外国人労働者を雇用する際の留意点

Q.外国人をアルバイトとして雇用したところ、後日、留学生で就労資格がなかったことが判明しました。賃金の支払いは必要ですか?

飲食業を営んでいます。先日、アルバイトとして、初めて外国人を雇い入れました。しばらくして在留カードを確認したところ、留学生で就労資格を保有していなかったことが判明しました。

違法状態で働いていたので、賃金を支払う必要がないと考えますが、いかがでしょうか?

A.不法就労者に対しても賃金の支払いは必要です

法務省の統計によると、平成27年末時点における在留外国人の数は約189万人で、前年末に比べ約11万人(5.2%)増加しました。国籍別では、中国(約66万人)が一番多く、次いで韓国(約45万人)、フィリピン(約22万人)、以下、ブラジル(約17万人)、ベトナム(約15万人)、ネパール・米国(約5万人)、台湾・ペルー・タイ(約4万人)となっています。

また、厚生労働省の「外国人雇用状況」によると、平成27年10月時点において日本国内で労働している外国人の数は約91万人で、前年に比べて約12万人(15.3%増加)増加しました。国籍別では、やはり中国の約32万人が最も多く、全体の35.5%を占めています。

さて、外国人が日本国に滞在する場合は、在留資格が必要です。在留資格は大きく次の3つに分けられます。

(1)就労関係

(2)留就学・文化活動・研修関係

(3)日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者関係

外国人が日本国内で就労するには、上記の(1)又は(3)の資格が必要です。(2)の資格での就労は原則として認められず、希望する場合は、別途、「資格外活動許可」を取得する必要があります。手続は、本人又は依頼者等が地方入国管理署に対して行います。

この資格なしで就労した場合、不法就労者本人だけでなく、事業主に対しても、入国管理法第73条の2第1項(不法就労助長罪)に基づき、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が適用されます。言い換えると、外国人を就労させる場合、事業主は在留資格の内容を確認する責務があります。

また、仮に「資格外活動許可」を取得した場合でも、留学生・就学生は、労働時間がそれぞれ次のとおり制限されています。

○ 留学生 … 週に28時間以内を限度、ただし教育機関の長期休業期間中は1日につき8時間以内

○ 就学生 … Ⅰ日につき4時間以内

なお、入国管理法上、留学生とは大学又は専門学校に学ぶ者、就学生とは高等学校又は民間の日本語学校で学ぶ者をそれぞれいいます。

さて、設問の事業主は、アルバイトとして外国人を雇用しました。その後、留学生であることが判明したことから、被雇用者本人の在留資格は上記の(2)。一方、別途必要な「資格外活動許可」を取得していなかったので、不法就労の状態にあったというわけです。

その場合、本人に手続上の怠りがあったことは言うまでもありません。しかし、前述のとおり、事業主は外国人を雇用するにあたり、在留資格の内容を確認することが義務付けられています。それを怠った以上、事業主にも責任が及びます。賃金支払の有無に関わらず労働させた事実は消えませんから、事業主の在留資格確認義務違反は免れません。

ただし、不法状態であろうと、賃金は既往の労働に対する対価として、当然に支払う必要があります。