年次有給休暇基準日の統一的取扱の意義

Q.有給休暇の基準日を統一に定めている事業場における中途採用者の取扱いは?

当社は就業規則に定めるところにより、社員に対し毎年1月1日、年次有給休暇を一斉に付与してきました。

ところで、6月1日に本採用となる社員の有給休暇の付与の仕方に疑問があります。この社員には、本採用の6か月後にあたる12月1日に10日間の有給休暇を付与することとなります。こうした場合でも来年1月1日、新たな有給休暇を付与しなければなりませんか?

 

A. 最初の基準日から1ヶ月後であっても、新たな年次有給休暇を付与すべきです。

労働基準法第39条は、「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」と定めています。付与する年次有給休暇は、その後、継続勤務年数1年ごとに増えていきます。ただし、法令上の義務があるのは、6年以上勤務した場合の20労働日までです。

 

さて、年次有給休暇を付与する日を、基準日といいます。基準日は本来、雇入れの日により決定されます。したがって、従業員それぞれで異なることになります。最初の基準日となるのは、雇入れ(入社)の6ヶ月後、2回目は入社1年6箇月後、3回目は入社2年6箇月後という具合ですね。

新卒採用者のように一斉採用(雇入れが同日)の場合は基準日は全員同日です。ところが、中途採用者等、入社日が異なると異なる起算日が生じ、管理が複雑になります。

 

そこで、事務手続の簡素化のため就業規則等で基準日を統一している企業は少なくありません。設問の場合、就業規則に定める基準日は1月1日でした。

 

さて、6月1日入社の社員の最初の基準日は、勤務実績に問題がなければ6ヶ月後の12月1日です。労働基準法39条に基づき、10日間の年次有給休暇を付与しなければなりません。そして、法令上の次の基準日は翌年12月1日です。その日に11日間を新たに付与すれば、法令上の問題は生じません。

ところが、設問のケースにおいては、就業規則で会社の基準日を1月1日に統一していました。すると、初めて有給休暇を付与した日からわずか1か月後に基準日を迎えることになります。基準日を統一して取り扱う以上、不合理に感じるかも知れませんが、やむを得ません。

一方、仮に2回目の基準日を再来年の1月1日とすれば、入社後1年8か月が新たな年次有給休暇付与の日となります。法令上2回目の基準日にあたる入社後1年6箇月を過ぎ、違法行為となります。

 

このように、年次有給休暇の統一的取扱を就業規則等で定めた以上は、その運用にあたっても対象となる労働者が常に有利となるよう配慮する必要があります。

 

試用期間中を継続年数に算入するのを忘れていませんか?

ところで、実務上、しばしば生じがちな間違いとして、試用期間中の継続年数への算入漏れが挙げられます。

労働契約は、試用期間中も含めた雇入れの初日からその効果を発生します。したがって、継続期間には試用期間中の期間も算入しなければなりません。雇用保険や社会保険についても同様、試用期間中も年数には算入しなければなりません。

労働者に認められる諸権利の取得日は、原則として「雇入れの日」であることを改めて銘記していただきたいと思います。