労働条件・特に賃金の定め方

Q.賃金の定め方に守るべきルールはあるのでしょうか?

これまで雇用されていましたが、独立して建設業を立ち上げる予定です。先ずは知人を従業員として雇い入れることにしました。給料はおおむね月額20万円と考えていますが、それだけ決めればいいのか、また、このような定め方でいいのかよく分りません。そもそも賃金の定め方に守るべきルールはあるのでしょうか?

 

 

A.賃金の内訳を明確にする必要があります。

設問の事業主は、起業の際に知人を従業員として雇い入れるということで、ハローワーク等へ求人申込はしていません。そして、給料の総額は決めたものの、その他の事項に関する話合いはできていない状況と考えられます。

そこで、ハローワーク等に求人申込をするとき、又はホームページ等で労働者の募集を行なうとき、最低限明示する必要があるのは以下の各項目であり、言い換えるとこれらが労働条件にあたります。

(1)業務内容 (2)契約期間 (3)試用期間 (4)就業場所 (5)就業時間、休憩時間、休日、時間外労働 (6)賃金 (7)加入保険

このうち最も難しいのは、やはり(6)賃金 でしょう。設問の事業主は、賃金を「おおむね月額20万円」とした上で、そうした定めぶりで果たして大丈夫なのか、懸念を感じている状況です。

ところで、賃金の計算方法は、大まかに3つに分類できます。

賃金の計算期間
①月 給 一箇月につき月○○円
②日 給 一日につき○○円
③時 給 一時間につき○○円

最初に決定すべきは、賃金の計算方法を月給、日給又は時給のいずれにするかです。「おおむね月額20万円」と言うのですから、月給を前提として、決定する際の注意点は次のとおりです。

(1)給料額は最低賃金を満たしているか?

そのためには、1日の所定労働時間を決めなければなりません。労働基準法の定める1日の所定労働時間は最高8時間ですから、それをベースにした1と月あたりの労働時間は、次のとおりです。

40時間×(31日÷7日)=177.1時間

そうすると、時間あたり賃金は、

20万円÷177.1時間≒1,129円

となるので、最低賃金を満たしていることが確認できました。

(2)残業した場合の賃金はどうするか?

「おおむね月額20万円」の中には、残業した場合の割増賃金分を含むのか、又はそうではないのかを定めておく必要があります。割増賃金分を含まないのであれば、別途計算してその分を支払えばいいのですが、含むのであれば注意が必要です。

「おおむね月額20万円」の内訳を定め、それを明示しなければなりません。具体的に例示すると、次のような定め方が考えられます。

「…賃金は月額20万円とする。その内訳は、基本給○円及び残業代△円。ただし残業代△円は□時間分相当とし、それを超える残業があった場合は、その差額を支給する。)

事業主の意図としては、賃金の中に残業代を含めていたものの、そのことを明示していなかった、又は従業員に周知していなかった等を理由として、事業主側が敗訴した判例は後を絶ちません。こうしたことから、賃金の決定にあたっては、最低賃金をクリアしていることの確認と併せて、残業代についてもしっかりと考えた上で決定し、そのことを従業員にも十分理解させておくことが大切です。