年次有給休暇消化の義務付
年次有給休暇の消化の義務付が施行される予定です。
今後、労働関連の法令改正が相次いで行われる予定です。その一つとして、労働者の年次有給休暇の取得を使用者に義務付ける、労働基準法の改正があります。
日本の有給休暇の取得率は、既に取得を義務付けている欧米の100%にほど遠い48,8%(2013年)となっています。その原因として、「有給休暇を申し出にくい雰囲気」「まわりへの遠慮」「仕事量が多く休む暇がない」等が指摘されています。
労働基準法の改正は、使用者側と労働者側の利益が相反することが多いことから、すんなりとは合意に結び付きません。そうした中にあって、この改正は両当事者が早い段階で導入に合意した事例です。義務付する日数等については意見対立もありましたが、それらにも調整がつき、平成28年4月施行を目指し、国会に提出されました。
この改正は、企業規模に関わらず、労働基準法が適用される全ての事業場に適用されます。中小企業等への特例措置はありません。
有給休暇消化義務の具体的内容は、どのようなものですか?
使用者に義務付けられる具体的な内容は、次のとおりです、
① 有給休暇のうち、5日分は使用者が時季指定をすること。
(違反の場合は罰則の対象とする。)
② ①のうち、義務とする日は、社員が自ら有給休暇を申し出た分の残りの分とする。(たとえば、社員が2日有給休暇を消化した場合、義務とされる日は残りの3日になる。)
③ 対象者は、年10日以上の有給休暇を付与される全ての人とする。
本来、有給休暇は労働者の申出(時季指定)により履行されるものです。改正により、使用者は社員から申し出がない場合であっても、年に5日は強制的に有給休暇を消化させなければなりません。
この5日には社員が自主的に有給休暇を消化した分を含めます。したがって、たとえば既に社員自ら5日以上消化していれば、使用者は義務を果たしたことになります。
また、対象者は管理職等を含めた全ての社員です。ただし、「年10日以上の有給休暇を付与される人」が対象者となりますので、パートタイマー等、一部の社員には適用されません。
今後の対応として、どのようなことが必要でしょうか?
まず、自社における有給休暇の取得率を確認することが必要です。
既に取得率が高い事業場であれば、改正による影響はありません。
一方、現在取得率の低い会社にとっては、改正による影響はとても大きくなります。実態としては、社員1人が休んでも業務が回らなくなるような事業場もあるでしょう。
けれども、もはやそんなことは言っていられません。平成28年4月の施行を見据え、早期に社員の有給休暇取得率を上げる取組を進めることが大切です。
取得率の低い原因を調査し、人手不足のためであれば人を増やす。人を増やせない場合は、業務の効率化を図る。いずれかの対応が必要です。社員が5日の有給休暇を取得しても、業務に支障の生じない社内体制の構築が急務となっています。