新型コロナウイルス感染症懸念に伴う妊娠従業員の休業等

新型コロナウイルス感染症のストレスを抱えた妊娠従業員への配慮義務が事業主に求められました

令和2年57日、男女雇用機会均等法(以下「均等法」と言います。)の指針(告示)改正により、妊娠中の女性労働者が母子保健法の保健指導又は健康診査に基づき、その作業等におけるコロナに感染する恐れに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師又は助産婦の指導を受け、それを事業主に申し出た場合、事業主は作業の制限や出勤の制限、具体的には在宅勤務又は休業等の必要な措置を講ずるべきことが義務付けられました。

この義務は、当面、本年57日から来年131日までの特例として適用することとされています。

具体的な手続等は次のとおりです

コロナの動向は依然として予断を許しません。そうした中で働く妊娠中の女性労働者が、職場の作業内容により、感染について不安やストレスを抱えることは容易に想像できます。そうした方々の母性健康管理を適切に図ることを目的として、今回の特例措置が設けられたと言えます。

従来から均等法においては、妊娠中又は出産後1年以内の女性労働者が保健指導・健康診査の際に主治医等から指導を受け、事業主に申し出た場合、事業主はその指導事項を守ることができるようにするために必要な措置を講ずる必要がありました。今回の措置は、具体的・定量的な健康上の懸念に加えて、心理的な要素であり個人差が大きく検証困難と考えられるストレスを対象にしたことが注目されました。

手続として、妊娠中の女性労働者は、主治医から指導を受けたとき、指導事項を的確に伝えるため、母子連絡カード(母性健健康管理指導事項連絡カード)を作成してもらい、それを事業主に提出します。これらの点は、従来からのコロナ以外の健康懸念のケースと何ら変わりません。提出を受けた事業主は、当該指導事項に沿って必要な措置を講じますが、具体的には次のようなことが考えられます。

(1)妊娠中の通勤緩和。具体的には時差出勤など混雑時を避けた通勤時間の設定など

(2)妊娠中の休憩に関する措置。具体的は労働基準法に定める休憩時間以上の休憩の付与など

(3)妊娠中、又は出産後の症状に関する措置。具体的には作業の制限や勤務時間の短縮、在宅勤務、休業など

また、 妊娠中の女性労働者がこれらの措置を求めたことや措置を受けたことを理由として不利益取扱いをすれば均等法違反にあたることは、これまでにもお知らせしたとおりです。

ただし、賃金等についてはノーワークノーペイの原則が優先すると考えられます。実際には、会社ごとの就業規則等における休業時の取扱いについての定めぶりに従って行えばいいでしょう。