2015年11月アーカイブ

Q.従業員の家族が、休日に社有車で交通事故を起こしました。会社に損害賠償義務はあるのでしょうか?

当社は、営業職に社有車を供与しています。取引先が遠方で遅くなったときなど、社有車で直帰することを認め、ただし、私用での使用は禁止しています。これらは、就業規則にも明記しています。

ところが、休日の前日に社有車で直帰した従業員の家族が、休日、従業員に無断で社有車を運転し、交通事故を起こしてしまいました。

後日、当社に損害賠償請求が届きましたが、こうした場合でも賠償義務はあるのでしょうか?

 

A.車両の所有者であれば、会社側の責任は免れません

業務遂行中の事故であれば、会社は従業員の監督責任(民法第715条の使用者責任)を問われます。また、当該事故による人的損害については、自動車損害賠償保障法第3条に定める運行供用者責任も問われることとなります。

一方、設問のケースは、業務遂行中の事故でないことは明らかで、かつ、「運行の用に供」していたとも言えません。そもそも事故当事者である従業員の家族と会社とは直接的には関係はないので、賠償請求を受けて納得がいかないことも無理はありません。

しかしながら、判例等を見ると、車両(社有車)を所有している限り、やはり会社側は責任を免れないものと考えられます。ただし、被害者に対し賠償したうえで、従業員やその家族に対しあらためて損害賠償を求めることは可能です。

 

「外観信頼」を根拠として、その責を問われることとなります

実質的に業務遂行中ではないにもかかわらず、使用者責任を問われてしまう根拠として、「外形理論」や「外観信頼の法理」といわれる法律上の考え方があります。つまり、外観上、業務を遂行しているとみなすことが可能であれば、その外形や外観信頼を根拠に責任を認めるというものです。やや余談になりますが、これらの法理が適用された例として、「非番中の警察官が制服を着用して犯した強盗殺人事件に対し、国家賠償法の適用を認めた判例」が有名です。国側は、非番中であったこと、強盗殺人は警察官の職務遂行上の行為とは到底言えないこと等を主張しましたが、使用者責任は免れないとの判決でした。

とりわけ交通事故においては、被害者保護の観点から、判例上、責任条件についての適用範囲や内容等をより広く解釈する傾向にあります。設問のケースについて言うと、一般的な意味での外形や外観は必ずしも判断基準とされません。具体的には、当該社有車に社名の表示等はないなど、一見、自家用車と変わらないとしても、また、事故当時、従業員の家族は私服姿で、業務遂行中の外形とは言えないとしても、事故車両の所有権が会社にあれば、それを外形または外的信頼の根拠として、社有車運転について会社支配、運行支配が及ぶと判断され、責任を問われるものと考えられます。

なお、就業規則において、従業員以外の社有車使用や私用での使用を禁じていたとしても、就業規則は会社と従業員との関係を規定するにとどまるので、それを根拠として被害者に抗弁はできません。

 

自動車管理に一層の注意を払うことが重要です

保管場所確保の必要上、社有車(リース車両を含む)を従業員に使用させ、出退勤使用も認めるケースは少なくないようです。そうした場合、業務遂行上はもとより、私的利用における事故対応も想定した自動車管理が重要となります。

Q.私傷病で長期欠勤した社員にも、新たに有給休暇を付与すべきでしょうか?

入社5年目の社員が、今年の10月1日に年次有給休暇付与の基準日を迎えます。この社員は現在、精神疾患による休職中で既に2ヶ月間欠勤している状況です。当社では、長期欠勤者の有給休暇の新たな付与について特に定めをしていません。この場合、基準日には新たに有給休暇を付与しなければなりませんか?

 

A.就業規則上、特例がなければ欠勤として処理し、新たに有給休暇を付与しなくても問題ありません。

労働基準法第39条において、「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」と定めています。付与する年次有給休暇は継続勤務年数1年ごとに増え、6年以上勤務した場合の法令に定める年次有給休暇は20労働日です。その後は、何年勤務しても増えません。また、年次有給休暇与の要件は、勤続年数に加えて、「全労働日の8割以上出勤」です。

なお、全労働日とは、会社の休日を除いた日、つまり、従業員が出勤すべき日です。仮に設問の会社の休日が土曜、日曜、祝日、年末年始(5日間)、夏季休暇(3日間)とした場合、全労働日は1年で238日(従業員の雇入れの日により若干異なります。)です。その内の8割出勤とは、言い換えれば欠勤2割未満ということです。上記の前提で言うと、欠勤日数の上限は47日です。

さて、従業員は既に2ヶ月間休職とのことですから、全労働日の2割以上の欠勤にあたり、年次有給休暇の付与要件を欠いています。したがって、会社としてこの従業員に対し新たな年次有給休暇を付与する法令上の義務はありません。

ただし、就業規則等において、「私傷病による欠勤期間は、年次有給休暇の出勤率の計算の際に出勤したものとみなす」等の規定があれば、その期間は、たとえば賃金の支払等の有無に関わらず、年次有給休暇の出勤率の計算上は出勤日とカウントします。

 

法令上、欠勤しても出勤したものと見なされる日はありますか?

法令上、欠勤(就労が全くなかった日)しても、年次有給休暇の出勤率の計算上は出勤日としてカウントすべき日は次のとおりです。

(1)業務上の疾病により療養の為、休業した期間

(2)育児・介護休業の期間

(3)産前・産後のために休業した期間 

(4)無効な解雇期間 

つまり、上記以外の欠勤は、年次有給休暇の出勤率の計算において出勤日として取り扱うか否かは事業主が任意に定めることができます。繰り返しますが、労働関係法令において私傷病による休職の取扱いは定めがないのと同様に、欠勤日の取扱いについても事業主に委ねられているのです。

こうしたことから、設問のケースのように私傷病による欠勤日の有給休暇の出勤率の計算上の取扱いについては、就業規則に特段の定めがない限り、欠勤日と計算して問題はありません。

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