テーマ別・社会労務情報の記事

特定求職者雇用開発助成金(安定雇用実現コース)について

いわゆる就職氷河期に正規雇用の機会を逃したこと等により、十分なキャリア形成がなされず正規雇用に就くことが困難な方を、ハローワーク等の紹介により、正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対する助成です。

対象となる労働者は、次の(1)~(4)全てに当てはまる方です。

(1)雇入れ時点の年齢が満35歳以上60歳未満

(2)正規雇用労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下であり、雇入れ日の前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない

(3)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介の時点で失業状態にある

(4)正規雇用労働者として雇用されることを希望している

留意点は、本助成金の対象労働者であることをあらかじめ把握せずに雇い入れた場合、助成金の対象とならないことです。

助成額はとおりです。

大企業   支給総額 50万円(第1期25万円+第2期25万円)

中小企業  支給総額 60万円(第1期30万円+第2期30万円)

尚、支給対象期間は大企業及び中小企業とも1年間です。また、雇い入れ日から起算した最初の6カ月間を第1期、以降の6カ月間を第2期と言います。

 

治療と仕事の両立支援助成金(制度活用コース)について

がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎など反復・継続して治療が必要となる疾病を負った労働者に対し、治療と仕事の両立の支援に資する「一定の就業上の措置」を講じた事業主に対し助成されます。

「一定の措置」としては、①時間単位の年次有給休暇付与 ②傷病休暇制度等(有給、無給問わない) ③フレックスタイム制度、時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度等 が挙げられます。1企業当たり、期間の定めのない労働者及び有期契約労働者それぞれにつき200,000円を1回限り助成されます。

また、手続の流れは次のとおりです。

ア 労働者に適用させる両立支援制度等の概要の作成

イ 両立支援制度活用計画の認定申請を労働者健康安全機構へ提出

ウ 両立支援制度活用計画認定通知の受取

エ 両立支援制度の実施:治療と仕事の両立支援助成金(制度活用コース)支給を労働者健康安全機構へ申請

オ 助成金支給決定通知の受取・助成金受領

留意すべきこととして、当該労働者は、制度活用計画期間において6カ月以上雇用が維持されていること、及び制度活用計画期間において月平均5日以上勤務していることが必要です。

また、支援計画の作成は、両立支援両立支援コーディネイタ(コーディネイータ要請研修を受講終了した者)が行う必要があります。

定額残業代に相当する残業時間の明示は、必須の要件ではなくなりました(最高裁第一小法廷判決 平成30年7月19日

定額残業代に相当する残業時間等を明示することは、これまで定額残業代制度(以下「同制度」と言います。)が成立する要件とされ、私自身も、給与明細に定額残業代の単価及び時間数を明記するようお願いしてきました。しかし、本判決により、必須の要件ではないことが示されました。このことは、司法による同制度の過度の規制に歯止めがかかったと捉えることができ、同制度活用への追い風となりそうです。

《本件の概要》

(1)被上告人は薬剤師として、上告人が運営する薬局で、平成25年1月21日から平成26年3月31日まで勤務していた。

(2)雇用契約書に記載の賃金は、基本給46万1,500円、業務手当10万1,000円であった。また、採用条件確認通知書には、「月額給与461,500円」、「業務手当101,000円みなし時間外手当」、「時間外勤務手当の取扱年収に見込み残業代を含む」、「時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」との記載があった。一方、上告人の賃金規定には、「業務手当は、一賃金支払期において時間外労働があったものとして、時間手当の代わりとして支給する」との記載があった。

(3)被上告人は、休憩時間に30分間業務に従事していたが、その時間管理はされていなかった。

(4)上告人が被上告人に交付した毎月の給与支給明細書には、時間外労働時間や時給単価を記載する欄があったが、これらの欄はほほ全ての月において空欄であった。

(5)被上告人は、業務手当が何時間分の時間外手当に当たるのか分らないこと、及び休憩時間中の労働時間を管理し調査する仕組みがないため、時間外労働の合計時間を確認することができないこと等から、業務手当を上回る時間外労働が発生しているか否か判別できないとして、業務手当を残業代の支払とみなすことはできないと主張し、残業代等の支払を請求した。

