年次有給休暇のよくある誤解について
Q.週に一日だけ勤務する従業員がいます。有給休暇を付与する必要はないと聞きましたが間違いありませんか?
個人医院を営んでいます。毎週水曜、一日のみ勤務している看護師がいます。以前に、労働日数が少ない労働者には年次有給休暇(以下「有休」と言います。)は不要と聞いたので、付与していません。このような取扱いで何か問題はありますか?
A.週一日だけ勤務する労働者に対しても要件を満たしていれば使用者には有休を付与する義務が生じます
結論から言うと、設問の使用者は有休について誤った認識を持っています。もっとも、こうした方は少なくありません。
さて、有休は労働基準法第39条(以下「同条」と言います。)に基づく制度です。同条は第10項までありますが、設問に直接関係する第1項から第3項について詳細に見ていきましょう。
(同条第1項)使用者は雇入れの日から起算して6箇月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
「全労働日」とは、労働者それぞれが予め働くことを決められている日数です。設問の看護師を例にすると、毎週水曜日、一日のみというのですから、雇い入れの日から6箇月経過する日の間の水曜日の日数をカウントすれば、全労働日が算出できます。なお、使用者の都合により閉院とした水曜日や、水曜日以外で当初予定になかった急な出勤等は全労働日のカウントには含まれません。
(同条第2項)使用者は、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日から起算した継続勤務年数1年ごとに、定められた労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、1年毎に区分した各期間において出勤した日数が全労働日の8割未満である者に対しては有給休暇を与えることを要しない。
勤務年数が増えると、付与すべき有休も増加します。ただし、それぞれの年において全労働日の8割以上出勤していることが要件です。設問の看護師を例にして、まず全労働日を算出します。雇入れ後6箇月を経過した日から1年間の水曜日の日数がそれにあたります。
全労働日:月4日×12か月=48日
すると、8割以上出勤は、
出勤日数÷48日×100(%)≧80
ですから、39日以上出勤していれば、新たな有休を付与する必要があります。注意すべきは、出勤日のカウントには遅刻した日や早退した日も含まれることです。
(同条第3項)一週間の所定労働日数が通常の週所定労働日数に比し相当程度少ないもの、週以外の期間によって所定労働日数が定められている労働者の有給休暇の日数については、厚生労働省令で定める日数とする。
設問の看護師のように水曜日のみなど、通常の労働者に比べて週の所定労働日数が少ない労働者に付与すべき有休の日数は、厚生労働省令によって下表のとおり定められています。
《週の所定労働日数が30時間未満の労働者》
週所定
労働日数 |
年間所定労働日数 | 勤続年数と付与日数 | ||||||
6
箇月 |
1年
6箇月 |
2年
6箇月 |
3年
6箇月 |
4年
6箇月 |
5年
6箇月 |
6年
6箇月 |
||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72
日 |
1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
このように、使用者は労働者が要件を満たした場合、必ず有休を付与しなければなりません。ただし、年5日の取得義務が生じるのは、年10日以上の有休を付与される労働者に限られます。