2015年9月アーカイブ

減給の制裁

Q.遅業員が遅刻したとき、30分未満は30分、30分以上は1時間として賃金を控除しています。問題がありますか?

当社は、従業員が遅刻したときの賃金控除について、計算の簡略化のため30分未満は0.5時間、30分以上は1時間として計算しています。

先日、中途採用した従業員から、実際に勤務していない時間を超えて賃金を控除しているのは違法ではないか、との指摘がありました。長年こうした対応で、これまで問題は生じていません。本当に違法にあたるのでしょうか?

 

A.賃金控除できるのは、実際の遅刻分までです。実際の分を超える控除は、減給の制裁処分として対応すべきです。

労働基準法第24条は、賃金は直接労働者に、その全額を支払わなければならない旨を定めています。ただし、ノーワーク、ノーペイの原則により、労働しなかった時間は支払う必要はありません。従業員が遅刻したとき、その時間はノーワークですから、当然、賃金は発生しません。

それでは、時間の切上げ処理はどうでしょう?設問のケースでは、仮に1分の遅刻でも、30分の分の賃金を控除しています。つまり、実際のノーワーク分を超えた賃金控除ということになり、従業員の指摘どおり、労働した分の全額支払を定める第24条違反にあたります。本来、遅刻した時間については、1分単位で計算して控除しなければなりません。実際の分を超えた控除を行うとすれば、それは従業員の遅刻という服務規律違反に対して使用者が制裁を科する、減給の制裁処分として対応すべきです。そのためには、予め就業規則により、賃金債権を減額する制裁措置について定めておくことが必要です。

 

制裁を科する場合、一定の限度があります。

就業規則に定めたからと言って、使用者はほしいままに賃金を減額できるわけではありません。減額があまりにも多額であれば、労働者の生活を脅かすおそれがあるからです。労働基準法第91条(制裁規定の制限)において、減給による制裁の限度として、次の2つが示されています。仮に制裁を科するときは、この範囲の中で行わなければなりません。

(1)減額は、一回の減額が平均賃金の半額を越えないこと

(2)減額の総額が、一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えないこと

ここで注意が必要となるのは、ひと月の間に服務規律違反を何度も繰り返す社員のケースです。違反の内容によっては、制裁額が(2)の「一賃金支払期における賃金の総額の10分の1」を超えることもあり得ます。その場合、超えた分は、翌月の賃金から控除しなければなりません。

 

業規則の記載例は次のとおりです。

第○条(遅刻) 

従業員が遅刻した場合、賃金を控除する。

なお、30分までを30分、30分を超えた時間を1時間として計算する。

 

第○条(遅刻における制裁)

従業員が遅刻した場合、減給による制裁を行う。

その場合、実際の遅刻分を超えて控除した額は、同条による制裁とする。

Q.非行により懲戒解雇した元従業員から、解雇予告手当の請求がありました。応じる必要はありますか?

当社の経理担当者が、長年にわたって売上金の一部を着服していたことが発覚しました。就業規則においては、従業員が横領等を行った場合、懲戒解雇処分とする旨を定めています。

そこで、従業員を即時解雇したところ、後日になってこの元従業員から解雇予告手当の請求書面が届きました。こうした請求に応じる必要はないと考えていますが、間違いないでしょうか?

 

A.解雇予告手当を支払う必要があります。

解雇と解雇予告手当との関係について、労働基準法第20条第1項は次のとおり定めています。「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。」

設問のケースでは、従業員の横領を理由として解雇処分を行ったというのですから、但書に言う「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」にあたると考えられます。すると、解雇予告手当を支払わず即時解雇したことには、何ら問題がないように見受けられます。

しかし、ここで注意が必要です。同条の第3項を見ると、「前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。」とあります。つまり、但書適用(天災事変や労働者の責に基づく解雇)の場合、前条である第19条の第2項を遵守しなければならないのです。ストレートに書かれていないため、つい見落としてしまう条文ですね。

そこで第19条第2項を見ると、「前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。」とあります。返すがえすも回りくどい定め方なので結論を言うと、但書の適用、つまり30日前の解雇予告又は解雇予告手当の支払を行わないとする場合、行政庁(労働基準監督署)の認定が必要です。

労働基準法は、より強い立場にあると考えられる事業主から、より弱い立場にあると考えられる労働者を保護することが目的です。このため、職務上の非行等、明らかに「労働者の責に帰すべき事由」であっても、公正中立な第三者的立場にあると考えられる行政庁のお墨付きなしに解雇予告又は解雇予告手当の支払義務は免除されません。こうしたことから、設問のケースでは、まさに「泥棒に追い銭」の印象ですが、元従業員の請求に応じて解雇予告手当を支払う必要があります。

 

解雇そのものが無効とされる可能性はあるのでしょうか?

けれども、もっと心配なことがあります。解雇予告又は解雇予告手当の支払を怠った場合、解雇そのものが無効とされる懸念はないか、ということです。

本来、いかなる条件であろうと、それが双方の自由意思に基づく限り、その契約は有効という民法に定める契約自由の原則があります(一般法)。これに対し、使用者と労働者という関係においてより弱い立場にあると考えられる労働者を保護するために労働基準法等(特別法)が定められているわけです。

 

解雇予告又は解雇予告手当の支払を怠ったとしても、それは特別法に定める手続上の瑕疵に過ぎません。労働者は誠実に労務を提供し、使用者は適正な対価を支払うという労働契約そのものに違反する非行による解雇であれば、解雇そのものは有効とするのが通説です。

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