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Q.雇用調整助成金以外に従業員の雇用を守る制度は?

新型コロナウイルス感染症の影響が続き受注が回復しません。これまで雇用調整助成金を受給し従業員の雇用を維持してきましたが、特例措置は5月末で終了すると聞きました。受注が回復すれば業務量の急増も期待できるので、なんとか現在の雇用を守りたいと考えています。雇用調整助成金の他に活用できる制度はありませんか?

A1.コロナ禍の下における雇用維持を助成する産業雇用安定助成金制度が創設されました

雇用調整助成金制度は、景気の変動や産業構造の変化、その他経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業等の一時的な雇用調整を実施して従業員の雇用を維持した場合に適用されます。広く認知されたのは近年ですが、実はその歴史は古く、1974年の雇用保険法制定と同時に設けられています。

令和3年5月31日までの特例措置により、休業手当は日額15,000円を上限として国が100%助成しますが、その後は縮小の予定です。

そうした中で、令和3年4月1日、産業雇用安定助成金制度が創設されました。新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合、出向元事業所及び出向先事業所の双方の事業主に対して、出向に要した賃金や経費の一部を助成します。

A2.産業雇用安定助成金制度の概要をご紹介します

受給要件は次のとおりです。

(1)出向元事業所が、事前に出向計画届を労働局に提出していること

(2)出向元事業所及び出向先事業所が、ともに雇用保険に加入していること

(3)出向元事業主と出向先事業主との間で、(出向)契約が締結されていること

(4)出向元事業所又は出向先事業所が、出向労働者の賃金の全部又は一部を負担していること

(5)出向労働者に出向前に支払っていた賃金とおおむね同じ額の賃金を支払うこと(注)

(6)出向元事業所の売上高又は生産量などが、計画書を提出した前年同期と比べて5%以上減少していること

(7)出向について労使協定を締結しており、出向労働者の同意があること

(8)雇用調整を目的としての出向であり、労働者毎の出向期間は1カ月以上2年以内。その後は出向元事業所に復帰すること

(注)具体的には、85%から115%の範囲の額を支払うことが要件です。

これらの要件を満たすと、中小企業の場合、一日12,000円を上限として賃金、教育訓練費など出向運営経費の90%、ただし出向元事業所が解雇等を行っている場合は80%が支給されます。

とはいえ、これまで従業員を出向させたことがあるか又は他社からの出向者を受け入れたことがある事業主は、決して多くないと思われます。そこで現在、(公財)産業雇用安定センターが、無料のマッチングサービスを行っています。従業員の雇用を維持したいが、出向等の経験がないという事業主の皆様には、こうした制度も併せて活用してみてはいかがでしょうか。

 

Q.親の介護が必要となった従業員がいます。勤務を継続するための公的支援制度等はないでしょうか?

親の介護が必要となった従業員から、介護に専念するため退職したいとの申出がありました。当社に不可欠な人材であり、従業員の高齢化が進む中、今後同様の事態が生じることも懸念されます。また、介護を終えた後を考えれば、退職してしまうことが得策とは思えません。何とか思いとどまるよう説得したいのですが、介護をしつつ勤務を継続するための公的な支援制度等があれば、ご教示ください。

A1.先ずは介護休業・休暇制度を活用しましょう

総務省統計によれば、2020年現在、わが国の65歳以上人口は3,617万人、総人口に占める割合は28.7%です。4人に1人以上が高齢者という超高齢社会に突入しています。そうした中で大きな問題となっているのが、親の介護です。介護が必要となる世代は主として75歳以上、介護にあたる世代は40歳代後半から50歳代が中心です。会社において重要な役割を担っているケースが少なくありませんが、毎年10万人近い方々が介護離職を余儀なくされています。

