同条第4項の労働時間を延長して労働させる時間を定めることができる。この場合において、その延長できる月数を定めなければならない。なお、1箇月については休日と合わせて100時間未満。1年は月の合計が720時間以下(休日は含まない)。月数は6箇月以下とする。

 

ここで注意すべきは、休日労働の取扱です。すなわち、同法36条第4項に定める1箇月45時間、1年間360時間の限度時間は、いずれも休日労働を含みません。したがって、限度時間を超えて労働させても、それが休日労働であれば法違反には当たりません。

 

それに対して、同法36条第5項に定める特別条項は、条文に下線を付したとおり、1箇月の限度時間100時間は休日労働の時間を含みますが、1年間の限度時間720時間は含みません。また、特別条項を適用し、休日を含めて1箇月45時間超、100時間未満の労働をさせることができるのは、年間6箇月以下です。

例えば、月の時間外労働が41時間、休日労働60時間であれば、同法36条第4項違反には当たりません。しかし、仮に特別条項を定めていても、その限度である「休日労働と合わせて100時間」を超えるので、同法36条第5項違反です。

 

特別条項の1箇月の限度時間100時間については、もう一つ注意が必要です。その月で100時間を超えないのみならず、前後26箇月の平均で80時間を超えてはいけません。したがって、仮に先月100時間時間外労働したとすれば、今月60時間を超えると2箇月平均80時間超となり法違反です。また、今月50時間時間外労働したとすれば、来月に法違反とならないためには、100時間+50時間+X/380時間から、X90時間未満とする必要があります。

 

 

 

有給5日にカウントできる日、できない日を確認しましょう

本年4月1日以降の基準日、つまり年次有給休暇(以下「有休」と言います。)の付与日から、年10日以上の有休を付与する従業員を対象として年5日の有休を取得させることが使用者に義務付けられました。今回の改正にあたって、厚生労働省等は「年次有給休暇の時季指定義務」「わかりやすい解説」等、様々な解説資料を示していますが、公表時期により若干の異同があります。そこで今回は、本年3月公表版の「改正労働基準法に関するQ&A(厚生労働省労働基準局)」において、有休5日にカウントできる日として新たに付け加えられた「リフレッシュ休暇」を取り上げます。また、カウントできない特別休暇との違いも併せて確認します。

さて、有休5日取得としてカウントできる日は次のとおりです。

(1)労働者自ら時季指定した日

(2)半日単位で取得した日(0.5日としてカウント)

(3)労使協定に基づき計画的に付与された日

(4)前年度の繰越し分を取得した日

(5)使用者が法定を上回る年次有給休暇を付与している日

(6)法定の年次有給休暇に加えて、取得理由や取得時季が自由で年次有給休暇と同じ賃金が支給される「リフレッシュ休暇」で、利用期間が1年とされている日(※今回追加)

それに対して、カウントできない日は次のとおりです。

(7)労使協定に基づき取得した時間単位の年次有給休暇

(8)法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇

リフレッシュ休暇と特別休暇の違いとは?

リフレッシュ休暇も特別休暇も、法令による義務付けのない、使用者の任意によって労働者に与えることができる休暇です。それではこの二つの違いは何か、解説資料の文言等からは下表のように考えられます。

 

特別休暇

リフレッシュ休暇

5日取得のカウント

できない

できる

利用目的

使用者の規定あり

自由

取得時季

使用者の規定あり

自由

つまり、その利用目的や取得時季が使用者の定める就業規則等により制約されている場合、有休5日取得として取り扱えません。例えば、就業規則において有給の病気休暇を定めている事例があります。その場合、利用目的は病気の療養に制約されることから、5日取得にはカウントできません。

それに対して、労働者が利用目的や取得時季を自らの意思で自由に決定できる「リフレッシュ休暇」は、法定の有休とその趣旨が同一であることから、カウントできます。

なお、就業規則等に定めている休暇の名称は、別に「リフレッシュ休暇」でなくとも構いません。あくまでも利用目的や取得時季について、使用者による制約がないことがポイントです。

 

有給休暇取得5日義務が発生する日はいつでしょう?

