割増賃金のよくある質問
Q1.祝日に労働させれば必ず割増賃金が発生しますか?
当社は、就業規則において土曜、日曜及び祝日を休日と定めています。5月の大型連休直前に駆け込みの受注があり、納期に間に合わせるため、祝日のうち一日出勤してもらいました。この場合、割増賃金率は25%、35%のどちらを適用すべきですか?
A1.祝日に出勤させても週の労働時間が40時間以内及び1日8時間以内であれば割増賃金は不要です
労働基準法第32条は、使用者は、労働者に、休憩時間を除き、一週間について40時間及び一日8時間を超えて労働させてはならない、と定めています(法定労働時間)。法定労働時間を超えて労働させるためには、使用者は労働者との間で、時間外・休日労働に関する協定(36協定)を締結し、その内容を労働基準監督署長に届け出る必要があります。協定締結及び届出がないまま時間外労働をさせると、労働基準法に違反するものとして罰則の対象となります。
一方、使用者は、労働者の法定労働時間を超える労働に対し、割増賃金を支払う義務があります。割増率は原則25%で、仮に時給1,000円の労働者が週に41時間労働したとすれば、40時間を超える1時間に対し1,250円を支払います。ところで、使用者の中には、祝日に労働させる場合にも割増賃金が必要と思い込んでいる方が少なくありません。法令上割増賃金が発生するのは、あくまでも週40時間及び1日8時間を超えた時間です。祝日に出勤させても、週の労働時間が40時間を超えていなければ、割増賃金は要りません。
Q2.年度途中で会社の所定休日を増やしたとき割増賃金の計算方法はどの時期に変更すべきですか?
割増賃金の計算にあたっては、1時間当たり単価の算出が必要です。月の労働日数に関係なく同額の給与を支給している場合、1時間当たり単価の算出手順は次のとおりです。
(1)始業・終業時刻、休憩時間により一日の所定労働時間を算出
(2)年間休日数により、年当たり総労働日数を算出
(365日-年間休日数)
(3)1か月当たり平均労働時間を算出
(総労働日数÷12)×一日の所定労働時間
(4)1時間当たり単価を算出
(固定的賃金総額-除外できる手当)÷1か月当たり平均労働時間
こうしたことから、年間休日数は1時間当たり単価に影響します。さて、設問の会社では、年度途中で休日数が増加するため、再計算が必要になりましたが、その時期はいつが適当でしょうか?
結論を言うと、休日に関する就業規則の変更の効力が発生する時期に行います。割増賃金は、その計算時点における年間所定労働時間を基に計算した1時間当たり単価に基づいて計算すればいいのであって、年度初めに遡る必要はありませんし、就業規則を改定した6月から再計算する必要もありません。ご存じのとおり休日に関する規定は、就業規則の絶対的必要記載事項です。就業規則の休日規定に創立記念日を追記するのと併せて、付則等に「本改正は令和3年10月1日から適用する」と定めて周知し、10月1日以降の賃金から再計算した1時間当たり単価を反映させます。