法令違反企業の求人申込み不受理
Q.今後、公共職業安定所が求人を受け付けない場合が生じると聞きましたが?
当社は、パート社員等の求人の際、公共職業安定所(ハローワーク)を利用しています。
先日、今後はハローワークが求人申込みを受け付けない場合があると聞きました。どんな場合、受け付けてもらえなくなりますか?
A.法令違反を年間2回以上繰り返す等の行為があった場合、ハローワークは求人申込みを拒否できることになりました。
職業安定法第5条の5は、「公共職業安定所及び職業紹介事業者は、求人の申込みはすべて受理しなければならない。」と定めています。また、同条のただし書においては、「申込みの内容が法令に違反するとき等はその申込みを拒否できる」とも定めています。
「申込みの内容が法令に違反」とは、労働時間の設定が法定労働時間の一日8時間、週40時間を超えている、休憩時間が法定時間より短い、賃金が最低賃金以下である等、申込みの労働条件がそもそも法令を遵守していない場合です。つまり、これまでもハローワークが求人の申込みを拒否することはあり得ました。
ところで問題となるのは、適法な労働条件で求人し、採用後にその条件とかけ離れた劣悪な労働を強いる企業の存在です。若者を中心に大量採用し使い捨てのように取り扱う、いわゆるブラック企業は後を絶ちません。一方、就職活動中に抱いたイメージと現実とのギャップ等を理由として、新卒採用の若者が入社後3年以内に離職する割合は3割以上にも上っています。
こうした社会経済状況を背景に、若者の適切な職業選択を支援する措置の一環として、勤労青少年福祉法の一部を改正した「青少年の雇用の促進等に関する法律」が今国会で成立しました。
それと合わせ、「求人の申込みはすべて受理しなければならない。」としている職業安定法の特例として、一定の労働関係法令違反があった求人者について、ハローワークは新卒者の求人申込みを受理しないことができるとされました。
一定の労働関係法令違反とは、具体的には残業代不払い、セクハラ等の事実があり、そのために労働基準監督署の是正勧告を年間2回以上受けた場合等がそれにあたるとされています。
施行はいつからですか?また、中途採用者の取扱いはどうなりますか?
「青少年の雇用の促進等に関する法律」は、本年10月1日から施行されます。ただし「一定の労働関係法令違反を理由とする公共職業安定所の求人申込み不受理」は、平成28年3月1日からです。また、不受理期間は、当該法令違反を是正するまで、及びその後の半年間とする方針です。
ところで、法令違反企業の求人申込み不受理は、新卒者のみが対象で中途採用者には適用されません。このため効果は限定的との指摘もありますが、ハローワークから求人申込みを拒否されている等の事実は企業イメージを損ない、人材確保の上で大きなハンディをもたらします。
法令遵守はもとより、企業におけるコンプライアンス体制の整備等が一層重要と捉えるべきでしょう。