社会労働関係法令改正情報の記事

厚生年金保険法の改正について

厚生年金保険法の規定に基づき、令和2年9月から厚生年金保険の標準報酬月額の上限が変更になります。従前の標準報酬月額の上限等級(31級.62万円)の上に1等級が追加されることにより、次のとおり上限が引き上げられます。

【改正前】

月額等級

標準報酬

月額(円)

報酬月額(円)

保険料(円)

全額

(18.3%)

被保険者

負担分

(9.15%)

第31級

620,000

605,000以上

113,460

56,730

 

【改正後】

月額等級

標準報酬

月額(円)

報酬月額(円)

保険料(円)

全額

(18.3%)

被保険者

負担分

(9.15%)

第31級

620,000

605,000以上

635,000未満

113,460

56,730

第32級

650,000

635,000以上

118,950

59,475

 

今回の改正に伴い、改正後の新等級に該当する被保険者の方がいる事業主に対して、令和2年9月下旬以降、日本年金機構より「標準報酬改定通知書」が送付されます。

なお、標準報酬月額の改定に際して、事業主からの届出は不要です。

(出典:日本年金機構 令和2年7月20日)

7月の算定基礎届で第31級の決定を受けた方が、第32級に該当した場合は、10月支給の給料から保険料が変更になります。事務処理に誤りのないよう、改めてご注意をお願いいたします。

 

高年齢就業者に係る改正社会保険労働関係法令が施行されます

令和3年度以降、60歳以上の高年齢就業者に係る様々な社会保険労働関係法令の改正が施行されます。主なものは次のとおりです。

(1)令和3年4月施行

高年齢者雇用安定法の改正により、事業主の努力義務として、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、労使同意した上で雇用以外の措置を講ずることなど、70歳までの就業支援が求められます。

(2)令和4年4月施行

① 雇用保険法の改正により、複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者に雇用保険が適用されます。

② 厚生年金法の改正により、

・ 60歳から64歳に支給される在職老齢年金の年金支給停止基準が、28万円から47万円に引き上げられます。

・ 65歳以上に支給される在職老齢年金は、現在は退職時まで改定されませんが、毎年改定されることとなります。

・ 現在60歳から70歳までの間で選択できる年金受給開始時期が、60歳から75歳までの間に拡大されます。なお、国民年金法の改正により、国民年金でも同様に拡大されます。

(3)令和7年4月施行

 厚生年金法の改正により、60歳時に比べて賃金が75%未満に低下した被保険者に対し、低下率に応じて支給されている高年齢雇用継続給付金が縮小されます。

 

65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置について

高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者就業確保措置については、労働者側の希望を前提に65歳以上の就業確保を義務付けた平成24年改正が、大きな節目でした。当時は60歳で定年を迎えれば、完全引退が普通でした。ところが、年金支給開始年齢の65歳への引上げに伴い、賃金から年金への移行に空白が生じることとなり、65歳までの雇用が事業主に課されたのです。改正当時は、労使協定により制度適用対象者の基準を定めることが可能でしたが、翌年には、原則、希望者全員を65歳まで雇用しなければならないとされました。それから10年足らずの令和3年4月1日以降、努力義務とはいえ、事業主には70歳までの雇用確保が求められます。

改めて改正内容を整理すると、次のとおりです。

(1)70歳までの定年引上げ

(2)70歳までの継続雇用制度の導入

(3)定年廃止

(4)過半数組合又過半数代表者の同意を得た場合、次の制度を導入することができます。

① 高年齢者が希望するとき、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度

② 高年齢者が希望するとき、70歳まで継続的に、事業主が自ら実施する社会貢献事業か又は事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う貢献事業に従事できる制度

ただし、(4)の諸制度を導入できる事業主は限られると考えます。平成24年改正の際の実態からも、(2)70歳までの継続雇用制度の導入 が大半となりそうです。努力義務からのスタートですが、70歳までの雇用が義務となる日は遠くないかもしれません。