(6)控訴審における判決は、被上告人の主張を認め、定額残業代制度は無効であったとして、支払請求を一部容認した。

《判決の要旨》

(1)雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否は、労働契約に係る契約書等の記載内容の他、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況等の事情を考慮して判断すべきで、相当する労働時間を示すことは必須の要件と言えない。

(2)本件では、雇用契約書及び採用条件確認書並びに賃金規程において、月々支払われる所定賃金のうち業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨記載されていた。したがって、賃金体系においては、業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものと位置付けられていたと言える。

(3)被上告人に支払われた業務手当は、約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当することが算出でき、被上告人の実際の時間外労働等の状況と大きく乖離していない。

(4)したがって、業務手当の支払が残業代の支払に当たらないとする控訴審の判断は、割増賃金に関する解釈適用を誤った違法がある。

《本判決と実務》

被上告人の労働時間管理は、タイムカードに出勤時刻と退勤時刻のみを打刻しており、それらの時刻から所定労働時間を差し引くことによって、残業時間を算出することができました。また、契約書等に定額残業代に相当する業務手当は何時間分かの記載はなかったものの、その計算は容易であり、定額残業代を超える労働の有無についても明確に判断できるものでした。本判決により、定額残業代に相当する時間数の明示は必須要件ではなくなりましたが、正しい計算を行なっていることの論証は、今後とも不可欠です。


有給休暇の賃金

Q.有給休暇の賃金が一日の賃金より低額でしたが、違法ではありませんか?

私は、派遣社員として働いています。母も、別の会社で派遣社員として働くようになり、先日初めて有給休暇を取得しました。母の有給休暇の賃金について明細が添付されていましたが、一日労働した場合の賃金より低い金額で計算されていました。なんでも、過去3か月の給与の平均ということす。私の場合は、有給休暇を取得しても、一日分の賃金が満額支給されます。母の会社の取扱に疑問を感じています

 

A. 有給休暇の賃金を平均賃金で支払うことは違法ではありません。

有給休暇についてのトラブルは今日でも後を絶ちません。その多くは、事業主の有給休暇に関する知識不足によるものです。よくある間違いは、パートやアルバイトには有給休暇は発生しない。また、従業員からの有給休暇取得の申出を断ることが出来る。といった内容です。

労働基準法第39条は有給休暇の規定ですが、

「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」と定めています。

尚、労働日数の短い労働者(パートやアルバイト等)については、別途、それぞれ労働日数に応じた日数が定められています。例えば、週に一日勤務する労働者では、上記規定を満たした場合は、1日労働日の有給休暇を与えなければなりません。有給休暇の日数は労働時間とは関係ありません。あくまでも労働日数を基準に定められています。

また、労働者が有給休暇を請求した場合、使用者はその請求を断ることはできません。ただし、そのことで事業が回らなくなる等、やむを得ない事情があるときは別の日に変更してもらうことは可能です。

さて、有給休暇の日の賃金ですが、同法で

「有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金もしくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金(中略)を支払わなければならない。」と定められています。

結論を申し上げると、娘さんの派遣会社は有給休暇の時間を所定労働時間労働した場合支払われる通常の賃金を支払う定めをしており

お母さんの派遣会社は平均賃金を支払う定めをしているということです。つまり、お母さんの派遣会社の取扱に違法性はありません。

因みに時給1000円で労働時間が一日8時間、月22日勤務する方を例に計算すると (有給休暇を12月取得と仮定)

・所定労働時間労働した場合の通常賃金は8000

・平均賃金は、5,802円 (8000円×22日)÷(30+31+30日)

となり、平均賃金の方が低額になります。

 


 



 


Q.解雇予告期間中、業務災害が生じた場合、解雇日を変更する必要はありますか?

製造業を営んでいます。先日、ある従業員が、不注意から機械の操作を誤り、大量の不良品を発生させてしまいました。当社の就業規則には懲戒解雇の規定がないので、1221日に解雇予告を行い、翌年121日付で解雇することとしました。ところが、118日、この従業員が機械に接触して受傷する業務災害が発生しました。療養に1か月以上を要し、出勤可能となるのは早くても31日との診断です。このような場合、既に解雇予告を行った後であっても、解雇日を変更する必要はありますか?また、変更する必要があれば、具体的にはどうするべきでしょうか?