政府は、これまでも介護離職ゼロを目指す施策の一つとして、育児・介護休業法の改正を重ねてきました。現行の同法に基づいて、労働者は、介護が必要な人ひとりにつき通算93日間の介護休業及び5日間の介護休暇を取得できます。また、介護休業は一度に取得することも、3回まで分割して取得することもできます。本年4月1日からは、従来1日を単位としていた介護休暇を1時間単位で取得できるようになりました。一方、使用者は、介護休業・休暇取得の申出を受けた場合、引き続き1年以上雇用されていない等を除き、原則として拒むことはできません。

なお、介護休業・休暇は、現に常時介護を要する状況にあることが要件です。介護保険制度に基づく介護認定を受けていなくとも取得できることに注意が必要です。

A2.従業員も事業主も雇用保険制度を活用しましょう

ノーワーク・ノーペイの原則により、使用者に介護休業中の賃金を支払う義務はありません。休業中の賃金を補填するため、労働者は雇用保険制度の介護休業給付金を利用することができます。

ハローワークに申請すると、休業した日について休業開始時の賃金の67%相当額が支給されます。事務手続は従業員本人が行うこともできますが、資格確認や申請には、賃金台帳など会社が作成・保管している書類が必要です。このため、会社の総務・人事担当等が本人に代わって行うことが一般的です。

一方、事業主は、雇用保険制度の両立支援等助成金「介護離職防止支援コース」を利用できます。介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主や、介護のための柔軟な就業形態の制度を導入し、かつ、実際に利用者があった中小企業事業主に対して助成金が支給されます。

例えば介護休業の場合、介護のために従業員を5日以上休業させたとき、介護休業の取得時に28万5千円、復職時に同じく28万5千円が支給されます。事前に介護休業プランを作成し、従業員と面談を実施するなど、休業取得や復職を円滑にするための準備を行っていることが要件です。

また、介護のための柔軟な就労形態、具体的には所定外労働を制限する制度、時差出勤制度、深夜業を制限する制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度、法を上回る介護休暇制度、フレックスタイム制度、介護サービス費用補助制度等のうちいずれかを導入し、合計20日以上利用があると、同じく28万5千円が支給されます。

介護離職は、従業員本人はもとより事業主にも大きなリスクです。様々な制度を活用し、介護と勤務の両立を図ることが大切です。

Q.同一労働同一賃金制を踏まえてパート従業員を採用する際の注意点は何ですか?

パート従業員の採用を検討中です。弊社のような中小企業にも、今後は同一労働同一賃金の原則が適用されると聞きました。具体的にどのような点に注意が必要ですか?

A1.通常の労働者との待遇差を設ける場合はその理由等を明確に説明できなければいけません

令和2年4月に施行された改正「労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、単に「同法」と言います。)は、令和3年4月1日から中小企業にも適用されます。同法の主なポイントは次のとおりです。

(1)同一企業内において、通常の労働者とパート・有期労働者(以下、単に「パート等」と言います。)との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な差別を設けることを禁止

(2)待遇差がある場合、パート等は事業主に対し待遇差の内容や理由等の説明を求めることができ、事業主は説明義務を負う。なお、比較対象とする「通常の労働者」は、事業主が選定する。

待遇差を設けることそれ自体を禁ずるものではありませんが、不合理な差別はいけません。しかし、何が不合理にあたるかの判断はなかなか難しく、これまで多くの訴訟がありました。昨年10月には、相次いで5本の最高裁判決(大阪医科薬科大事件、メトロコマース事件等)が示され、今後はこれらを参考に検討することとなります。

A2.具体的な決定方法はこのように考えればいいでしょう

(1)先ずは、比較対象とする「通常の労働者」の選定です。業務内容、責任の程度、職務内容・配置変更の範囲等がパート等と同じか又は最も近いと考えられる社員を選定します。

(2)次に、手当や制度等の検討です。選定した社員に支給している各種手当、適用している各種制度等を洗い出すとともに、それぞれの支給理由、制度等の意図や趣旨等を確認します。