 

高齢労働者の就労環境向上のガイドラインが公表されました

超高齢社会を迎えるわが国において、高齢者の労働力確保は不可欠です。年金制度や社会労働法令の改正等とも相まって、高齢者の就労拡大が続き、60歳以上の雇用者数は過去10年間で約1.5倍に増加しました。そうした中で、高齢者の労働災害も増加傾向です。休業4日以上の死傷災害に占める60歳以上の割合は約26%で、29歳以下と39歳以下(いずれも約14%)の合計に匹敵する水準です。中でも、転倒災害、墜落・転落災害の発生率が若年層に比べて高く、特に女性で顕著です。加齢による身体機能の低下等に伴い、高齢者の労働災害発生率は高く、休業も長期化する傾向にあります。

本年3月、厚生労働省は、高齢者が安心して安全に働ける職場環境づくりを通じ、体力に自信のない人や仕事に慣れていない人を含め、全ての働く人の労働災害防止を目指す「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(通称:エイジフレンドリーガイドライン)を策定・公表しました。その概要は次のとおりです。

法令等による義務付けのあるものへの取組はもとより、それぞれの企業における高年齢労働者の就業状況や業務内容など実情に応じて、国や関係団体等の支援も活用しつつ、実施可能な高齢者労働災害防止に対策に積極的に取り組むことを求めています。言うまでもありませんが、ガイドラインは、あくまでも努力義務です。しかし、従業員に占める高齢労働者の拡大は、全ての企業における趨勢であり、おおいに参考とすべきと考える次第です。

事業主の役割として、安全衛生管理体制の確立、職場環境の改善、高年齢労働者の健康や体力の把握など5項目を求めています。

一方、労働者の責務は、自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、自らの健康づくりに積極的に取り組むことです。

エイジフレンドリー補助金が新設されました

こうした取組を下支えするものとして、令和2年度にエイジフレンドリー補助金が新設されました。本年度分は、6月12日に申請受付が開始され、10月末日までが申請期間となっています。

次の要件を満たす事業主が、働く高齢者を対象として職場環境の改善対策を行った場合、それに要した費用の一部を助成します。

・ 常時1名以上の高年齢労働者(60歳以上)を雇用

・ 常時雇用者数か又は資本金等が一定規模以下の中小企業事業者。(例えば製造業等の場合、300人以下か又は3億円以下)

・ 労働保険及び社会保険に加入

また、改善対策として認められる対象は次のようなものです。

(1)身体機能低下を補う設備・装置の導入

  スロープ等段差解消や手すり、床等の滑り止め、照度改善など

(2)働く高齢者の健康や体力の把握

  体力チェック、健康診断等に基づいた栄養指導・保健指導など

(3)安全衛生教育

  加齢に伴う労災リスク増大の理解促進のための教育など

このほか、新型コロナウイルスの感染防止を図りつつ、高齢者が安心して働けるよう、利用者等との接触を減らす対策も対象です。具体的には、介護におけるリフトやスライディングシート、移乗支援機器等の導入、客室への荷物配送、配膳等の自動搬送機器の導入、体調急変を把握できる小型携帯機器(ウェアラブルデバイス)を活用した健康管理システム等です。ただし、使い捨てマスク等の消耗品やビニルカーテン等の仮設設備等は除きます。

かねがねお伝えしていますが、補助金目当てにオフィス改造を行うとすれば本末転倒。しかし、補助対象は、オフィス改善を行う場合には必然とも言える内容です。なお、この補助金は、一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会の中に設けた「エイジフレンドリー補助金事務センター」が受付から支払までの事務を担います。

 

新型コロナウイルス感染症のストレスを抱えた妊娠従業員への配慮義務が事業主に求められました

令和2年57日、男女雇用機会均等法(以下「均等法」と言います。)の指針(告示)改正により、妊娠中の女性労働者が母子保健法の保健指導又は健康診査に基づき、その作業等におけるコロナに感染する恐れに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師又は助産婦の指導を受け、それを事業主に申し出た場合、事業主は作業の制限や出勤の制限、具体的には在宅勤務又は休業等の必要な措置を講ずるべきことが義務付けられました。

