雇入れに当たり保証人を求めることの意義

Q.雇入れにあたり保証人を求める意義等をご教示ください

社内異動で初めて人事担当を務めます。この度新たな社員の雇入れがあり、前例に倣い保証人を求めたところ「前の勤め先では必要なかった」と難色を示されました。前任者に相談すると「以前からそうしているが、詳細は知らない」との回答です。そもそも保証人を求める根拠は何ですか?また、保証人を付する場合注意すべき点等があればご教示ください。

A1.様々な保証がありますが雇入れ時の保証人は身元保証であり民法上の個人根保証契約にあたります

保証とは、主たる債務者が債務を履行しないとき、代わって履行する義務を負うことであり、民法第446条を根拠とします。例えば金銭消費貸借契約において、抵当権等の物的担保と並んで、又はそれに代えて、人的担保として保証人の資力を弁済の担保とする保証契約を締結する場合等です。その目的は、債権者側のリスク回避又は軽減です。保証契約の当事者は、債権者と保証人であり、債務者と保証人、又は債務者と債権者ではないことに注意が必要です。

一方、設問の雇入れ即ち労働契約における保証の目的は、次の二つであると考えられます。

(1)信用確認:被保証人は、心身ともに健康で、誠実に労務を提供する信用に値する人物であることの確認

(2)リスク管理:被保証人の不正又は不適切な行為により、使用者側に損害が生じた場合、その被害回復を担保

金銭消費貸借契約における保証の対象は借入額及び利子であり、特定された債務です。それに対し労働契約においては、一定の範囲で継続的に発生する不特定の債務を包括的に保証することとなります。こうした形態の保証を根保証(ねほしょう)といい、労働契約における身元保証はその典型的なものです。

A2.身元保証の根拠や注意点等は次のとおりです

身元保証は「身元保証に関する法律」の適用を受けます。その主な内容を整理すると次のとおりです。

(1)身元保証の有効期間は原則3年間、最長5年間。なお、自動更新の特約は判例により無効と解されている。

(2)使用者は、身元保証人の責任が生じる恐れがある場合、又は責任加重や監督が困難となる場合等は通知を要し、その場合、身元保証人は将来に向けて保証契約を解除することができる。

加えて、身元保証は保証に関する一般法である民法の適用を受けます。2017年の民法改正(2020年4月施行)で、根保証契約において「極度額」の設定が義務付けられました(第465条の2)。極度額とは、被保証人の非行等により損害が生じたとき、身元保証人が負うべき責任の上限であり、極度額の定めがないか、又は例えば「給与1年分相当」等、不明確な場合、契約自体が無効です。極度額は使用者の事業の特質やその中で被保証人が担う業務内容等に基づき合理的に定める必要があります。ただし、仮に損害が生じたとき、その全てを身元保証人の責に帰することは、現実には困難です。損害賠償責任の存否や範囲は、被保証人の悪意又は過失度合い、使用者の管理責任、身元保証に至った経緯等を総合的に勘案して裁判所が定めます。明らかな背任・横領事件等であっても、相当の免責が認められた事例は少なくありません。そうかといって過度に高額な極度額を設定すれば、合理性が疑われるとともに、身元保証人を得ること自体難しくなります。しかも繰り返すと、担保される期間は3年間ないし5年間に限られ、実効性が高いとは必ずしも言えません。

ところで、前述した身元保証の二つの目的のうち前者即ち信用確認は、身元保証人が被保証人に代わって履行することはできません。被保証人に代えて身元保証人に労働させたり、代わりの人材をあっせんさせたりすることは考えられません。したがって、信用確認の要素は、身元保証に関する法律及び民法が適用されない、信義則的な法外の行為であると解されています。

このように考えていくと、身元保証の制度に期待できるのは、被保証人に対し自覚や業務精励等を促すとともに、非行等に走ることがないようけん制する等の効果と考えられます。使用者の事業内容の特質等から改めて検討した上で、維持すべきと判断する場合は、妥当な極度額の設定に留意し、一方、必要性が乏しいと考えられる場合は、機会を捉えて廃止することも一案と考える次第です。