(3)(2)を踏まえて、パート等へどの手当を支給するか・しないか、どの制度等を適用するか・しないかを決定します。

一般的な手当の例として、通勤手当、住居手当、扶養手当等が挙げられます。このうち通勤手当は、それが通勤費用補填又は実費弁済の趣旨であれば待遇差は不合理、との判断が判例等で定着しています。また、住居手当や扶養手当の場合、それらが、持ち家か賃借か、扶養は何人か等、従業員の実際の経費負担の状況を問わずに一律に支給されていれば、職務内容等とは関係のない単なる福利厚生又は生活保障の趣旨と考えられ待遇差は不合理、との判例が主流です。

次に、制度等の適用についてです。例えば、私傷病による休職制度の適用に待遇差を設けることについて、最高裁判決は「正社員が長期にわたって継続して勤務することが期待されることから、私傷病の療養に専念させることを通じて、その継続的な雇用を確保すること」は不合理にあたらない、と述べました。そうすると、継続勤務を期待しないフルタイムの有期契約労働者との待遇差は不合理にあたらないが、無期契約労働者であればそれが極めて短時間のパート勤務であっても休職制度を適用しないと不合理とされるのかと言えば、必ずしもそうはならないと考えられます。要は、手当・制度の意図や趣旨、支給又は適用の実態等によって、待遇差は不合理にも合理的にもなり得る、ということです。したがって、何のための手当や制度なのか、今一度確認することが大切となります。

最後に、賃金です。賞与・退職金を含む賃金について、最高裁判決は労使自治や経営裁量を尊重する姿勢です。特に、有為な人材の獲得・定着を図る目的で、長期雇用を前提とする正社員にのみ賞与や退職金を支給することは不合理にあたらないと述べています。

 

Q.従業員から副業の申出がありました。就業規則に則り拒否してもよいですか?

卸売業を営んでいます。従業員は20名。所定労働時間は一日7時間。休日は土曜・日曜。週の所定労働時間は35時間と定めています。さて、当社は就業規則において、従業員の副業・兼業を禁止しています。ところが、ある従業員から会社の休日にコンビニで働きたいとの申出がありました。子どもの学費の足しに、少しでも多く収入を得たいという理由です。就業規則どおりに拒否したいのですが、法的に問題はありますか?

 

A.就業規則を根拠として一律に拒否することは困難で、事案ごとに検討・対応する必要があります

厚生労働省・労働政策審議会安全衛生分科会の「副業・兼業に関する事業所調査結果(令和2年7月31日)」によれば、正社員の副業・兼業について、「医療・福祉」を除き、「認めていない」と回答した事業所の割合は「認めている」とした事業所を上回ったのに対して、非正規社員については、「複合サービス業」を除き、「認めている」事業所が「認めていない」事業所を上回りました。実際に副業・兼業を行っている労働者は、正社員・非正規社員全体で9.7%、希望する労働者は年々増加傾向とされています。

一方、判例等を見ると、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に自由であることから、会社が就業規則に則り 副業・兼業を認めないときは不法行為が成立するとして、損害賠償を命じた事例があります(東京都私立大学教授懲戒解雇事件(平成19年東京地裁)、マンナ運輸事件(平成24年京都地裁)。

また、厚生労働省のモデル就業規則は、労働者の副業・兼業を認める規定を定めています。

こうした中、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン(平成30年1月策定)」が令和2年9月に改訂されました。

〇 副業・兼業における労働者のメリット

・離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。

・本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。

・所得が増加する。

・本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

〇 企業のメリット

・労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得できる。

・労働者の自律性・自主性を促すことができる。

・優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。

・労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。

ディメリットについての記述は、ガイドライン上ありませんでした。私見では、メリットは労働者に大きく、企業にいささか小さいとも感じます。皆さんはいかがでしょうか?

なお、同ガイドラインは、例外的に副業・兼業の禁止又は制限が認められる場合として、次の4つを示しています。

①労務提供上の支障がある場合 ②業務上の秘密が漏洩する場合 ③競業により自社の利益が害される場合 ④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

司法面・行政面において、労働者の副業・兼業を原則肯定する方向にある中、就業規則の副業・兼業禁止規定を根拠に一律に拒否することは、もはや困難です。従業員が希望する副業・兼業の内容等を具体的に確認した上で、上記①~④のいずれにも該当しないのであれば、認めざるを得ないと考える次第です。

 

Q.65歳の方の雇入れを検討しています。労務管理上注意すべきことはありますか?