この義務は、当面、本年57日から来年131日までの特例として適用することとされています。

具体的な手続等は次のとおりです

コロナの動向は依然として予断を許しません。そうした中で働く妊娠中の女性労働者が、職場の作業内容により、感染について不安やストレスを抱えることは容易に想像できます。そうした方々の母性健康管理を適切に図ることを目的として、今回の特例措置が設けられたと言えます。

従来から均等法においては、妊娠中又は出産後1年以内の女性労働者が保健指導・健康診査の際に主治医等から指導を受け、事業主に申し出た場合、事業主はその指導事項を守ることができるようにするために必要な措置を講ずる必要がありました。今回の措置は、具体的・定量的な健康上の懸念に加えて、心理的な要素であり個人差が大きく検証困難と考えられるストレスを対象にしたことが注目されました。

手続として、妊娠中の女性労働者は、主治医から指導を受けたとき、指導事項を的確に伝えるため、母子連絡カード(母性健健康管理指導事項連絡カード)を作成してもらい、それを事業主に提出します。これらの点は、従来からのコロナ以外の健康懸念のケースと何ら変わりません。提出を受けた事業主は、当該指導事項に沿って必要な措置を講じますが、具体的には次のようなことが考えられます。

(1)妊娠中の通勤緩和。具体的には時差出勤など混雑時を避けた通勤時間の設定など

(2)妊娠中の休憩に関する措置。具体的は労働基準法に定める休憩時間以上の休憩の付与など

(3)妊娠中、又は出産後の症状に関する措置。具体的には作業の制限や勤務時間の短縮、在宅勤務、休業など

また、 妊娠中の女性労働者がこれらの措置を求めたことや措置を受けたことを理由として不利益取扱いをすれば均等法違反にあたることは、これまでにもお知らせしたとおりです。

ただし、賃金等についてはノーワークノーペイの原則が優先すると考えられます。実際には、会社ごとの就業規則等における休業時の取扱いについての定めぶりに従って行えばいいでしょう。

 

民法改正に伴い賃金請求権の時効消滅期間の延長など労働基準法の一部が改正されました

民法改正に伴う労働基準法の主な改正は、次のとおりです。

(1)賃金請求権の消滅時効の延長(2年→5年)

(2)賃金台帳などの記録の保存期間の延長(3年→5年)

(3)付加金の請求期間の延長(2年→5年)

ただし、当分の間、延長は3年とすることとしています。また、退職金請求の消滅時効は現行どおり5年としています。

次に、その対象となる具体的内容です。

(1)

請求権が延長された賃金

(当分の間3年、ただし退職金を除く)

・金品の返還・賃金の支払・非常時払

・休業手当・出来高払制の補償給

・時間外、休日労働に対する割増賃金

・年次有給休暇中の賃金

・未成年者の賃金請求権

(2)

保存すべき記録

(当分の間3年)

・労働者名簿・賃金台帳・雇入れに関する書類・解雇に関する書類・災害補償に関する書類・賃金に関する書類・その他労働関係に関する重要な書類(出勤簿等)

(3)

付加金の対象となる違反

・解雇予告手当・休業手当・割増賃金

・年次有給休暇の賃金

Q.5月5日(火)の祝日に出勤を命じた場合割増賃金率は25%と35%のどちらで計算する必要がありますか?

当社は、1日8時間労働、土曜・日曜、その他国民の祝日を休日としています。今年、社員に5月5日の祝日に勤務を命じなければなりません。そのときの割増賃金の計算ですが、5月5日は休日に当たるので、休日労働の割増賃金率35%で計算すべきと考えました。しかしその一方、5日に出勤してもその週の総労働時間は24時間なので、割増率は25%でよい気もします。どちらが正しいですか?