 

A.解雇予告後であっても、業務災害により休業する期間及びその後30日間は「解雇制限期間」となります

懲戒解雇であれば、処分が告知された時点で即時に効力を発揮し、猶予期間等を設ける必要もありません。しかし、設問のように、懲戒解雇について就業規則等で定めていなければ、処分は行えないとされます。これは、懲戒が企業組織内の秩序保持義務違反に対する制裁罰であることにかんがみ、刑法における罪刑法定主義の考え方を準用するものと捉えることができます。

 

さて、通常の解雇であれば、労働基準法(以下「同法」と言います。)第20条に定めるとおり、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。予告期間は、民法の一般原則に則り、予告日の翌日より起算して暦日30日を満了するまでで、その翌日が解雇の効力発生日にあたります。要するに、予告日から解雇日までの間に中30日を設ける必要があり、暦日ですから、休日や休業日を除く必要はありません。

一方、同法第19条は「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(中略)は、解雇してはならない。」と定めているので、この設問は、同法第20条と第19条が競合した場合の考え方を問うものと言えます。

 

結論から言うと、その場合は第19条が優先され、既に解雇予告を行った後で、その予告期間が満了に近づいていたとしても、それらは一切考慮されないこととなります。

 

設問の場合であれば、業務災害が発生した118日からその療養のために休業した期間、及び出勤するか又は出勤可能な状態となった日から起算して暦日30日を満了するまでの期間は、解雇制限期間として解雇を行うことはできません。なお、「療養」とは治癒(症状固定)であり、同法及び労働災害保険法上の療養・休業補償の対象と同じです。治癒後の通院等があっても、その分を延長する必要はありません。

 

それでは、仮に、業務災害にあった労働者が、 期間の定めのある労働契約を締結している者であって、療養期間中に契約期間が満了した場合はどうでしょう?

その場合、期間満了による労働契約の終了(雇止め)は解雇にあたらないため、解雇制限期間は適用されません。したがって、仮に療養期間中であっても、満了に伴い自然に契約終了することとなります。

 


 



 

 

Q.メンタル不調を理由とする退職の申出がありました。後日にトラブル等にならないため留意すべき点はありますか?

先日、ある従業員から突然退職届が提出されました。理由を尋ねると、抑うつ症状が続いており精神科を受診中との説明です。上司に確認したところ、勤務成績は良好で、上司や同僚との折り合い等の点でも思い当たる節はないとのことです。念のため過去1年の超過勤務実績を調べると、最も多い月でも15時間未満で、長時間労働の実態は見受けられません。近年、従業員のメンタル不調について、会社側の責任が厳しく問われる事例をよく耳にします。後日にトラブル等にならないためには、どのような点に留意すべきでしょう?例えば、当社は病気休職制度を就業規則で定めています。慰留し、いったん休職措置を採った上で、その後に退職手続とした方がいいでしょうか?


 

A.先ずは使用者の安全配慮義務違反がなかったか確認することが大切です

労働者が業務を遂行する過程において、使用者は労働者の生命及び身体等を危険から保護する安全配慮義務があります。具体的には労働安全衛生法など関係法令の遵守や、メンタル面に関しては長時間労働、業務上のストレス、パワハラなど職場内のストレス等によって、健康が損なわれることがないよう努めなければなりません。

そこで設問を見ると、勤務成績の低下など思い当たる節はなかったし、長時間労働の実態もありませんでした。仮に、上司が従業員のメンタル不調又は長時間労働等に気づいていながら、何らの対応もしなかったとすれば、不調の原因はさておいても、対応上の不備を問われる懸念があります。しかし、設問の記述限りでは、そうした恐れは少ないものと考えられます。

一方、メンタル不調を理由とする退職の場合、後日、意思表示の瑕疵を理由に、取消又は無効を主張される可能性があります。例えば、メンタル不調のために判断能力が著しく減退した状態で、使用者側の詐欺又は強迫により退職届を提出させられたとして取消(民法第96条)を主張されるケースです。また、メンタル不調で就労できないと直ちに解雇されるとの錯誤により退職届を提出したとして無効(民法第95条)を主張されること等も考えられます。

