女性活躍・ハラスメント規制法

いじめ・嫌がらせに関する労働相談は依然増えています

「いじめ・嫌がらせ」の労働相談が年々増加し、平成24年度以降は相談件数の首位を占めているとともに、その内容も一層深刻化しています。

そうした中で成立したいわゆる「女性活躍・ハラスメント規制法」は、職場のハラスメント対策強化に向けた事業主の取組を義務付けること等を目的とし、労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など5本の法律を一括して改正するものです。法案は30頁以上に及び、厚生労働省のホームページ等にも未だそのポイント等は示されていません。そのため、以下については、報道等を参考として、窺える内容を取りまとめました。

パワハラの定義やその防止に努める責務が事業主にはあること等を初めて法制化しました

セクシャルハラスメント(以下「セクハラ」と言います。)については、過去の男女雇用機会均等法改正において、事業主の配慮義務や防止措置の義務付が順次定められてきました。また、妊娠や出産に関連したマタニティハラスメント(以下「マタハラ」と言います。)についても、同様に過去の男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の改正に当たって、事業主の防止措置が義務付けられています。

しかし、パワーハラスメント(以下「パワハラ」と言います。)については、これまで法令上の定義や事業主等の責務は明らかにされていませんでした。今回、労働施策総合推進法の改正において、次の条文を新たに盛り込み、パワハラを「優越的言動問題」と捉えてその定義を示すとともに、防止に向けた事業主等の責務を定めました。

労働施策総合推進法

(雇用管理上の措置等)第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

下線を付した部分が、優越的言動問題(以下、単に「パワハラ」と言います。)の定義にあたります。また、「言動」とありますが、身体的接触はもとより、身ぶり・表情等を幅広く含むと考えられます。事業主が講ずべき措置の具体的内容や該当事例等は、今後厚労相の諮問機関である労働政策審議会において議論の上、指針を示すとしています。また、パワハラへの関心・理解を深めるための広報・啓発活動、研修等の実施を国や事業者に義務付け、労働者に対しても自らパワハラを行わないよう注意するとともに、事業主が行う措置等に協力することを求めました。今回の改正は一定の抑止力は期待されるものの、罰則は定めていないことから、実効性の確保が課題となります。施行は、大企業は20204月、中小企業は同時期に努力義務として施行後、2年以内に本施行の見通しです。

 

 

その他の主なポイントを整理すると、次のとおりです。

(1)セクハラ、マタハラ、パワハラ対策の強化として、国・事業主・労働者に対し、他の労働者の言動へ注意を払う責務を規定。また、被害を相談した労働者の解雇など不利益取扱を禁止

(2)自社の労働者が取引先など社外でセクハラをした場合、事業主に被害者側事業主が行う事実確認等に協力する努力義務

(3)顧客等によるカスタマーハラスメント、就活生へのセクハラ等への対策等の指針化を今後検討

(4)女性活躍として、これまで従業員301以上の大企業に限っていた女性社員の登用や昇進等に関する数値目標の策定義務を、従業員101~300人の中小企業に拡大