2014年6月アーカイブ

労使協定の締結者

Q.労働組合はあるが、組合員が過半数にいたらないときに労使協定は結べますか?

A.使用者は、当該労働組合と労使協定を結ぶことはできません。

組合のある事業場は少ないので深入りしませんが、労働協約を結ぶことは可能です。労使協定と労働協約との違いを要約すると、

(1)労使協定は労働基準法等に基づく制度であり、協定の内容は全ての労働者に適用される。

(2)労働協約は労働組合法に基づく制度であり、協約の内容は当該協約を結んだ労働組合の組合員にのみ適用される。なお、協約と就業規則等の定めとが異なるときは、協約が優先される。

仮に過半数にいたらない組合と協約を結んだとすれば、一つの事業場に労働条件の異なる労働者が混在し、経営や労務管理等の観点から問題となる懸念があります。

 

Q.親睦会はあるが、労働組合はないときは?

A,使用者は、親睦会と労使協定を結ぶことはできません。

親睦会は会員相互の親睦や福利厚生等を目的とする組織であって、労働者の団体意思を代表する機能は認められないからです。

ただし、適正な手続を経て選出された労働者の過半数を代表する者が親睦会の代表を務める労働者であったとしても、それはたまたまそうなったというに過ぎず、特段問題はありません。

 

Q.過半数代表者と認められる者とは?

A.過半数組合がないとき、過半数代表者と認められる者については、労働基準法や同法施行規則等に定めています。要約すると、

(1)管理監督者(労働基準法第41条2号)でないこと。

(2)労使協定締結等をする者を選出する旨を明示して実施した選挙、挙手等により選出されたこと(施行規則第6条の2第1項)。

(1)で注意すべきは、労働基準法上の管理監督者は、部長や課長等、肩書の付いたいわゆる管理職よりも限定されることです。

厚生労働省の通達によれば、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。具体的には、

・経営方針に関与し、又は職員の採用権や労務管理上の指揮権限を持つ等、重要な職務と権限が与えられていること

・始業・終業時間を拘束されない等、出退勤の管理を受けないこと

・賃金面で、その地位に相応しい待遇がなされていること

等の点を総合的に勘案して判断する必要があります。

また、(2)については、労働者間の互選がポイントです。使用者が過半数代表者を指名したり、一定の職位にある者を宛て職として過半数代表者としたりすること等は認められません。

 

Q.過半数というとき、パートタイマーや派遣労働者等の取扱は?

A.旧労働省の通達は、36協定でいう労働者の範囲は労働基準法第9条に定める労働者であるとし、これは事業に使用され賃金を支払われる全ての労働者にあたります。したがって、正社員であるとパートタイマーであると問わず、また、管理監督者(労働基準法上の管理監督者のみならず、いわゆる管理職を含む)、長期欠勤者や休職期間中の者等を含めて労働者の母数であり、その過半数が互選により認めた者で、かつ、労働基準法上の管理監督者にあたらない者が過半数代表者ということになります。

なお、派遣会社から当該事業場に派遣されている者は、時間外・休日労働に関わる労使協定であれば母数から除かれます。

ただし、休憩に関わる労使協定であれば、労働者派遣法は一斉休憩の付与義務を派遣先の使用者に負わせているため母数に含まれるという、いささか複雑なことになっています。

 

Q.労使協定の締結が要件とされるのは、「時間外・休日労働」の他にどのようなものがありますか?

A.労働基準法等において労使協定の締結が要件とされる規定として、主なものは次のとおりです。

 

*根拠条文は特記ない場合労働基準法

労使協定が必要な場合

根拠条文

要届出

労働者の委託による社内預金管理

18条

賃金からの一部控除

24条

×

変形労働時間制(1カ月、1年、1週間)

32条の2

32条の3

32条の5

フレックスタイム制

32条の3

×

交替制など一斉休暇によらない場合

34条

×

時間外労働・休日労働

36条

月60時間超の時間外労働をさせた場合の

代替休暇制度

37条

×

事業場外みなし労働時間制

38条の2

専門業務型裁量労働制

38条の3

時間単位年休

39条

×

年次有給休暇の計画的付与

39条

×

年次有給休暇取得の賃金を健康保険の

標準報酬日額で支払う場合

39条

 

×

育児介護休業の申出拒否

育児介護休業法

6条

×

 

労使協定の法的効力とは?