これらのトラブル防止のため、従業員が退職の意思を示したときは、丁寧にコミュニケーションを取りその内容を記録した上で、退職願又は退職届を文書で提出させることが重要です。その観点から改めて設問を見ると、既に退職届が提出されているので、従業員及び上司への聞き取り結果等を記録しておけばいいでしょう。また、病気休職制度を就業規則に定めて周知しているので、前述の錯誤の主張にも対抗できると考えられます。そもそも退職の意思が示されたとき、使用者側に慰留する義務はありません。意思を確認できれば、敢えて慰留や休職制度の教示又は適用等は不要です。

 

「退職願」、「退職届」、「辞表」どう違う?

多くの会社は就業規則等で退職に関する事項を定めています。たとえば、「退職する場合は...少なくとも○日前に、退職願を×を経由して△宛提出すること」等です。退職は労働契約の解除であり、解除を願い出る意思表示が退職願です。口頭でも足りるとされますが、退職申出の事実やその意思が固いこと等を使用者と従業員との双方で確認する趣旨から文書提出を求めています。また、提出によって直ちに退職となるわけではなく、権限者の承認後に退職となるので、承認前であれば撤回が認められることもあります。

これに対して退職届は退職の意思表示を確定して提出するもので、受理された時点で退職となり、撤回は認められません。

一方、辞表は社長や取締役など雇用関係のない立場の人が、その役職を辞めることを届け出る書類です。


 

 



 

Q.従業員との間で定めるべき内容は?また、契約書を交わす必要は?そして、交わす場合どのようなものでしょうか?

この度起業し、私が代表取締役、従業員1名の会社を設立しました。給料は月額を伝えて合意しましたが、その他は特に定めていません。今後、どのようなことを定める必要がありますか?また、その際に何かしらの契約書は必要でしょうか?

 

A.従業員との間で定める内容は労働基準法で定められており、使用者は書面で交付する義務があります 

労働基準法(以下「同法」と言います。)は、労働者の保護を目的として制定された法律で、その目的を履行させるため、使用者が行うべきこと等を具体的に定めています。ほとんどの条文は、「使用者は、...をしなければならない」という定めぶりです。

「最初が肝心」ということわざもあるように、最初に間違うと後の修正は大変です。特に労務管理の場合、悪気はなかったけれども、賃金不払にあたる等、ことが重大になるケースも少なくありません。また、再三お伝えしたとおり、「不利益変更の禁止」原則が適用されるので、最初に使用者側にとって不利な労働条件を交わしていると、その変更は困難です。したがって、従業員を雇い入れるに当たっては、同法の主旨を十分理解し、知らない間に違法を犯したり、又は使用者側に著しく不利な労働条件となったりしないよう、十分留意いただきたいと思います。

 

同法第15条(労働条件の明示)は、次のように定めています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

このように、使用者は従業員に対し、雇入れの際、次の労働条件を盛り込んだ書面を交付しなければなりません。厚生労働省「労働条件通知書」のモデルを活用すれば簡単に作成できます。

(1)賃金に関すること

(2)労働時間に関すること

(3)労働契約の期間

(4)有期労働契約を更新する場合の基準

(5)就業の場所及び従事すべき業務

(6)所定労働時間を超える労働の有無

(7)始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇

(8)賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給

(9)退職に関すること

 

一方、労働条件通知書に似たものとして、雇用契約書があります。前者は使用者が従業員に交付するものですが、後者は契約書というとおり、記載の契約内容に双方が合意し、記名押印して初めて有効となります。ただし、雇用契約それ自体は口頭又は暗黙の合意でも成立し、契約書を作成する義務はありません。とは言え、想定外のトラブルに備えて、合意した内容を書面にし、双方で保管することには大いに意味があります。記載内容に特段の定めはありませんから、トラブルになりそうな部分のみ記載しても構いません。

ということで、設問への回答は次のとおりとなります。

○ 厚生労働省「労働条件通知書」モデル等を活用して所定の労働条件を記載し、従業員に交付します。

○ 雇用契約書の作成及び交付の義務はありません。

○ ただし、作成したい場合は、労働条件通知書兼雇用契約書として作成し、双方が押印して保管すれば、労働条件通知書の交付と雇用契約書の作成・保管との一挙両得です。




Q.賃金の定め方に守るべきルールはあるのでしょうか?

