2018年5月アーカイブ

Q.解雇予告期間中、業務災害が生じた場合、解雇日を変更する必要はありますか?

製造業を営んでいます。先日、ある従業員が、不注意から機械の操作を誤り、大量の不良品を発生させてしまいました。当社の就業規則には懲戒解雇の規定がないので、1221日に解雇予告を行い、翌年121日付で解雇することとしました。ところが、118日、この従業員が機械に接触して受傷する業務災害が発生しました。療養に1か月以上を要し、出勤可能となるのは早くても31日との診断です。このような場合、既に解雇予告を行った後であっても、解雇日を変更する必要はありますか?また、変更する必要があれば、具体的にはどうするべきでしょうか?

 

A.解雇予告後であっても、業務災害により休業する期間及びその後30日間は「解雇制限期間」となります

懲戒解雇であれば、処分が告知された時点で即時に効力を発揮し、猶予期間等を設ける必要もありません。しかし、設問のように、懲戒解雇について就業規則等で定めていなければ、処分は行えないとされます。これは、懲戒が企業組織内の秩序保持義務違反に対する制裁罰であることにかんがみ、刑法における罪刑法定主義の考え方を準用するものと捉えることができます。

 

さて、通常の解雇であれば、労働基準法(以下「同法」と言います。)第20条に定めるとおり、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。予告期間は、民法の一般原則に則り、予告日の翌日より起算して暦日30日を満了するまでで、その翌日が解雇の効力発生日にあたります。要するに、予告日から解雇日までの間に中30日を設ける必要があり、暦日ですから、休日や休業日を除く必要はありません。

一方、同法第19条は「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(中略)は、解雇してはならない。」と定めているので、この設問は、同法第20条と第19条が競合した場合の考え方を問うものと言えます。

 

結論から言うと、その場合は第19条が優先され、既に解雇予告を行った後で、その予告期間が満了に近づいていたとしても、それらは一切考慮されないこととなります。

 

設問の場合であれば、業務災害が発生した118日からその療養のために休業した期間、及び出勤するか又は出勤可能な状態となった日から起算して暦日30日を満了するまでの期間は、解雇制限期間として解雇を行うことはできません。なお、「療養」とは治癒(症状固定)であり、同法及び労働災害保険法上の療養・休業補償の対象と同じです。治癒後の通院等があっても、その分を延長する必要はありません。

 

それでは、仮に、業務災害にあった労働者が、 期間の定めのある労働契約を締結している者であって、療養期間中に契約期間が満了した場合はどうでしょう?

その場合、期間満了による労働契約の終了(雇止め)は解雇にあたらないため、解雇制限期間は適用されません。したがって、仮に療養期間中であっても、満了に伴い自然に契約終了することとなります。

 


 



 

 

Q.メンタル不調を理由とする退職の申出がありました。後日にトラブル等にならないため留意すべき点はありますか?

先日、ある従業員から突然退職届が提出されました。理由を尋ねると、抑うつ症状が続いており精神科を受診中との説明です。上司に確認したところ、勤務成績は良好で、上司や同僚との折り合い等の点でも思い当たる節はないとのことです。念のため過去1年の超過勤務実績を調べると、最も多い月でも15時間未満で、長時間労働の実態は見受けられません。近年、従業員のメンタル不調について、会社側の責任が厳しく問われる事例をよく耳にします。後日にトラブル等にならないためには、どのような点に留意すべきでしょう?例えば、当社は病気休職制度を就業規則で定めています。慰留し、いったん休職措置を採った上で、その後に退職手続とした方がいいでしょうか?


 

A.先ずは使用者の安全配慮義務違反がなかったか確認することが大切です

労働者が業務を遂行する過程において、使用者は労働者の生命及び身体等を危険から保護する安全配慮義務があります。具体的には労働安全衛生法など関係法令の遵守や、メンタル面に関しては長時間労働、業務上のストレス、パワハラなど職場内のストレス等によって、健康が損なわれることがないよう努めなければなりません。

そこで設問を見ると、勤務成績の低下など思い当たる節はなかったし、長時間労働の実態もありませんでした。仮に、上司が従業員のメンタル不調又は長時間労働等に気づいていながら、何らの対応もしなかったとすれば、不調の原因はさておいても、対応上の不備を問われる懸念があります。しかし、設問の記述限りでは、そうした恐れは少ないものと考えられます。

一方、メンタル不調を理由とする退職の場合、後日、意思表示の瑕疵を理由に、取消又は無効を主張される可能性があります。例えば、メンタル不調のために判断能力が著しく減退した状態で、使用者側の詐欺又は強迫により退職届を提出させられたとして取消(民法第96条)を主張されるケースです。また、メンタル不調で就労できないと直ちに解雇されるとの錯誤により退職届を提出したとして無効(民法第95条)を主張されること等も考えられます。

これらのトラブル防止のため、従業員が退職の意思を示したときは、丁寧にコミュニケーションを取りその内容を記録した上で、退職願又は退職届を文書で提出させることが重要です。その観点から改めて設問を見ると、既に退職届が提出されているので、従業員及び上司への聞き取り結果等を記録しておけばいいでしょう。また、病気休職制度を就業規則に定めて周知しているので、前述の錯誤の主張にも対抗できると考えられます。そもそも退職の意思が示されたとき、使用者側に慰留する義務はありません。意思を確認できれば、敢えて慰留や休職制度の教示又は適用等は不要です。

 

「退職願」、「退職届」、「辞表」どう違う?

多くの会社は就業規則等で退職に関する事項を定めています。たとえば、「退職する場合は...少なくとも○日前に、退職願を×を経由して△宛提出すること」等です。退職は労働契約の解除であり、解除を願い出る意思表示が退職願です。口頭でも足りるとされますが、退職申出の事実やその意思が固いこと等を使用者と従業員との双方で確認する趣旨から文書提出を求めています。また、提出によって直ちに退職となるわけではなく、権限者の承認後に退職となるので、承認前であれば撤回が認められることもあります。

これに対して退職届は退職の意思表示を確定して提出するもので、受理された時点で退職となり、撤回は認められません。

一方、辞表は社長や取締役など雇用関係のない立場の人が、その役職を辞めることを届け出る書類です。


 

 



 

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