A.割増賃金は発生しません

令和2年4月1日以降の賃金支払日から、改正労働基準法が適用されます。賃金未払いがあった場合、労働者からの賃金請求権はこれまでの2年から5年に延長されます。ただし、当分の間は3年とすることは前述のとおりです。

一方、割増賃金の未払いは、付加金の対象となる違反です。労働者の付加金請求を裁判所が認めた場合、事業主は割増賃金と同額の付加金を支払わなければなりません。つまり、2倍の割増賃金を支払うことになり、金額次第では、事業経営にも影響を与えかねません。したがって、未払い賃金を絶対に発生させないことが重要です。

さて、質問への答えです。設問の会社の場合、5月5日(火)の国民の祝日に勤務をさせても割増賃金は発生しません。割増賃金は、労働時間が週40時間又は1日8時間を超えた場合、超えた時間に対して25%増しの賃金を支給するものです。5月5日の祝日に勤務しても、週の総労働時間が24時間であれば、40時間を超えていないので、割増賃金は不要です。

ところで、55日の労働は、そもそも休日労働に当たるのでしょうか?労働基準法上の休日労働は、週に1日も休みがなかった場合の労働、又は月の休みが4日未満の労働です。設問の会社では、55日(火)に出勤しても、その週の休日は3日・4日・6日・9日と4日間あります。したがって、55日の労働は休日労働に当たりません。法令上はこのとおりですが、仮に就業規則等で法令を超えた処遇を定めている場合は、その規定どおりに対応する必要があります

法改正の動き

労働基準法の改正により賃金請求権の消滅時効期間が5年に延長される見通しです

民法の一部を改正する法律(以下「改正民法」と言います。)が、令和241日から施行されることに伴い、施行日以降の契約に基づく債権の消滅時効期間は原則5年に統一されます。旧民法の債権消滅時効は契約ごとに異なり、使用人の賃金請求債権の消滅時効は1年で、労働基準法は労働者の権利保護の観点から、賃金請求債権の消滅時効期間を2年に延長する例外的取扱いを定めていました。しかし、改正民法の施行により、このままでは労働基準法が民法を下回る逆転が生じてしまいます。そこで、賃金請求債権の消滅時効期間を改正民法と合わせて5年に延長するとともに、当分の間経過措置を講ずることが、今国会で審議されています。仮に成立したとすれば、令和241日から、賃金請求権の消滅時効期間、割増賃金未払い等に係る付加金の請求期間、退職手当請求権の消滅時効期間、賃金台帳等の書類保存義務は、いずれも5年となります。ただし審議中の法案は、使用者への影響を考慮し、退職手当請求権を除き、当分の間、消滅時効期間を3年としています。

 

高年齢者雇用安定法の改正が見込まれています

現在、高年齢者雇用安定法に定める高年齢者雇用として、事業主は65歳までの雇用確保を義務付けられています。しかし、今後は70歳までの雇用を求められることが見込まれます。現在審議中の法改正が成立した場合、令和3年4月以降、65歳から70歳までの高年齢者の就業確保措置として、①定年引上げ ②継続雇用制度の導入 ③定年廃止 ④労使で同意した上での雇用以外の措置の導入(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度) のいずれかを講ずることが努力義務とされます。これらは、近い将来に義務規定となるものと考えるべきでしょう。

 

雇用保険法等の一部を改正する法案も成立の見通しです

また、雇用保険法の改正も次のとおり見込まれています。

現在、60歳時に比べて賃金が75%未満に低下した被保険者には、本人の請求により、65歳を限度として、高年齢雇用継続給付金が支給されています。高年齢者雇用安定法が求める70歳までの高齢者雇用を後押しする観点から、令和7年度からこれらの給付は縮小されます。

一方、令和3年4月から65歳から70歳までの高年齢就業者確保措置の導入に対する支援を雇用安定事業に位置付けることが検討されています。具体的には、措置を講じた事業主への助成金支給となることが見込まれています。