労働基準法の改正(以下「改正法」と言います。)によって、本年41日から年10日以上の年次有給休暇(以下「有休」と言います。)を付与される労働者を対象として、その内5日を確実に取得させることが使用者に義務付けられました。そこで覚えていただきたいのが、「基準日」という法律用語です。「基準日」は、有休を新たに付与する日です。会社によっては、雇入れの時点で既に有休を付与している事例も見受けられます。ただし、法令上の付与義務が生じるのは雇入れの日から起算して6カ月間勤務し全労働日の8割以上出勤したときに6カ月を過ぎた日で、その日に付与すれば、その日が「基準日」にあたります。例えば、41日入社であれば、6か月を経過した日は101日なので、101日が「基準日」です。

 

さて、改正法が適用されるのは、平成3141日以降の「基準日」からです。したがって、「基準日」が例年101日である事業所においては、本年101日から翌年930日までの1年間に有休5日を確実に取得させる義務が生じます。自社の基準日はいつか、改めて確認してください。

 

ところで、新卒一括採用など、労働者を雇入れする時期が毎年同一であれば基準日も同一ですが、随時採用など、雇入れの時期が労働に異なると「基準日」もそれぞれ異なりま す。使用者にとって、誰に・いつまでに有休5日取得させなければならないのか管理が煩雑です。基準日が複数ある場合、事務の簡素化・効率化の観点から、これを契機に統一することを検討すべきです。


 

入社2年目以降に基準日を統一した場合の取得義務日数は?

雇入れ1年目は法定どおり6カ月を経過した後に有休を付与し、2年目以降基準日を統一する場合は、年5日の有休を比例按分して取得させることができます。(労働基準法施行規則第24条の5第2項)

仮に、4月1日雇入れのAさんと6月1日雇入れのBさんについて、2年目以降の基準日を4月1日に統一した場合、比例按分による取得義務日数を計算すると次のとおりとなります。

 

【例】入社後6カ月後に10日付与、2年以降は4月1日を基準日に統一

○Aさんの取得義務日数

○Aさんの取得義務日数

 18月÷12×5日=7.5

 2019101日~2021331日までで7.5日取得させます。

○Bさんの取得義務日数

 16月÷12×5日=6.67

 2019121日~2021331日までで7日取得させます。

改正労働基準法第39条(年次有給休暇)が、本年4月から施行されます。その「解釈」について、先般、厚生労働省から都道府県労働局長あてに通達されています。そこで今回はその内容の一部をQ&A形式で取りまとめました。

 

Q1.前年度繰越分の有給休暇を合算して10日以上となった場合、使用者は5日の時季指定義務を負いますか?

A1.使用者が年次有給休暇(以下「有休」と言います。)の時期指定義務を負うのは有休年10日以上の労働者に対してです。ただし、この定めに言う「有休年10日以上」は、あくまで基準日に付与された日数で判断します。したがって、繰越分を合算して10日以上となった場合は、時季指定義務の対象となりません。

Q2.労働者が前年度繰越分の有休を取得した場合、使用者はその日数分を時季指定すべき5日から控除することができますか?

A2.労働者が取得すべき有休は、前年度繰越分かそれとも当年度の基準日に付与された有休であるかを問いません。したがって、使用者は取得した日数分を時季指定すべき5日から控除できます。

Q3.使用者がいったん時季指定した有休をその後使用者側の都合により変更することはできますか?

A3.労働者の意見聴取の手続を行ない、その意見を尊重すれば使用者側都合に基づく変更は可能です。

Q4.使用者がいったん時季指定した有休をその後労働者の申出により変更することはできますか?

A4.原則として、使用者が時季指定した有休を労働者が変更することはできません。ただし、労働者に変更希望があるときは、使用者は意見聴取の手続を行い、その意見を尊重することが望ましいとされています。

Q5.使用者が有休を時季指定した後に労働者が自ら有休を取得した場合の取扱いはどうなりますか?

A5.使用者が時季指定した日に労働者が有休を取得しなくても、直ちに違法とはなりません。ただし、使用者の時季指定については、特段の取決めがない限り、労働者が自ら有休を取得したからといって、当然に無効はならないものと解されています。

Q6.例えば会社の創立記念日を休暇にしているなど、事業場が独自に設けている法定年休とは異なる特別休暇を、労働者が取得した有休とみなすことは認められますか?

A6.設問に例示のような特別休暇等により取得した日数を、使用者が時季指定すべき5日に含めることは認められません。

Q7.今回の労働基準法改正を契機として、前問に例示したような事業場独自の特別休暇を廃止し、有休の計画的付与に振り替えることは認められますか?

