業務災害
Q.会議用資料を忘れて出社~自宅に戻り、通勤災害?
従業員が、会議用に作成した資料を自宅に置き忘れて出社しました。上司に叱責され自宅に取りに戻りましたが、あわてていたためか、駅の階段で転倒し、足首を骨折してしまいました。この場合、申請すれば、通勤災害として認められるでしょうか?
A.業務の性質を有するものとして、業務災害にあたります
労働者災害補償保険法は、通勤について次のように定めています。
・労働者が、就業に関し、
・住居と就業の場所との間等を
・合理的な経路及び方法により往復することをいい、
・業務の性質を有するものを除くものとする。
設問は、業務に必要か少なくとも関連のある書類を取りにわざわざ戻ったのですから、通常の帰宅と違い、「業務の性質を有するもの」と言えます。「上司の叱責」を業務命令と捉えることも可能ですが、注意しただけで取りに戻るよう命令したわけではなかったとしても、従業員の行為の業務性は変わりません。したがって、通勤災害ではなく、業務災害にあたります。
昼食をとるために戻った場合は?
通勤の「合理的な経路及び方法」は、幅広く認められます。「昼食をとるための帰宅」は合理的でないとは言えませんし、通勤は1日1回、1往復しか認められない、ということもありません。一方、昼食のみが目的であれば、「業務の性質を有するもの」にはあたりません。こうしたことから、「経路及び方法が合理的でなかった」とする事実がない限り、昼食のため住居と就業場所との間を往復する途中の災害は、通勤災害として認められます。
その他どんな場合、通勤災害として認められますか?
通勤の途中において、就業または通勤とは関係ない目的で合理的な経路を外れたり、通勤とは関係ない行為を行ったりした場合も、それらが日常生活上必要な行為等にあたると認められれば、その後の往復途中の災害は通勤災害として認められます。
具体的な事例としては、次のようなものがあります。
・日用品の購入のためにお店に寄った後の通勤
・病院又は診療所において診察又は治療を受けた後の通勤
・要介護状態にある親族を介護した後の通勤
・養育する子供を保育等へ送迎した後の通勤
ただし、通勤中断中の災害、たとえば日用品の購入に寄った店舗内の災害、病院等の中で起きた災害等は通勤災害と認められないことに注意が必要です。
これに対し、次のような事例は、日常生活上必要な行為等にあたらず、その後の往復途中の災害は通勤災害と認められない、とされています。
・映画を観た後の帰り道
・居酒屋等で飲酒をした後の帰り道
・デートのため長時間にわたってベンチで話し込んだ後の帰り道
・長時間にわたって手相、人相等を見てもらった後の帰り道