両立支援制度(介護離職防止支援コース)
Q.親の介護が必要となった従業員がいます。勤務を継続するための公的支援制度等はないでしょうか?
親の介護が必要となった従業員から、介護に専念するため退職したいとの申出がありました。当社に不可欠な人材であり、従業員の高齢化が進む中、今後同様の事態が生じることも懸念されます。また、介護を終えた後を考えれば、退職してしまうことが得策とは思えません。何とか思いとどまるよう説得したいのですが、介護をしつつ勤務を継続するための公的な支援制度等があれば、ご教示ください。
A1.先ずは介護休業・休暇制度を活用しましょう
総務省統計によれば、2020年現在、わが国の65歳以上人口は3,617万人、総人口に占める割合は28.7%です。4人に1人以上が高齢者という超高齢社会に突入しています。そうした中で大きな問題となっているのが、親の介護です。介護が必要となる世代は主として75歳以上、介護にあたる世代は40歳代後半から50歳代が中心です。会社において重要な役割を担っているケースが少なくありませんが、毎年10万人近い方々が介護離職を余儀なくされています。
政府は、これまでも介護離職ゼロを目指す施策の一つとして、育児・介護休業法の改正を重ねてきました。現行の同法に基づいて、労働者は、介護が必要な人ひとりにつき通算93日間の介護休業及び5日間の介護休暇を取得できます。また、介護休業は一度に取得することも、3回まで分割して取得することもできます。本年4月1日からは、従来1日を単位としていた介護休暇を1時間単位で取得できるようになりました。一方、使用者は、介護休業・休暇取得の申出を受けた場合、引き続き1年以上雇用されていない等を除き、原則として拒むことはできません。
なお、介護休業・休暇は、現に常時介護を要する状況にあることが要件です。介護保険制度に基づく介護認定を受けていなくとも取得できることに注意が必要です。
A2.従業員も事業主も雇用保険制度を活用しましょう
ノーワーク・ノーペイの原則により、使用者に介護休業中の賃金を支払う義務はありません。休業中の賃金を補填するため、労働者は雇用保険制度の介護休業給付金を利用することができます。
ハローワークに申請すると、休業した日について休業開始時の賃金の67%相当額が支給されます。事務手続は従業員本人が行うこともできますが、資格確認や申請には、賃金台帳など会社が作成・保管している書類が必要です。このため、会社の総務・人事担当等が本人に代わって行うことが一般的です。
一方、事業主は、雇用保険制度の両立支援等助成金「介護離職防止支援コース」を利用できます。介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主や、介護のための柔軟な就業形態の制度を導入し、かつ、実際に利用者があった中小企業事業主に対して助成金が支給されます。
例えば介護休業の場合、介護のために従業員を5日以上休業させたとき、介護休業の取得時に28万5千円、復職時に同じく28万5千円が支給されます。事前に介護休業プランを作成し、従業員と面談を実施するなど、休業取得や復職を円滑にするための準備を行っていることが要件です。
また、介護のための柔軟な就労形態、具体的には所定外労働を制限する制度、時差出勤制度、深夜業を制限する制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度、法を上回る介護休暇制度、フレックスタイム制度、介護サービス費用補助制度等のうちいずれかを導入し、合計20日以上利用があると、同じく28万5千円が支給されます。
介護離職は、従業員本人はもとより事業主にも大きなリスクです。様々な制度を活用し、介護と勤務の両立を図ることが大切です。