託児所を経営する者です。先日、従業員を募集したところ、初めて65歳を超えた方から応募がありました。定年後にこれまでの経験を活かしつつ、新しい環境でチャレンジしたいとのことです。人柄も良いと見受けられ、採用を前向きに検討しています。高年齢者を雇い入れる際、労務管理上何か注意すべきこと等はありますか?

 

A.雇用保険、健康保険、厚生年金それぞれに留意すべきことがあります

超高齢社会を迎えるわが国においては、高年齢者の労働力を確保することが不可欠です。昨年秋に日本経済新聞社が実施した世論調査によれば、60歳代の54%が70歳以上まで働きたいと回答しています。政府も70歳までの雇用に向けて様々な取組みを始めており、近い将来、65歳以上の高年齢労働者が働く企業が当たり前となるかもしれません。そこで、65歳を超えた高年齢者を雇い入れる際の労働・社会法令関係においての注意点をご案内します。

(1)雇用保険について

65歳以上の方が、次の①、②の要件を満たした場合、雇用保険に加入します。

① 週の所定労働時間が20時間以上

② 31日以上継続して雇用が見込まれる

現在、労働保険料の保険料の徴収等に関する法律第11条の2に基づいて、年度初め(4月1日時点)に64歳以上の方は雇用保険料が事業主及び被保険者とも免除されています。令和2年4月1日以降、この規定は廃止され、全ての被保険者に保険料が発生します。

(2)健康保険の介護保険料について

介護保険料は40歳以上の方が納付しますが、40歳以上64歳までの方は、健康保険の第2号被保険者として、給与から天引きされます。それに対して、65歳以上の方の介護保険料は、年金から差し引いて徴収されます。こうしたことから、給与計算の際に誤って天引きしないよう、注意する必要があります。

(3)配偶者の年金について

健康保険の加入者(第2号被保険者)の配偶者は、本人が60歳未満、かつ、年収130万円未満など、一定の要件を満たす場合、国民年金の第3号被保険者となり、第3号被保険者は保険料負担がありません。ところで、第2号被保険者には年齢制限があり、65歳以上の方はなれません。それまで自らは第2号被保険者、配偶者が第3号被保険者であった方が65歳を迎えたとき、配偶者が未だ60歳未満の場合、配偶者自身が国民年金の第1号被保険者となる手続が必要です。しばしば見落とされているので、注意しましょう。

(4)活用できる助成金について

次の①、②の要件を満たした場合、厚生労働省の特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)を活用することができます。

① ハローワーク又は民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること。

② 65歳以上の高年齢被保険者として雇い入れ、1年以上雇用することが確実であると認められること。

支給額は下記のとおりで( )は中小事業主以外に対するものです。

《特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)》

支給対象者        支給額     助成対象期間

短時間労働者外の者   70万円(60万円)  1年

短時間労働者      50万円(40万円)  1年

「令和元年台風第1519号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A(厚生労働省)」から抜粋してお知らせします。

台風の影響に伴う休業に関する取扱いについて

Q1 今回の台風に伴う風水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たりますか?

A1 労働基準法第26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業のとき、使用者は休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないと定めています。ただし、天災事変など不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらないので、支払義務はありません。そこで設問のケースですが、休業の原因は事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることのできない事故に該当すると考えられます。したがって、原則として、使用者の責に帰すべき事由による休業には当たりません

Q2 今回の台風による事業場の施設・設備は直接的な被害を免れましたが、取引先や鉄道・道路等の被災により、原材料の仕入や製品の納入等が不可能となり、労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たりますか?

