労使協定の締結者

Q.労働組合はあるが、組合員が過半数にいたらないときに労使協定は結べますか?

A.使用者は、当該労働組合と労使協定を結ぶことはできません。

組合のある事業場は少ないので深入りしませんが、労働協約を結ぶことは可能です。労使協定と労働協約との違いを要約すると、

(1)労使協定は労働基準法等に基づく制度であり、協定の内容は全ての労働者に適用される。

(2)労働協約は労働組合法に基づく制度であり、協約の内容は当該協約を結んだ労働組合の組合員にのみ適用される。なお、協約と就業規則等の定めとが異なるときは、協約が優先される。

仮に過半数にいたらない組合と協約を結んだとすれば、一つの事業場に労働条件の異なる労働者が混在し、経営や労務管理等の観点から問題となる懸念があります。

Q.親睦会はあるが、労働組合はないときは?

A,使用者は、親睦会と労使協定を結ぶことはできません。

親睦会は会員相互の親睦や福利厚生等を目的とする組織であって、労働者の団体意思を代表する機能は認められないからです。

ただし、適正な手続を経て選出された労働者の過半数を代表する者が親睦会の代表を務める労働者であったとしても、それはたまたまそうなったというに過ぎず、特段問題はありません。

Q.過半数代表者と認められる者とは?

A.過半数組合がないとき、過半数代表者と認められる者については、労働基準法や同法施行規則等に定めています。要約すると、

(1)管理監督者(労働基準法第41条2号)でないこと。

(2)労使協定締結等をする者を選出する旨を明示して実施した選挙、挙手等により選出されたこと(施行規則第6条の2第1項)。

(1)で注意すべきは、労働基準法上の管理監督者は、部長や課長等、肩書の付いたいわゆる管理職よりも限定されることです。

厚生労働省の通達によれば、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。具体的には、

・経営方針に関与し、又は職員の採用権や労務管理上の指揮権限を持つ等、重要な職務と権限が与えられていること

・始業・終業時間を拘束されない等、出退勤の管理を受けないこと

・賃金面で、その地位に相応しい待遇がなされていること

等の点を総合的に勘案して判断する必要があります。

また、(2)については、労働者間の互選がポイントです。使用者が過半数代表者を指名したり、一定の職位にある者を宛て職として過半数代表者としたりすること等は認められません。

Q.過半数というとき、パートタイマーや派遣労働者等の取扱は?

A.旧労働省の通達は、36協定でいう労働者の範囲は労働基準法第9条に定める労働者であるとし、これは事業に使用され賃金を支払われる全ての労働者にあたります。したがって、正社員であるとパートタイマーであると問わず、また、管理監督者(労働基準法上の管理監督者のみならず、いわゆる管理職を含む)、長期欠勤者や休職期間中の者等を含めて労働者の母数であり、その過半数が互選により認めた者で、かつ、労働基準法上の管理監督者にあたらない者が過半数代表者ということになります。

なお、派遣会社から当該事業場に派遣されている者は、時間外・休日労働に関わる労使協定であれば母数から除かれます。

ただし、休憩に関わる労使協定であれば、労働者派遣法は一斉休憩の付与義務を派遣先の使用者に負わせているため母数に含まれるという、いささか複雑なことになっています。

Q.労使協定の締結が要件とされるのは、「時間外・休日労働」の他にどのようなものがありますか?

A.労働基準法等において労使協定の締結が要件とされる規定として、主なものは次のとおりです。

 

*根拠条文は特記ない場合労働基準法

労使協定が必要な場合

根拠条文

要届出

労働者の委託による社内預金管理

18条

賃金からの一部控除

24条

×

変形労働時間制(1カ月、1年、1週間)

32条の2

32条の3

32条の5

フレックスタイム制

32条の3

×

交替制など一斉休暇によらない場合

34条

×

時間外労働・休日労働

36条

月60時間超の時間外労働をさせた場合の

代替休暇制度

37条

×

事業場外みなし労働時間制

38条の2

専門業務型裁量労働制

38条の3

時間単位年休

39条

×

年次有給休暇の計画的付与

39条

×

年次有給休暇取得の賃金を健康保険の

標準報酬日額で支払う場合

39条

×

育児介護休業の申出拒否

育児介護休業法

6条

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