高年齢雇用継続給付金
Q.62歳の従業員を新たに雇い入れた場合、高年齢雇用継続基本給付金は受給できますか?
建設業を営む者です。通年、新卒者の採用募集を行っていますが、応募者が少ない上、採用に至っても長続きせず、思うように人材が確保できません。そこで、対象に経験者を加えたところ、転職希望の62歳の方から応募があり、その際に、高年齢雇用継続基本給付金(以下「雇用継続給付金」と言います。)について質問されました。雇用雇用継続給付金は、同じ企業で60歳以降の賃金が減額となった場合にのみ適用されると認識しています。そうであれば、仮に当社に採用後、賃金が下がったとしても、転職先なので適用除外と考えますが、いかがでしょうか?
A.転職先でも雇用継続給付金の申請はできます
雇用継続給付金(雇用保険法第61条)は、60歳から65歳までの雇用継続を援促進することを目的に創設され、平成7年4月から施行されています。具体的には、60歳以上65歳未満の雇用保険に加入している労働者が、60歳時点に比べ賃金が75%未満に低下した状態で働いている場合、ハローワークに申請することにより、各月に支払われた賃金の最大15%が労働者に支給されるというものです。
ところで、今日、「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」の第9条によって、事業主は労働者に対する65歳までの雇用を確保しなければならないとされています。事業主としては将来に向けて増大する人件費を抑制する必要から、60歳以降の賃金を減額して対応する事が一般的です。その際に広く活用されているのが、この雇用継続給付金です。
労働者が雇用継続給付金を受給できる要件は次の4つです。
(1)現在も雇用保険に加入していること
(2)60歳時点で雇用保険に加入していた期間が通算して5年以上あること
(3)賃金が60歳時点に比べて75%未満に低下していること
(4)雇用保険の失業給付の基本手当を受けていないこと
さて、設問の事業主は、雇用継続給付金は、同一事業場内で賃金が減額となった場合にのみ適用されると認識していたとのことです。しかし、上記のとおり、同一事業場内の雇用は要件ではありません。
したがって、転職先の賃金が、60歳時の賃金に比べて75%未満に低下していれば、転職先で雇用継続給付金の支給を申請することは可能です。つまり、雇用継続給付金は、雇用先にかかわらず、企業をまたいで適用されるという点がポイントです。
さて、本人が、前の職場で既に雇用継続給付金を受けていたときは、次回の申請のための用紙が交付されています。その場合、転職先の事業主は、本人から用紙を預かって必要書類を作成し、自社を管轄するハローワークに2か月に一回申請します。
一方、転職後、60歳時点と比べて賃金が75%未満に下がったときは、下がった時点から4か月以内に初回の申請を行います。その際には「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」の添付が必要です。この証明書を作成できるのは、60歳時に勤務していた会社ですから、前の職場に作成を依頼しなければなりません。
上記の要件(4)のとおり、退職後に失業給付の基本手当を受給し、その後に再就職した場合は、雇用継続給付金は受給できません。
ただし、基本手当の残日数等、一定の要件を満たす場合は、「高年齢再就職給付金」の申請が可能なときがあります。
このように、高齢者の賃金減額を補うことを目的に、様々な給付金が整備されています。本人からよく状況を聞き取った上で、活用できる制度はないか、十分検討することが大切ですね。