A7.設問のような対応は、労働基準法及び今回の労働基準法改正の趣旨に沿わないものと考えられます。また、特別休暇の廃止それ自体は、就業規則の不利益変更法理に照らして判断すべきです。

 

平成31年4月1日施行の「改正労働基準法第39条(年次有給休暇)」について厚生労働省等による「年次有給休暇の時季指定義務」、「わかりやすい解説」等を参考に取りまとめました。

1.201941日から施行される内容のポイントは

A1.年次有給休暇(以下「有休」と言います。)のうち年5日については、使用者が時季を指定して労働者に取得させることが全ての使用者に対して義務付けられます。


Q2.対象となるのは全ての労働者ですか?

A2.有休付与日数が10日以上の労働者が対象です。

Q3.時季指定をすべき期間はいつからいつまでですか?

A3.有休を付与する日(基準日)から次の基準日までの1年間です。例えば基準日が10月1日であれば、2019年10月1日から2020年9月30日の間に5日間を時季指定する必要があります。

Q4.施行日までに予めやっておくことは何かありますか?

A4.時季指定の対象となる労働者の範囲及び指定の方法等について、就業規則に定めておく必要があります(労働者10人未満の事業所を除きます。)。また、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成する必要があり、この管理簿は3年間保存しなければなりません。

Q5.仮に取得できなかった労働者がいたら、どうなりますか?

A5.法違反にあたり、労働基準監督署の監督指導(是正勧告等)の対象です。また、罰則の適用もあり得ます。

Q6.労働者が有休を希望せず、時季指定を行なっても取得を拒否した場合、使用者の責任はどうなりますか?

A6.そうした場合であっても、結果的に有休を取得していないため、使用者は法違反を免れません。こうしたことから、前述の就業規則の改正においては、時季指定は業務上の命令であり違反は懲戒の対象とすること等を併せて定めることが望ましいと考えます。

Q7.労働者本人の請求により既に有休5日を取得済みでも、使用者の時季指定は必要ですか?

A7.労働者が有休を5日取得した時点で、使用者の時季指定義務はなくなります。また、その後は使用者から時季指定を行うことはできません

Q8.使用者が時季指定した日が到来する前に、労働者が自ら有休5日を取得した場合、当初指定した日に取得しなくても法違反にはあたらないと考えていいでしょうか?

A8.結果的に5日取得しているので、法違反にはあたりません。なお、この場合において、使用者が行なった時季指定は、労働者との間に特段の取決めがない限り無効とはならないと解されています。 



 









 


              



定額残業代に相当する残業時間の明示は、必須の要件ではなくなりました(最高裁第一小法廷判決 平成30年7月19日

定額残業代に相当する残業時間等を明示することは、これまで定額残業代制度(以下「同制度」と言います。)が成立する要件とされ、私自身も、給与明細に定額残業代の単価及び時間数を明記するようお願いしてきました。しかし、本判決により、必須の要件ではないことが示されました。このことは、司法による同制度の過度の規制に歯止めがかかったと捉えることができ、同制度活用への追い風となりそうです。

《本件の概要》

(1)被上告人は薬剤師として、上告人が運営する薬局で、平成25年1月21日から平成26年3月31日まで勤務していた。

(2)雇用契約書に記載の賃金は、基本給46万1,500円、業務手当10万1,000円であった。また、採用条件確認通知書には、「月額給与461,500円」、「業務手当101,000円みなし時間外手当」、「時間外勤務手当の取扱年収に見込み残業代を含む」、「時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」との記載があった。一方、上告人の賃金規定には、「業務手当は、一賃金支払期において時間外労働があったものとして、時間手当の代わりとして支給する」との記載があった。

(3)被上告人は、休憩時間に30分間業務に従事していたが、その時間管理はされていなかった。

(4)上告人が被上告人に交付した毎月の給与支給明細書には、時間外労働時間や時給単価を記載する欄があったが、これらの欄はほほ全ての月において空欄であった。

(5)被上告人は、業務手当が何時間分の時間外手当に当たるのか分らないこと、及び休憩時間中の労働時間を管理し調査する仕組みがないため、時間外労働の合計時間を確認することができないこと等から、業務手当を上回る時間外労働が発生しているか否か判別できないとして、業務手当を残業代の支払とみなすことはできないと主張し、残業代等の支払を請求した。

