2017年11月アーカイブ

Q.有給休暇消化中に別の会社と雇用契約した社員に懲戒処分は可能ですか?

当社を退職することが決まっており、現在、有給休暇消化中の従業員に関してハローワークから問合わせがありました。それによると、従業員は、既に再就職し転職先で雇用保険の取得手続中で、当社の喪失記録が必要なので手続をお願いするとのことです。

当社としては、そうした事情を全く聴いていなかったので、有給休暇を消化し終わった日を雇用保険の喪失日とする予定でした。

この場合、再就職先の取得日に合わせて変更しなければならないのでしょうか?また、有給休暇消化中といえども、在職中であることは間違いありません。当社の就業規則に照らすと、兼業禁止の懲戒事由に該当しますが、懲戒処分を科することはできますか?

 

A.退職日は本人及び再就職先と話し合いましょう。また、懲罰は難しいと考えます 

年次有給休暇は、1年間(初年度は6か月間)継続勤務し、所定労働日の8割以上の勤務をした労働者に、法で定める日数を与えます。付与要件を満たした労働者は、法律上当然に所定日数の年次有給休暇の権利を取得します。労働者が年次有給休暇を使用したいときは、使用者にその請求をおこなうことで足り、使用者はそれを拒否することはできません。ただし、使用者は、労働者が請求した時季が事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に変更することができます(使用者の時季変更権)。

 

ところで、退職予定者が、退職日までに残りの有給休暇を全て請求した場合、使用者は時季変更権を実質上行使できません。変更する日が退職日までに確保できないからです。したがって、退職予定者は、残りの有給休暇を全て消化して退職することが可能です。

 

それでは、その間、別の会社と雇用契約を結ぶことはできるでしょうか?結論から言えば、イエスということになります。多くの会社は、就業規則等において兼業兼職を禁止しています。しかし、兼業兼職は、法律違反にはあたりません。判例においても、兼業兼職については、労働者に有利な判断が下されることが多いのが実態です。

 

さて、設問のケースを見ると、有給休暇消化中に他の企業と雇用契約を結んだ行為は、会社の兼業禁止規定に反することは明らかです。したがって、就業規則に則り懲戒処分を科すことが考えられます。ところが、この従業員は、退職の日まで有給休暇を取得しているのですから、今後、勤務することはありません。仮に、再就職先が競合他社等で、この従業員が競争上重大な影響を及ぼす立場にあるなど、兼業することによって会社に損害を与える可能性や、その具体的な内容が立証できる場合はいざしらず、特に損害もないとすれば、懲戒処分を科すことは難しいと考えます。

 

ただし、退職日についての話合いは可能です。会社の兼業禁止規定を根拠に、兼業した日の前日をもって会社を退職することで本人の同意を得てはいかがでしょうか?その上で、仮に本人が同意しなければ、事実上兼業を認めることもやむを得ません。

 

次に、兼業している社員の雇用保険上の取扱です。厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領」によれば、同時に2以上の雇用関係にある労働者については、当該2以上の雇用関係のうち一つの雇用関係(原則としてその者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係)についてのみ、被保険者となるとしています。つまり、賃金の高い方の会社の被保険者となります。

 

従業員及び転職先にはこうした旨を説明し、賃金を確認した上で、必要な手続を行います。場合によっては、転職先の雇用保険取得日を変更してもらうこともあり得ます。

 

兼業による雇用保険上のトラブルは少なくありません。両者が感情的になってしまい、取得日や喪失日を変更しないということです。「雇用保険に関する業務取扱要領」に準じて処理を行うことで、解決を図るべきと考える次第です。



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