こうした一連の動きに合わせ、令和2年4月1日から高年齢者への雇用保険料の免除が廃止されます。給与計算の際、注意が必要です。

 

 

Q.台風に伴う計画運休に備えるため36協定対象外の従業員に超過勤務をさせました

大型台風の襲来が見込まれる中、交通事業者が始発から一定の時間、計画運休を実施すると発表しました。その日は、顧客対応で外せない業務を予定しています。そこで、定時に出勤困難な従業員等は会社に前泊させることとし、総務担当に指示して貸布団や食事の手配など翌日の備えをさせました。ところで、総務担当はこれまで超過勤務の実績もなかったことから、36協定の対象外です。その日は結果として超過勤務になってしまいましたが、法令違反にあたりますか?また、必要な対応等があれば、ご教示ください。

 

A.労働基準監督署長が災害等による臨時の必要があると認めたときは法令違反になりません

従業員を、法定労働時間を超えるか又は法定休日に労働させる場合、使用者は、あらかじめ労働基準法(以下「同法」と言います。)第36条に基づく労使協定(以下「36協定」と言います。)を締結し、労働基準監督署長(以下「監督署長」と言います。)に届け出る必要があり、怠った場合、同法違反として処罰の対象となります。

一方、同法第33条(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)は、災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合、使用者は行政庁の許可を得て、必要な限度において法定労働時間を延長し、又は法定休日に労働させることができる旨を定めています。つまり、36協定なしで時間外労働等をさせても違法にはあたらない、ということです。

 

事前届出が原則ですが、事後に遅滞なく届け出れば問題ありません。「平成28年労働基準監督年報」(厚生労働省)によれば、同年の申請件数は全国で159件、うち許可を得たのは113件でした。許可を得た場合、当該労働時間は36協定に基づく時間外労働又は休日労働にはカウントしません。ただし、割増賃金の支払はもとより必要です

具体的にどのような場合、「臨時の必要」があると認めるかは、労働基準局長の通達によって基準を定めています。その一部について、令和元年6月1日付で改正がありました。

(1)単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと

(2)地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認めること。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコールは含まれること

(3)事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めないこと。例えば、サーバへの攻撃によるシステムダウンへの対応は認めること

(4)上記(2)及び(3)の基準については、他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命又は公益の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能のなる場合には認めること

許可の対象は、災害その他避けることのできない事由に直接対応する場合に加えて、当該事由に対応するにあたり、必要不可欠に付随する業務を行う場合を含むとされています。具体的には、例えば、事業場の総務部門において、当該事由に対応する従業員に供するために食事や寝具の準備をする場合等です。

設問はそうしたケースに該当すると考えられますが、翌日の顧客対応の内容に従業員を前泊させるまでの必要性があったかは、監督署長の判断次第です。計画運休を知った時点で直ちに「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書」を提出し、許可を得ることが最も望ましい対応でした。仮に、許可を得られなかった場合は、36協定の対象の従業員に業務を行わせる必要があります。今回は次善の策として、遅滞なく事後の届出を行うことが必要です。その場合、仮に、不許可となっても、監督署長名の指導程度に止まり、直ちに罰則を適用される懸念はまずありません。

 

 

 

 

 

いじめ・嫌がらせに関する労働相談は依然増えています

「いじめ・嫌がらせ」の労働相談が年々増加し、平成24年度以降は相談件数の首位を占めているとともに、その内容も一層深刻化しています。

そうした中で成立したいわゆる「女性活躍・ハラスメント規制法」は、職場のハラスメント対策強化に向けた事業主の取組を義務付けること等を目的とし、労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など5本の法律を一括して改正するものです。法案は30頁以上に及び、厚生労働省のホームページ等にも未だそのポイント等は示されていません。そのため、以下については、報道等を参考として、窺える内容を取りまとめました。

 

