雇用保険法の改正

副業・兼業を促す観点から雇用保険の加入要件が緩和されました

近年、わが国の重要な政策課題の一つとして、副業・兼業の促進があります。複数の事業場で働く副業・兼業者が雇用保険の被保険者となれるよう、今回の改正により加入要件が一部緩和されました。

ご承知のとおり、雇用保険の被保険者が離職して、労働の意思及び能力があるにも関わらず就業できない状態にあるとき、雇用保険法の定めるところにより、新たな就業先が見つかるまでの一定期間、失業等給付を受けることができます。被保険者となるには、季節的労働者を除いて、次の二つが要件です。

(1)週の所定労働時間が20時間以上あること

(2)31日以上継続して雇用される見込みがあること

なお、公務員や昼間の学部の学生・生徒等は、上記の要件に該当しても被保険者にはなれません。

また、複数の事業場で働く者の各種保険の被保険者取得手続等は、それぞれ以下のとおりです。

雇用保険の場合、どちらか一つの事業場、具体的にはより報酬の高い事業場で雇用保険の被保険者となります。

次に労災保険の場合、労働災害から労働者を守るという趣旨から、それぞれの事業場で被保険者となります。特に手続は要りません。

そして社会保険の場合、それぞれの事業場で被保険者となる要件を満たしたとき、それぞれの事業場で手続をして被保険者となります。また、労働者は任意に事業場を選択し、選択された事業場は「健康保険厚生年金保険被保険者所属選択二以上事業所勤務届」を、管轄する年金事務所等に提出します。保険料は、按分負担となります。

このように、雇用保険においては労災保険や社会保険と異なり、保険の二重加入を認めていませんでした。しかし、今回の改正により、令和4年4月1日以降、65歳以上の高年齢被保険者に限って、二重加入を認めることとなりました。その要件は次のとおりです。

① 二以上の事業場に雇用される65歳以上の者であること

② それぞれの事業場における週所定労働時間が20時間未満であること

③ 二以上の事業場における週所定労働時間の合計が20時間以上であること

④ 労働者本人からの申出があること

留意すべきは、④「本人からの申出」です。仮に、①~③に該当しても申出がなければ、事業主は加入手続をする義務はありません。

自営業等による収入があるときでも要件に該当すれば雇用保険の被保険者となります

これまで、事業主に雇用されつつ自営業を営む者、又は他の事業主の下で委任関係に基づいてその事務を処理する者(例えば、雇用関係にない法人の役員等が該当)は、自営業等の収入が雇用されている会社の給与より多い場合は、雇用保険の被保険者に該当しないとされていました。令和3年1月1日以降、自営業等の収入と雇用先からの給与といずれが多いかに関わらず、週の所定労働時間が20時間以上及び31日以上継続雇用の見込みがあれば、雇用保険被保険者取得届の提出が必要です。具体的な手続等は次のとおりです。

(1)令和3年1月1日以降に雇用した場合、雇用した時点から被保険者となります。

(2)令和2年12月31日以前から雇用し、令和3年1月1日以降も継続して雇用している場合、令和3年1月1日から被保険者となります。

なお、こうした立場で被保険者となっていた者が離職すると、離職後に自営業に専念するため求職活動を行わないとき、代表取締役に就任するとき、及び会社の役員として一定以上の収入があるとき等は、失業等給付が給付されない場合があります。