これまで雇用されていましたが、独立して建設業を立ち上げる予定です。先ずは知人を従業員として雇い入れることにしました。給料はおおむね月額20万円と考えていますが、それだけ決めればいいのか、また、このような定め方でいいのかよく分りません。そもそも賃金の定め方に守るべきルールはあるのでしょうか?


A.賃金の内訳を明確にする必要があります。

設問の事業主は、起業の際に知人を従業員として雇い入れるということで、ハローワーク等へ求人申込はしていません。そして、給料の総額は決めたものの、その他の事項に関する話合いはできていない状況と考えられます。

そこで、ハローワーク等に求人申込をするとき、又はホームページ等で労働者の募集を行なうとき、最低限明示する必要があるのは以下の各項目であり、言い換えるとこれらが労働条件にあたります。

(1)業務内容 (2)契約期間 (3)試用期間 (4)就業場所 (5)就業時間、休憩時間、休日、時間外労働 (6)賃金 (7)加入保険

このうち最も難しいのは、やはり(6)賃金 でしょう。設問の事業主は、賃金を「おおむね月額20万円」とした上で、そうした定めぶりで果たして大丈夫なのか、懸念を感じている状況です。

ところで、賃金の計算方法は、大まかに3つに分類できます。

賃金の計算期間

①月 給

一箇月につき月○○円

②日 給

一日につき○○円

③時 給

一時間につき○○円

最初に決定すべきは、賃金の計算方法を月給、日給又は時給のいずれにするかです。「おおむね月額20万円」と言うのですから、月給を前提として、決定する際の注意点は次のとおりです。

(1)給料額は最低賃金を満たしているか?

そのためには、1日の所定労働時間を決めなければなりません。労働基準法の定める1日の所定労働時間は最高8時間ですから、それをベースにした1と月あたりの労働時間は、次のとおりです。

40時間×(31日÷7日)=177.1時間

そうすると、時間あたり賃金は、

20万円÷177.1時間≒1,129円

となるので、最低賃金を満たしていることが確認できました。

(2)残業した場合の賃金はどうするか?

「おおむね月額20万円」の中には、残業した場合の割増賃金分を含むのか、又はそうではないのかを定めておく必要があります。割増賃金分を含まないのであれば、別途計算してその分を支払えばいいのですが、含むのであれば注意が必要です。

「おおむね月額20万円」の内訳を定め、それを明示しなければなりません。具体的に例示すると、次のような定め方が考えられます。

「...賃金は月額20万円とする。その内訳は、基本給○円及び残業代△円。ただし残業代△円は□時間分相当とし、それを超える残業があった場合は、その差額を支給する。)

事業主の意図としては、賃金の中に残業代を含めていたものの、そのことを明示していなかった、又は従業員に周知していなかった等を理由として、事業主側が敗訴した判例は後を絶ちません。こうしたことから、賃金の決定にあたっては、最低賃金をクリアしていることの確認と併せて、残業代についてもしっかりと考えた上で決定し、そのことを従業員にも十分理解させておくことが大切です。




Q.週休3日制の従業員を休日に出勤させると割増賃金の対象になりますか?

大手物流企業が週休3日制を導入するとのニュースを聞きました。当社も人手不足対策の一環として、正社員を対象に週休3日制を検討しています。ところで、3日間の休日のうち1日を出勤させた場合、その日は休日労働として割増賃金を支払わなければならないのでしょうか?


 

A.就業規則で法定休日を定めている場合を除き、割増賃金を支払わなければならない休日労働にはあたりません。

労働基準法(以下「同法」と言います。)第37条において、時間外、休日及び深夜に労働させた場合、使用者は割増賃金を支払わなければならない旨を定めています。その主旨は、使用者に通常以上の賃金を支払わせることで、長時間労働等を抑止することにあります。時間外は、原則として18時間、1週間40時間(特例対象事業場44時間)と定められている法定労働時間を超えた時間です。また、休日は、法定休日ですが、法定休日とは具体的には日曜日のことでしょうか?さらに、設問のケースのように、週に3日休日を設けた場合、法定休日についてはどう考えるべきでしょうか?