パワハラの定義やその防止に努める責務が事業主にはあること等を初めて法制化しました

セクシャルハラスメント(以下「セクハラ」と言います。)については、過去の男女雇用機会均等法改正において、事業主の配慮義務や防止措置の義務付が順次定められてきました。また、妊娠や出産に関連したマタニティハラスメント(以下「マタハラ」と言います。)についても、同様に過去の男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の改正に当たって、事業主の防止措置が義務付けられています。

しかし、パワーハラスメント(以下「パワハラ」と言います。)については、これまで法令上の定義や事業主等の責務は明らかにされていませんでした。今回、労働施策総合推進法の改正において、次の条文を新たに盛り込み、パワハラを「優越的言動問題」と捉えてその定義を示すとともに、防止に向けた事業主等の責務を定めました。

労働施策総合推進法 

(雇用管理上の措置等)第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

下線を付した部分が、優越的言動問題(以下、単に「パワハラ」と言います。)の定義にあたります。また、「言動」とありますが、身体的接触はもとより、身ぶり・表情等を幅広く含むと考えられます。事業主が講ずべき措置の具体的内容や該当事例等は、今後厚労相の諮問機関である労働政策審議会において議論の上、指針を示すとしています。また、パワハラへの関心・理解を深めるための広報・啓発活動、研修等の実施を国や事業者に義務付け、労働者に対しても自らパワハラを行わないよう注意するとともに、事業主が行う措置等に協力することを求めました。今回の改正は一定の抑止力は期待されるものの、罰則は定めていないことから、実効性の確保が課題となります。施行は、大企業は20204月、中小企業は同時期に努力義務として施行後、2年以内に本施行の見通しです。

その他の主なポイントを整理すると、次のとおりです。

(1)セクハラ、マタハラ、パワハラ対策の強化として、国・事業主・労働者に対し、他の労働者の言動へ注意を払う責務を規定。また、被害を相談した労働者の解雇など不利益取扱を禁止

(2)自社の労働者が取引先など社外でセクハラをした場合、事業主に被害者側事業主が行う事実確認等に協力する努力義務

(3)顧客等によるカスタマーハラスメント、就活生へのセクハラ等への対策等の指針化を今後検討

(4)女性活躍として、これまで従業員301以上の大企業に限っていた女性社員の登用や昇進等に関する数値目標の策定義務を、従業員101~300人の中小企業に拡大

 

36協定の特別条項についても限度時間等が設けられました

140時間、18時間の法定労働時間、及び毎週少なくとも1日又は44日の法定休日を超えた労働を、労働基準法(以下「同法」と言います。)違反に当たることなく行わせるために、使用者は同法第36条第1項に定める36協定の手続を行う必要があり、このことは改正前と変わりません。

 

一方、それまで厚労相告示に止まり、強制力のなかった時間外労働の限度時間が、今回の改正により同法第36条第4項において、原則1箇月45時間、1360時間と定められました。202041日から、中小企業においても改正後の規定が適用されます。

 

さて、年間の所定労働日数を365日から土日及び祝日を除いた244日、月の平均所定労働日数を20日とした場合、仮に毎日1.5時間の時間外労働をすると、月の時間外労働は1.5時間×20日=30時間となり、限度時間の45時間内に収まります。ところが、それを1年間で見ると1.5時間×244日=366時間となり、限度時間の360時間を超えてしまいます。つまり、時間外労働の管理は、月と年間の二つの観点から行う必要があります。

ところで、予見困難な業務量の大幅増など、企業活動上どうしても限度時間を超えて労働させることが必要なときがあります。これまでも36協定の特別条項として、例月の限度時間を超えて延長できる時間を定めることができました。そもそも例月の限度時間が法定されていなかったので、特別条項にも限度はありませんでした。今回の改正により、新たに同法第36条第5項において、特別条項の限度時間等が定められています。

条文を適宜要約して記載すると、次のとおりです。

同法第36条(時間外及び休日の労働)第5項 使用者は、事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1箇月及び休日並びに1年について同条第4項の労働時間を延長して労働させる時間を定めることができる。この場合において、その延長できる月数を定めなければならない。なお、1箇月については休日と合わせて100時間未満。1年は月の合計が720時間以下(休日は含まない)。月数は6箇月以下とする。

