所定労働時間と法定労働時間
Q.所定労働時間を超えたとき、割増賃金を支払うと定められています。法定労働時間との違いは何ですか?
当社の勤務時間は、就業規則によれば、始業が9時で終業は17時、途中1時間の休憩時間が設けられています。また、所定労働時間を超えて労働させたときは、割増賃金を支払うと定められています。
ところで、割増賃金は法定労働時間を超えて労働させた場合に支払う必要があると聞きました。
労働時間に所定と法定と二通りの表現があるようですが、所定労働時間と法定労働時間との違いは何ですか?
A.所定労働時間は使用者が任意に定めた時間であり、法定労働時間は労働基準法に定められている時間です。
使用者は、労働条件の明示の一環として、労働者に対して始業の時刻と終業の時刻を示すことを義務づけられています(労働基準法第15条及び同法施行規則第5条第2項)。それらの時刻は、使用者が任意に定めることができます。使用者が定めた始業から終業までの労働時間から休憩時間を除いた時間を、所定労働時間と言います。
一方、労働時間については、労働基準法第32条において、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について40時間を超えて、労働させてはならない。使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について8時間を超えて、労働させてはならない。」と定められています。つまり、法定労働時間とは、労働基準法に定められた一週40時間、1日8時間の労働時間です。
先に述べたとおり、使用者は所定労働時間を任意に定めることができますが、法定労働時間を超えて定めることはできません。したがって、所定労働時間≦法定労時間となります。
なお、特別の定めがない限り、1週は日曜日から土曜日まで、1日は0時から24時までのことをいいます。
割増賃金を支払わなければならないのはどんなとき?
労働基準法において、割増賃金の支払を義務づけている労働は次の3つです。
(1)法定労働時間を超えた労働
(2)法定休日*の労働
(3)深夜労働(22時~5時)
したがって、就業規則等に定める所定労働時間が法定労働時間より短い場合、本来は、所定労働時間を超えて労働させても、法定労働時間を超えない限り、割増賃金を支払う義務はありません。ただし、原則として通常の労働時間の賃金を支払う必要があります。
*「法定休日」とは、労働基準法第36条に定める「毎週少なくとも一回の休日」をいいます。週休2日制を採っている会社であれば、1日は法定休日、もう1日は所定休日にあたります。
割増賃金の支払を「法定労働時間を超えたとき」に改めるには?
設問の会社の所定労働時間は7時間ですから、法定労働時間の8時間より1時間短く定められています。一方、所定労働時間を超えた時間は割増賃金を支払うと定められています。つまり、法律の基準を上回る労働条件であり、何ら違法ではありません。
仮に、法律の基準どおり、法定労働時間を超えたとき割増賃金を支払うように就業規則を変更すれば、労働条件の不利益変更にあたります。個々の労働者の同意を得ない限り、使用者は就業規則を変更できません。