 

同法の第35条第1項を見ると、「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。」とあります。つまり、同法が義務付けているのは、先ず少なくとも週1回であることが分かります。仮に、月・火・水曜日を休日とする週休3日制で働いている労働者を、火曜日・水曜日の2日間出勤させたとしても、月曜日に休日を与えているので、週1回の休日は確保しています。その場合、結果的に月曜日が法定休日となり、火曜日・水曜日の出勤は法定休日の出勤にあたらないので、割増賃金は不要です。

 

それでは、日曜日から土曜日まで1週間、1日も休みなく出勤させた場合はどうでしょう?週1回の休日を確保していないので、違法行為にあたるのでしょうか?

 

そこで、同法の第35条をあらためて見ると、第2項において「第1項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については、適用しない。」と定めています。つまり、1週間続けて出勤させたとしても、後日に休日を与えることによって、結果的に44日以上の休日を確保すれば、違法にはあたりません。

 

繰り返して言うと、同法が義務付けている法定休日は、使用者が労働者に与えなければならない、少なくとも週1回か又は44日以上の休日です。それが何曜日でも、また、その都度異なる曜日でも問題ありません。

一方、就業規則において、仮に、「○曜日を法定休日とする」旨を定めた場合、事情は全く異なってきます。週休3日制で働いている労働者でも、法定休日とした曜日に出勤させれば、会社の規定に基づいて休日労働させたこととなり、割増賃金を支払わなければなりません。厚生労働省は、通達において「同法第35条は必ずしも休日を特定すべきことを要求していないが(中略)一定の日を休日と定める方法を規定するよう指導されたい。」としています。このため、法定休日を就業規則で特定している事業場は少なくないと思われます。ただし、通達はあくまでも行政指導で、法的強制力はありません。

 

労務管理における事業主の裁量確保や経費節減など、実務上の観点から、法定休日の特定は慎重に判断すべきでしょう。


 


Q. 休日に労働させると、一と月の労働時間が36協定の限度時間を超えてしまいます。どんな対応がありますか?

弊社は金属製造業を営んでいます。労働時間は週40時間、18時間です。また、就業規則で休日は土曜日・日曜日と定めています。繁忙時は残業もあるので、従業員との間で36協定を締結し、残業の限度時間は1か月45時間、休日労働は1か月に1日までとしています。

この度、急な注文が入り、休日労働の必要が生じました。ところが、今月は既に限度時間(45時間)いっぱいの残業を行なっていて、休日に労働をさせると限度時間を超えてしまいます。何か対策はありませんか?


 

A.1か月の限度時間に休日の労働時間は含まれません

労働時間は、労働基準法第32条(労働時間)において、1週間につき40時間、一日につき8時間(休憩時間を除く)と定められています。その目的は、労働者を過酷な労働から保護することに他なりません。一方、企業には自由な経済活動が認められ、使用者と労働者の合意があった場合、法定労働時間(週40時間、1日8時間)を超え、又は休日労働が認められています。ただし、単に労使の合意だけではなく、合意の内容を書面にし(36協定書)、なおかつ、当該協定書を所轄労働基準監督署長へ提出する必要があります。

 

協定書の内容は、時間外又は休日の労働をさせる具体的事由、業務の種類、労働者の数、1日及び1日を超える一定の期間について延長できる時間、又は労働させることができる休日です。また、延長できる労働時間は、厚生労働省令「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」において次のとおり定められています。ただし、36協定書に特別条項を設ければ、基準を超える労働が可能になります。

 

期間

延長することができる限度時間

1週間

15時間

2週間

27時間

4週間

43時間

1箇月

45時間

2箇月

81時間

3箇月

120時間

1年

360時間

  さて、設問の事業場は、既に36協定の限度である45時間の時間外労働をしました。これ以上は36協定違反となり、認められません。一方、休日労働を1か月に1日まで可能と定めており、この月は休日労働をしていないので、休日一日は労働が可能です。