先ずは、労使協定制度の趣旨は何であるかを確認しましょう。

(1)私人間の契約関係には、本来、当事者の自由な意思と双方の合意に基づいて決定する「契約自由の原則」が適用される。

(2)しかし、この原則のみでは、労働者の権利保護が果たされないなど、公益的な観点からの問題が生じる懸念がある。

(3)そこで、労働基準法等の労働関係法令は、契約自由の原則の例外として、国家行政の立場から使用者に一定の行為を禁じた上で、必要な場合は、労使協定すなわち労働者の団体意思の同意を条件として、例外的な取扱を許容している。

したがって、労使協定の法的効力は、「法令上、本来は禁じられている事項を合法的に行うことを可能にする」ところにあるといえます。これを「刑罰免除的効力」、又は単に「免罰効果」等といいます。

具体的な例を挙げると、法定労働時間(週40時間、1日8時間。労働基準法第32条)や法定休日(原則1週1回。同法第35条)を超えて労働させれば、法令違反として刑事罰(6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となり得ます。しかし、適法な労使協定を締結し、かつ、労働基準監督署長に届け出た上でのことであれば、法令違反にはあたらず、したがって罰則の適用もありません。

ただし、こうした効力は、あくまでも労使協定の範囲内に限られます。当該協定で定める限度を超えて労働させ、又は当該協定で定める手続等の要件に反して時間外労働や休日労働をさせれば、労働基準法違反にあたります。

 

労使協定のみで時間外・休日労働を課することはできません。

ここで注意すべきは、労使協定の効力はもっぱら国家行政、具体的には労働基準監督署長等の所管行政庁に対してのみ生じることです。労使協定を締結したからと言って、それのみを根拠として労働者に時間外・休日労働を課することはできません。

労働契約が私人間の契約である以上、雇用契約書や就業規則、労働協約等において、使用者は必要な場合、時間外・休日労働を命じることができ、労働者はその命令に従わなければならない旨が定められていなければ、労働者には時間外・休日労働すべき民事上の義務は生じません。

 

労使協定を結ぶべき相手は誰でしょう?

労使協定の一方の当事者が使用者であることは明らかです。

それでは、他方たる「労働者の団体意思」とは、具体的には誰のことでしょうか?

労働基準法第36条を見ると、「事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合においては事業場の労働者の過半数を代表する者」とあります。

しかし、労働組合の組織率は2割を割り込んだとされる今日、中小企業であればなおさら設問のように労働組合そのものがない事業場が多数を占めるのが実状と思われます。

そこで、次号では、

・労働組合はあるが、過半数にいたらないときは?

・労働組合はないが、親睦会はあるときは?

・労働組合がないとき、又は過半数にいたらないとき、労働者の過半数を代表する者として認められる者とは?

・過半数というとき、パートタイマーや派遣労働者等の取扱は?

等について整理します。

Q.労使協定を結ばずに届け出た「時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号)」の効力は?

私は、正規社員15名、パートタイマー3名を雇い入れて、金属製品製造業を経営しています。臨時の受注や納期の変更があった場合等、時間外労働や休日労働を命ずることがあります。

先日、労働基準監督署長に「時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号)」を提出した際、監督官から「労使協定は結んでありますか?」と尋ねられました。当社には親睦会はありますが、労働組合はありませんから、今までずっと労使協定を結ばないまま届出をしてきました。

その場合、協定届の効力はどうなりますか?また、いったいなぜ、労使協定を結ばなければならないのでしょうか?

 

A.労使協定が結ばれていなければ、協定届は無効です。

先に結論を言ってしまうと、労使協定が結ばれていなければそれらの協定届は無効です。

時間外労働・休日労働をさせるための要件は労働基準法第36条に定められているので、時間外労働・休日労働に関する労使協定は、「36(サブロク)協定」と通称されています。

同条は、「使用者は(中略)書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては(中略)その協定の定めるところによって、労働時間を延長し、又は、休日に労働させることができる。」と定めています。つまり、書面による協定(労使協定書)は協定届の前提であり、それを欠いた届出は無効ということになります。

 

労使協定制度の趣旨は何ですか?

近代法の基本的かつ重要な原則の一つとして、契約自由の原則があります。これは、私人間(しじんかん)の契約関係は、当事者の自由な意思と双方の合意に基づいて決定されるべきで、国家(行政)はできる限り干渉してはならないというものです。

ところが、そうすると、いかに不当で苛酷な労働条件であっても、同意して契約を結んだ以上、まったく合法かつ有効であり、労働者はその労働契約に拘束されることとなってしまいます。そこで、契約自由の原則の例外として、さまざまな労働関係法令が整備されてきました。なかでも労働基準法は、労働者保護の観点から、国家行政が使用者に一定の行為を禁ずる、行政取締法としての性質を有しています。

法令が原則として禁止している事項を例外的に許容するときは、個々の労働者ではなく、その事業場の労働者全体の見地から判断することが大切です。このように考えると、労使協定制度の趣旨は、その必要があると認められる場合、本来適用すべき法令上の原則を適用せず、労働者の団体意思が同意した範囲内で例外的な取扱を許容することにあるといえます。

使用者と労働者の団体意思が同意した内容を書面にしたものが、労使協定書です。協定届(様式第9号)は、そのことを前提として、所管の行政庁である労働基準監督署長に労使協定を結んだ事実及びその労使協定の内容を届け出る書面です。

ただし、協定届において労働者の団体意思が同意した事実が証されているとき、具体的には労働者側の署名捺印があるとき、その協定届は労使協定書を兼ねるものとして認められます。

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