A2 事業場の施設・設備が直接的な被害を免れた場合は、原則として、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たると考えられます。ただし、当該休業について、①その原因が事業の外部より発生した事故であること ②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること の二つの要件を満たす場合、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たらないこともあり得ます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案して判断する必要があると考えられます。

 

労働基準法第36条(時間外・休日労働協定)について

 台風に伴い十分な企業活動ができなかったため、その後業務量が増加し、36協定で定めた延長時間を超えそうです。どのように対応すればいいでしょうか?

A 36協定を締結し届け出ている以上、それに定める範囲を超えて時間外労働をさせることはできません。範囲を超えた時間外労働を可能とするためには、改めて36協定を締結し直し、届け出る必要があります。

 

労働基準法第39条(年次有給休暇)について

Q 今回の台風によって会社の事業が滞り、当面の業務量が大幅に減少しているとして、年次有給休暇を取得するよう求められています。どうすればいいでしょうか?

A 年次有給休暇は、労働者が請求する時季に、使用者はこれを与えなければならないと定められています。使用者は、労働者に対して、年次有給休暇の取得を命じることはできません。

 

その他(賃金)について

Q 今回の台風の被害に伴って労働者が出勤できなかった場合、出勤しなかった日の賃金を支払う必要はありますか?

 労働契約や労働協約、就業規則等に労働者が出勤できなかった場合の賃金の支払について定めがある場合は、それに従う必要があります。一方、このような定めがない場合、ノーワークノーペイの原則から、支払は不要とも考えられます。ただし、労使で十分に話し合うなどして、労働者の不利益をできる限り回避するよう努力することが大切です

特定求職者雇用開発助成金(安定雇用実現コース)について

いわゆる就職氷河期に正規雇用の機会を逃したこと等により、十分なキャリア形成がなされず正規雇用に就くことが困難な方を、ハローワーク等の紹介により、正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対する助成です。

対象となる労働者は、次の(1)~(4)全てに当てはまる方です。

(1)雇入れ時点の年齢が満35歳以上60歳未満

(2)正規雇用労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下であり、雇入れ日の前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない

(3)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介の時点で失業状態にある

(4)正規雇用労働者として雇用されることを希望している

留意点は、本助成金の対象労働者であることをあらかじめ把握せずに雇い入れた場合、助成金の対象とならないことです。

助成額はとおりです。

大企業   支給総額 50万円(第1期25万円+第2期25万円)

中小企業  支給総額 60万円(第1期30万円+第2期30万円)

尚、支給対象期間は大企業及び中小企業とも1年間です。また、雇い入れ日から起算した最初の6カ月間を第1期、以降の6カ月間を第2期と言います。

 

治療と仕事の両立支援助成金(制度活用コース)について

がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎など反復・継続して治療が必要となる疾病を負った労働者に対し、治療と仕事の両立の支援に資する「一定の就業上の措置」を講じた事業主に対し助成されます。

「一定の措置」としては、①時間単位の年次有給休暇付与 ②傷病休暇制度等(有給、無給問わない) ③フレックスタイム制度、時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度等 が挙げられます。1企業当たり、期間の定めのない労働者及び有期契約労働者それぞれにつき200,000円を1回限り助成されます。

また、手続の流れは次のとおりです。

ア 労働者に適用させる両立支援制度等の概要の作成

イ 両立支援制度活用計画の認定申請を労働者健康安全機構へ提出

ウ 両立支援制度活用計画認定通知の受取

エ 両立支援制度の実施:治療と仕事の両立支援助成金(制度活用コース)支給を労働者健康安全機構へ申請

オ 助成金支給決定通知の受取・助成金受領

留意すべきこととして、当該労働者は、制度活用計画期間において6カ月以上雇用が維持されていること、及び制度活用計画期間において月平均5日以上勤務していることが必要です。