要約すると、36協定に定める残業の限度時間には、休日労働の時間は含まれません。また、休日労働の「休日」とは法定休日であり、就業規則等において法定休日を定めていない場合は、週に1日または44日の休日が法定休日とされます。言い換えると、就業規則等により週休2日制が定められていても、法定休日はそのうち1日で、それ以外の日に労働させても、休日労働にあたりません。


 

これまでお知らせした労働関係法令の改正を含む働き方改革の議論の中では、休日労働の制限は特に俎上に上がりませんでした。こうしたことから、労使合意により法定休日全てを労働させることも法令上は可能で、制度の大きな抜け穴であるとの指摘もありました。

こうした指摘にどう応えるかも含めて、今後の法令改正の具体的内容を注視する必要があると考える次第です。

※特例対象事業場は44時間


 

Q.有給休暇消化中に別の会社と雇用契約した社員に懲戒処分は可能ですか?

当社を退職することが決まっており、現在、有給休暇消化中の従業員に関してハローワークから問合わせがありました。それによると、従業員は、既に再就職し転職先で雇用保険の取得手続中で、当社の喪失記録が必要なので手続をお願いするとのことです。

当社としては、そうした事情を全く聴いていなかったので、有給休暇を消化し終わった日を雇用保険の喪失日とする予定でした。

この場合、再就職先の取得日に合わせて変更しなければならないのでしょうか?また、有給休暇消化中といえども、在職中であることは間違いありません。当社の就業規則に照らすと、兼業禁止の懲戒事由に該当しますが、懲戒処分を科することはできますか?

 

A.退職日は本人及び再就職先と話し合いましょう。また、懲罰は難しいと考えます 

年次有給休暇は、1年間(初年度は6か月間)継続勤務し、所定労働日の8割以上の勤務をした労働者に、法で定める日数を与えます。付与要件を満たした労働者は、法律上当然に所定日数の年次有給休暇の権利を取得します。労働者が年次有給休暇を使用したいときは、使用者にその請求をおこなうことで足り、使用者はそれを拒否することはできません。ただし、使用者は、労働者が請求した時季が事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に変更することができます(使用者の時季変更権)。

 

ところで、退職予定者が、退職日までに残りの有給休暇を全て請求した場合、使用者は時季変更権を実質上行使できません。変更する日が退職日までに確保できないからです。したがって、退職予定者は、残りの有給休暇を全て消化して退職することが可能です。

 

それでは、その間、別の会社と雇用契約を結ぶことはできるでしょうか?結論から言えば、イエスということになります。多くの会社は、就業規則等において兼業兼職を禁止しています。しかし、兼業兼職は、法律違反にはあたりません。判例においても、兼業兼職については、労働者に有利な判断が下されることが多いのが実態です。

 

さて、設問のケースを見ると、有給休暇消化中に他の企業と雇用契約を結んだ行為は、会社の兼業禁止規定に反することは明らかです。したがって、就業規則に則り懲戒処分を科すことが考えられます。ところが、この従業員は、退職の日まで有給休暇を取得しているのですから、今後、勤務することはありません。仮に、再就職先が競合他社等で、この従業員が競争上重大な影響を及ぼす立場にあるなど、兼業することによって会社に損害を与える可能性や、その具体的な内容が立証できる場合はいざしらず、特に損害もないとすれば、懲戒処分を科すことは難しいと考えます。

 

ただし、退職日についての話合いは可能です。会社の兼業禁止規定を根拠に、兼業した日の前日をもって会社を退職することで本人の同意を得てはいかがでしょうか?その上で、仮に本人が同意しなければ、事実上兼業を認めることもやむを得ません。

 

次に、兼業している社員の雇用保険上の取扱です。厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領」によれば、同時に2以上の雇用関係にある労働者については、当該2以上の雇用関係のうち一つの雇用関係(原則としてその者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係)についてのみ、被保険者となるとしています。つまり、賃金の高い方の会社の被保険者となります。

 

従業員及び転職先にはこうした旨を説明し、賃金を確認した上で、必要な手続を行います。場合によっては、転職先の雇用保険取得日を変更してもらうこともあり得ます。

 

兼業による雇用保険上のトラブルは少なくありません。両者が感情的になってしまい、取得日や喪失日を変更しないということです。「雇用保険に関する業務取扱要領」に準じて処理を行うことで、解決を図るべきと考える次第です。



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