年金制度改正法の主な内容

国民年金法等が一部改正されました

令和2年5月「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立しました。わが国は、今後少子高齢化に伴い現役世代の人口が急速に減少し人出不足が進行する一方、健康寿命は延び、高齢者や女性の就業が進むことによって、一層多くの人がこれまで以上に長期にわたり多様な形で働くことが期待されます。

こうした社会経済の変化を年金に反映し、ますます長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的として、国民年金法等が一部改正されました。短時間労働者に対する社会保険適用拡大、在職中の年金受給のあり方見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、並びに確定拠出年金の加入可能要件の見直し等が主な内容です。

短時間労働者の社会保険適用拡大が令和4年10月施行されます

51人以上の従業員(短時間労働者を含まない)を雇用する企業に対して、次の要件を全て満たす短時間労働者についても厚生年金及び健康保険の被保険者資格の取得を義務付けました。

(1)労働時間が週20時間以上

(2)賃金が月額8万8千円以上

(3)勤務期間が2か月超

在職老齢年金の停止基額見直しが令和4年4月施行されます

年金の受給資格を有する従業員は、年金・報酬及び賞与の合計額が停止基準額以上になると、年金の一部或いは全部が停止されます。これを在職老齢年金制度と言います。停止基準額は、60歳から65歳までの方で一と月28万円、65歳以上は一と月47万円で、停止基準額を超えた1/2の年金が停止されます。今回の改正では60歳から65歳までの停止基準額が47万円となり、現に停止になっていた方の一部について、停止額の減少が見込まれます。

年金受給開始時期の75歳まで拡大が令和4年4月施行されます

令和4年4月1日時点70歳未満の方は、年金の受給開始時期を60歳から75歳までの間で選択できます。改めて言うと、年金の受給開始時期は、厚生年金の場合、生年月日に応じて60歳から65歳までの間。それに対して国民年金の場合、全て65歳です。ちなみに令和4年現在、男性63歳(昭和34年1月2日~昭和35年1月1日生まれ)、女性62歳(昭和35年1月2日~昭和36年1月1日生まれ)が、厚生年金の受給開始可能な年齢です。ところで、60歳に達した後は、本来の受給開始時期を待たずに受給を請求(繰上げ請求)できます。ただし、支払毎の年金額は減額され、その状況は一生涯続きます。その減額率が一と月当たり0.5%から0.4%に改正されました。令和4年4月1日の時点で60歳未満の方が対象です。一方、65歳から受給開始の国民年金及び厚生年金は、受取り時期を66歳以降にすることができます(繰下げ請求)。その場合、65歳で受け取るよりも支払毎の年金は増額されます。増額率は一と月当たり0.7%です。これまで繰下げ請求できるのは70歳まででしたが、今回の改正により、75歳まで延長されました。その場合、65歳で受給開始するよりも、84%(0.7%×10年間据置きの120月分)増額された年金を受け取れます。ただし、年金の受給開始を遅らせたときの総支給額の逆転現象には、現在の仕組みで試算しても11年11月を要します。例えば75歳で受給開始した場合、86歳11月より長生きして、はじめて元を取れるという計算になります。言い換えると、年金の受給開始はいつが適当かは、結局のところいつまで長生きするか次第ということです.

確定拠出年金の加入可能年齢引上げが令和4年5月施行されます

確定拠出年金は企業が従業員のために実施する退職給付制度です。加入要件が厚生年金に加入している65歳未満の方から、70歳未満に引き上げられます。