また、支援計画の作成は、両立支援両立支援コーディネイタ(コーディネイータ要請研修を受講終了した者)が行う必要があります。

定額残業代に相当する残業時間の明示は、必須の要件ではなくなりました(最高裁第一小法廷判決 平成30年7月19日

定額残業代に相当する残業時間等を明示することは、これまで定額残業代制度(以下「同制度」と言います。)が成立する要件とされ、私自身も、給与明細に定額残業代の単価及び時間数を明記するようお願いしてきました。しかし、本判決により、必須の要件ではないことが示されました。このことは、司法による同制度の過度の規制に歯止めがかかったと捉えることができ、同制度活用への追い風となりそうです。

《本件の概要》

(1)被上告人は薬剤師として、上告人が運営する薬局で、平成25年1月21日から平成26年3月31日まで勤務していた。

(2)雇用契約書に記載の賃金は、基本給46万1,500円、業務手当10万1,000円であった。また、採用条件確認通知書には、「月額給与461,500円」、「業務手当101,000円みなし時間外手当」、「時間外勤務手当の取扱年収に見込み残業代を含む」、「時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」との記載があった。一方、上告人の賃金規定には、「業務手当は、一賃金支払期において時間外労働があったものとして、時間手当の代わりとして支給する」との記載があった。

(3)被上告人は、休憩時間に30分間業務に従事していたが、その時間管理はされていなかった。

(4)上告人が被上告人に交付した毎月の給与支給明細書には、時間外労働時間や時給単価を記載する欄があったが、これらの欄はほほ全ての月において空欄であった。

(5)被上告人は、業務手当が何時間分の時間外手当に当たるのか分らないこと、及び休憩時間中の労働時間を管理し調査する仕組みがないため、時間外労働の合計時間を確認することができないこと等から、業務手当を上回る時間外労働が発生しているか否か判別できないとして、業務手当を残業代の支払とみなすことはできないと主張し、残業代等の支払を請求した。

(6)控訴審における判決は、被上告人の主張を認め、定額残業代制度は無効であったとして、支払請求を一部容認した。

《判決の要旨》

(1)雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否は、労働契約に係る契約書等の記載内容の他、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況等の事情を考慮して判断すべきで、相当する労働時間を示すことは必須の要件と言えない。

(2)本件では、雇用契約書及び採用条件確認書並びに賃金規程において、月々支払われる所定賃金のうち業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨記載されていた。したがって、賃金体系においては、業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものと位置付けられていたと言える。

(3)被上告人に支払われた業務手当は、約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当することが算出でき、被上告人の実際の時間外労働等の状況と大きく乖離していない。

(4)したがって、業務手当の支払が残業代の支払に当たらないとする控訴審の判断は、割増賃金に関する解釈適用を誤った違法がある。

《本判決と実務》

被上告人の労働時間管理は、タイムカードに出勤時刻と退勤時刻のみを打刻しており、それらの時刻から所定労働時間を差し引くことによって、残業時間を算出することができました。また、契約書等に定額残業代に相当する業務手当は何時間分かの記載はなかったものの、その計算は容易であり、定額残業代を超える労働の有無についても明確に判断できるものでした。本判決により、定額残業代に相当する時間数の明示は必須要件ではなくなりましたが、正しい計算を行なっていることの論証は、今後とも不可欠です。


有給休暇の賃金

Q.有給休暇の賃金が一日の賃金より低額でしたが、違法ではありませんか?

私は、派遣社員として働いています。母も、別の会社で派遣社員として働くようになり、先日初めて有給休暇を取得しました。母の有給休暇の賃金について明細が添付されていましたが、一日労働した場合の賃金より低い金額で計算されていました。なんでも、過去3か月の給与の平均ということす。私の場合は、有給休暇を取得しても、一日分の賃金が満額支給されます。母の会社の取扱に疑問を感じています

 

A. 有給休暇の賃金を平均賃金で支払うことは違法ではありません。

有給休暇についてのトラブルは今日でも後を絶ちません。その多くは、事業主の有給休暇に関する知識不足によるものです。よくある間違いは、パートやアルバイトには有給休暇は発生しない。また、従業員からの有給休暇取得の申出を断ることが出来る。といった内容です。

