労働者の募集及び採用時の年齢制限

Q.求人にあたって年齢制限を設けることができる場合があると聞きましたが、どのようなケースですか?

早期退職して、WEB制作会社を起業した者です。業績は順調で、従業員の増員を考えています。即戦力として期待できる、プログラミング経験のある30代の方が希望です。ところで、求人にあたっては、原則として年齢制限を設けることはできないが、例外もあると聞きました。どのようなケースであれば、認められますか?また、弊社の希望内容は、例外にできるケースに該当しますか?

A. 例外は6項目ですが、設問のケースは該当しないと考えられます

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下、「同法」と言います。)の改正によって、平成19年10月1日以降、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えることを義務付けられました。これに基づいて、求人の際に年齢制限を設けることは、原則として禁止されています。一例として、ハローワークの求人票に、応募要件として「○歳以上×歳以下」など年齢を記載すると、受理してもらえません。

ただし、応募者の年齢を考慮して不採用とすること自体は、違法ではありません。いったん応募を受け付ければ、書類選考等の段階で事業主が希望しない年齢層を排除しても、問題ありません。

一方、同法の施行規則第1条の3第1項の1から6の各号において、次のとおり例外が定められています。

(1)定年年齢を上限として、その条件年齢未満の労働者を期間の定めの無い労働契約の対象として募集・採用する場合

【例】定年が60歳の会社が、60歳未満の人を募集

(2)労働基準法その他の規定により年齢制限が設けている場合

【例】警備業法第14条の警備業務に18歳以上を募集

(3)長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

【例】基幹社員として育成する目的で、35歳未満を募集

(4)技能・ノウハウ継承の観点から、特定の職種で(当該企業の)労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

【例】電気通信技術者として、30~39歳を募集

(5)芸術・芸能の分野で表現の真実性等の要請がある場合

【例】演技子役として、12歳以下を募集

(6)60歳以上の高年齢者、いわゆる就職氷河期世代(昭和43年4月2日から昭和63年4月1日までに生まれた者)又は特定の年齢層の雇用を促進する施策の対象となる者に限定して募集・採用する場合

【例】60歳以上を募集

さて、設問の事業主は、即戦力となる職務経験を備えた30代の人を希望しています。その場合、上記の3号にあたるとして例外適用は認められるでしょうか?「厚労省:労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」によれば、3号を根拠とする年齢制限が認められる条件は、次のとおりです。

① 「若年者等」とは基本的には35歳未満の若年者を想定しているが、必ずしも35歳未満に限られるものではなく概ね45歳未満を目安とすること

② 対象者の職務経験について不問とすること

③ 新卒者以外の者について、新卒者と同様の処遇にすること

そうすると、キャリア形成を図る観点から30代の年齢制限を設けることはできますが、職務経験をも要件とすることはできません。また、「経験者優遇」、「経験があれば尚よい」等の条件を付することも、法の趣旨に照らし不適切とされています。したがって、設問の事業主は、年齢制限を設けたうえで応募者の履歴から経験者を選別するか、又は、プログラミングやWEB制作の経験者を募集して30代を選別することとなります。求人に年齢制限を設けないことは、事業主・応募者双方に不効率とも感じます。反面、広く応募者を募る結果、希望する年齢ではないものの優秀な人材が見つかるケースもあり得ることから、一定の意義があると考える次第です。