 

ここで注意すべきは、休日労働の取扱です。すなわち、同法36条第4項に定める1箇月45時間、1年間360時間の限度時間は、いずれも休日労働を含みません。したがって、限度時間を超えて労働させても、それが休日労働であれば法違反には当たりません。

 

それに対して、同法36条第5項に定める特別条項は、条文に下線を付したとおり、1箇月の限度時間100時間は休日労働の時間を含みますが、1年間の限度時間720時間は含みません。また、特別条項を適用し、休日を含めて1箇月45時間超、100時間未満の労働をさせることができるのは、年間6箇月以下です。

例えば、月の時間外労働が41時間、休日労働60時間であれば、同法36条第4項違反には当たりません。しかし、仮に特別条項を定めていても、その限度である「休日労働と合わせて100時間」を超えるので、同法36条第5項違反です。

 

特別条項の1箇月の限度時間100時間については、もう一つ注意が必要です。その月で100時間を超えないのみならず、前後26箇月の平均で80時間を超えてはいけません。したがって、仮に先月100時間時間外労働したとすれば、今月60時間を超えると2箇月平均80時間超となり法違反です。また、今月50時間時間外労働したとすれば、来月に法違反とならないためには、100時間+50時間+X/380時間から、X90時間未満とする必要があります。

 

 

 

有給5日にカウントできる日、できない日を確認しましょう

本年4月1日以降の基準日、つまり年次有給休暇(以下「有休」と言います。)の付与日から、年10日以上の有休を付与する従業員を対象として年5日の有休を取得させることが使用者に義務付けられました。今回の改正にあたって、厚生労働省等は「年次有給休暇の時季指定義務」「わかりやすい解説」等、様々な解説資料を示していますが、公表時期により若干の異同があります。そこで今回は、本年3月公表版の「改正労働基準法に関するQ&A(厚生労働省労働基準局)」において、有休5日にカウントできる日として新たに付け加えられた「リフレッシュ休暇」を取り上げます。また、カウントできない特別休暇との違いも併せて確認します。

さて、有休5日取得としてカウントできる日は次のとおりです。

(1)労働者自ら時季指定した日

(2)半日単位で取得した日(0.5日としてカウント)

(3)労使協定に基づき計画的に付与された日

(4)前年度の繰越し分を取得した日

(5)使用者が法定を上回る年次有給休暇を付与している日

(6)法定の年次有給休暇に加えて、取得理由や取得時季が自由で年次有給休暇と同じ賃金が支給される「リフレッシュ休暇」で、利用期間が1年とされている日(※今回追加)

それに対して、カウントできない日は次のとおりです。

(7)労使協定に基づき取得した時間単位の年次有給休暇

(8)法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇

リフレッシュ休暇と特別休暇の違いとは?

リフレッシュ休暇も特別休暇も、法令による義務付けのない、使用者の任意によって労働者に与えることができる休暇です。それではこの二つの違いは何か、解説資料の文言等からは下表のように考えられます。

 

特別休暇

リフレッシュ休暇

5日取得のカウント

できない

できる

利用目的

使用者の規定あり

自由

取得時季

使用者の規定あり

自由

つまり、その利用目的や取得時季が使用者の定める就業規則等により制約されている場合、有休5日取得として取り扱えません。例えば、就業規則において有給の病気休暇を定めている事例があります。その場合、利用目的は病気の療養に制約されることから、5日取得にはカウントできません。

それに対して、労働者が利用目的や取得時季を自らの意思で自由に決定できる「リフレッシュ休暇」は、法定の有休とその趣旨が同一であることから、カウントできます。

なお、就業規則等に定めている休暇の名称は、別に「リフレッシュ休暇」でなくとも構いません。あくまでも利用目的や取得時季について、使用者による制約がないことがポイントです。

 

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