(6)控訴審における判決は、被上告人の主張を認め、定額残業代制度は無効であったとして、支払請求を一部容認した。

《判決の要旨》

(1)雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否は、労働契約に係る契約書等の記載内容の他、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況等の事情を考慮して判断すべきで、相当する労働時間を示すことは必須の要件と言えない。

(2)本件では、雇用契約書及び採用条件確認書並びに賃金規程において、月々支払われる所定賃金のうち業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨記載されていた。したがって、賃金体系においては、業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものと位置付けられていたと言える。

(3)被上告人に支払われた業務手当は、約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当することが算出でき、被上告人の実際の時間外労働等の状況と大きく乖離していない。

(4)したがって、業務手当の支払が残業代の支払に当たらないとする控訴審の判断は、割増賃金に関する解釈適用を誤った違法がある。

《本判決と実務》

被上告人の労働時間管理は、タイムカードに出勤時刻と退勤時刻のみを打刻しており、それらの時刻から所定労働時間を差し引くことによって、残業時間を算出することができました。また、契約書等に定額残業代に相当する業務手当は何時間分かの記載はなかったものの、その計算は容易であり、定額残業代を超える労働の有無についても明確に判断できるものでした。本判決により、定額残業代に相当する時間数の明示は必須要件ではなくなりましたが、正しい計算を行なっていることの論証は、今後とも不可欠です。


 時間外労働の上限規制(中小企業2020年4月1日施行)

労働時間は、労働基準法(以下「同法」と言います。)第32条において、週40時間、1日8時間以内と定めています。この時間が法定労働時間です。これに対して、所定労働時間といわれるものがあります。これは、事業場がそれぞれ労働時間として定める時間です。所定労働時間は、法定労働時間内であれば何時間でもかまいません。言い換えると、所定労働時間≦法定労働時間という図式です。

さて、法律上の時間外労働とは、法定労働時間を超える労働です。本来、同法は時間外労働を禁止しています。ただし、企業の自由な経済活動に配慮し、一定の要件を満たした場合、時間外労働を可能としています。その要件は過半数労組、過半数労組がない時は事業場の過半数代表者と時間外・休日労働協定(36協定)を締結した上で、労働基準監督署長に届け出ることです。

時間外労働は、1カ月45時間、1年360時間までとの基準があります。しかし、これは厚生労働大臣の告示に過ぎず、法的拘束力はありません。また、36協定において特別条項を結ぶことにより、上限なく時間外労働に従事させることができます。更に、同法上、休日労働に対する規制はありません。結果として、少なからぬ企業で法定労働時間を超えた労働が常態化していることは、ご承知のとおりです。同法が、「ざる法」と指摘される所以です。 


 

今回の改正により、時間外上限基準は厚生労働大臣の告示から格上げされ、同法第36条4項~6項に明記されました。これに違反すれば罰則の適用もあり、適切な対応が必須です。


 

改正により設けられた時間外労働の上限時間は?

繰り返しになりますが、同法改正前は休日労働の規制はありません。厚労相告示の時間外労働時間には、休日の労働時間は含まれません。しかし、今回の改正においては、上限時間の中に休日の労働時間を含まれる場合と含めない場合とがあり、少しややこしくなります。

以下、同法第36条の各項ごとに説明します。

 
(新設)36条4項...限度時間  (※は1年単位の変形労働時間制)

期 間

上限時間

休日労働の時間

1カ月

45時間(※42時間)

含めない

1年

360時間(※320時間)

含めない

 

(新設) 36条5項...特別条項を設けた場Z

期 間

延長できる上限時間

休日労働の時間

1カ月

100時間未満

含まれる

1年

720時間未満

含めない

ただし、特別条項を発動する月数は最大でも6カ月以内

 

(新設)36条6項...更なる規制(特別条項がない事業場も適用)

期 間

時間外労働の最大時間

休日労働の時間

1カ月

100時間未満

含まれる

2カ月から6カ月のそれぞれの平均

80時間未満

含まれる

ただし、次の業務については、適用除外とされています。

①工作物の建設等の事業

②自動車の運転の業務

③新技術、新商品等の研究開発の業務

④その他厚生労働省労働基準局長が指定するもの




 

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