労働基準法第39条は有給休暇の規定ですが、

「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」と定めています。

尚、労働日数の短い労働者(パートやアルバイト等)については、別途、それぞれ労働日数に応じた日数が定められています。例えば、週に一日勤務する労働者では、上記規定を満たした場合は、1日労働日の有給休暇を与えなければなりません。有給休暇の日数は労働時間とは関係ありません。あくまでも労働日数を基準に定められています。

また、労働者が有給休暇を請求した場合、使用者はその請求を断ることはできません。ただし、そのことで事業が回らなくなる等、やむを得ない事情があるときは別の日に変更してもらうことは可能です。

さて、有給休暇の日の賃金ですが、同法で

「有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金もしくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金(中略)を支払わなければならない。」と定められています。

結論を申し上げると、娘さんの派遣会社は有給休暇の時間を所定労働時間労働した場合支払われる通常の賃金を支払う定めをしており

お母さんの派遣会社は平均賃金を支払う定めをしているということです。つまり、お母さんの派遣会社の取扱に違法性はありません。

因みに時給1000円で労働時間が一日8時間、月22日勤務する方を例に計算すると (有給休暇を12月取得と仮定)

・所定労働時間労働した場合の通常賃金は8000

・平均賃金は、5,802円 (8000円×22日)÷(30+31+30日)

となり、平均賃金の方が低額になります。

 


 



 


Q.解雇予告期間中、業務災害が生じた場合、解雇日を変更する必要はありますか?

製造業を営んでいます。先日、ある従業員が、不注意から機械の操作を誤り、大量の不良品を発生させてしまいました。当社の就業規則には懲戒解雇の規定がないので、1221日に解雇予告を行い、翌年121日付で解雇することとしました。ところが、118日、この従業員が機械に接触して受傷する業務災害が発生しました。療養に1か月以上を要し、出勤可能となるのは早くても31日との診断です。このような場合、既に解雇予告を行った後であっても、解雇日を変更する必要はありますか?また、変更する必要があれば、具体的にはどうするべきでしょうか?

 

A.解雇予告後であっても、業務災害により休業する期間及びその後30日間は「解雇制限期間」となります

懲戒解雇であれば、処分が告知された時点で即時に効力を発揮し、猶予期間等を設ける必要もありません。しかし、設問のように、懲戒解雇について就業規則等で定めていなければ、処分は行えないとされます。これは、懲戒が企業組織内の秩序保持義務違反に対する制裁罰であることにかんがみ、刑法における罪刑法定主義の考え方を準用するものと捉えることができます。

 

さて、通常の解雇であれば、労働基準法(以下「同法」と言います。)第20条に定めるとおり、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。予告期間は、民法の一般原則に則り、予告日の翌日より起算して暦日30日を満了するまでで、その翌日が解雇の効力発生日にあたります。要するに、予告日から解雇日までの間に中30日を設ける必要があり、暦日ですから、休日や休業日を除く必要はありません。

一方、同法第19条は「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(中略)は、解雇してはならない。」と定めているので、この設問は、同法第20条と第19条が競合した場合の考え方を問うものと言えます。

 

結論から言うと、その場合は第19条が優先され、既に解雇予告を行った後で、その予告期間が満了に近づいていたとしても、それらは一切考慮されないこととなります。

 

設問の場合であれば、業務災害が発生した118日からその療養のために休業した期間、及び出勤するか又は出勤可能な状態となった日から起算して暦日30日を満了するまでの期間は、解雇制限期間として解雇を行うことはできません。なお、「療養」とは治癒(症状固定)であり、同法及び労働災害保険法上の療養・休業補償の対象と同じです。治癒後の通院等があっても、その分を延長する必要はありません。

 

それでは、仮に、業務災害にあった労働者が、 期間の定めのある労働契約を締結している者であって、療養期間中に契約期間が満了した場合はどうでしょう?

その場合、期間満了による労働契約の終了(雇止め)は解雇にあたらないため、解雇制限期間は適用されません。したがって、仮に療養期間中であっても、満了に伴い自然に契約終了することとなります。

 


 



 

 

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