子の看護休暇
Q.子どもの予防接種のため、午前を有給休暇、午後の1時間を子の看護休暇としたいとの申出がありました
従業員から、幼稚園に通うお子さんの予防接種のために、9時~14時の間、休暇を取りたいとの申出がありました。本人は、午前中を有給休暇(以下「有休」と言います。)、昼休み後、13時~14時の1時間を子の看護休暇としたいとのことです。
そこでお尋ねしますが、そもそも子の看護休暇は、予防接種の場合、認められますか?また、仮に、認められるとして、時間単位で取得することはできますか?当該従業員は、有休を相当残しています。また、弊社において、半日単位の有休を認めた例は、これまでありません。できればその日は1日休みにして、有休を消化させたいのですが、何か問題はありますか?
A. 子の看護休暇は、予防接種等も対象であり、時間単位で取得することができます。申出があった場合、使用者は拒むことはできません
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「同法」と言います。)は、子どもの養育又は家族の介護を行う労働者等を対象として、雇用の継続及び再就職の促進を図ること等を目的としています。育児や介護を行いやすくするため、所定労働時間等に関して事業主が講ずるべき措置や、育児や介護を行う労働者等に対する支援策を定めています。
今日、育児や介護のために、一定の連続した休暇を取得できる育児休業、介護休業の制度は、普及定着しつつあります。一方、スポットで取得することができる子の看護休暇や介護休暇の制度は、まだ認知度が高くないと思われます。そこで、同法に定める子の看護休暇の詳細を確認します。
同法第16条の2によれば、子の看護休暇は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対して、次の場合に認められます。
・ 負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話
・ 疾病の予防を図るために必要なもの
したがって、予防接種に加えて、健康診断等の場合も認められます。
また、休暇の期間は、「一の年度において5労働日(子が二人以上の場合は10労働日)を限度」とします。
一方、同法施行規則の改正により、令和3年1月から、子の看護休暇を時間単位で取得できるようになりました。取得できる期間は、5労働日のままで、例えば1日の所定労働時間が8時間の事業場であれは、延べ40時間分取得することができます。
従業員から子の看護休暇取得の申出があったとき、使用者はいかなる理由があっても拒むことはできません。当該申出は、緊急切迫した状況の下に行われると考えられ、経営困難や事業繁忙等を理由として拒むことができる育児休業や介護休業と比較しても、一層強い権利と言えます。
ところで、有休の目的は、労働基準法に定めるとおり、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることにあり、一日単位で与えることが原則です。ただし、労働者が半日単位での取得を申し出て時季を指定し、使用者が同意すれば、一日単位で取得することを妨げない範囲で半日単位の取得が認められます。また、時間単位で有休を取得するには、別途、労使協定が必要です。
このように見ていくと、設問のケースでは、先ず、予防接種のために13時~14時の1時間を子の看護休暇としたいとの申出を拒むことはできません。次に、午前中の半日を有休としたいとの申出に同意するか否かは、使用者の裁量次第です。これまで例がないことには、相応の理由があると考えられます。今後の制度運用にも関わるため、同意の可否は慎重に判断する必要があります。仮に、同意しない場合の対応としては、有休制度の主旨を説明した上で、その日1日を有休とするか、又は9時から14時まで昼休みの時間を除いた4時間を子の看護休暇とするか、従業員にいずれかを選択させることが適切と考えられます。
最後に、子の看護休暇については、令和7年以降、次のとおり新たな改正が予定されていることを申し添えます。
(1)子の看護休暇の請求期間を小学校3年生修了時までとする。
(2)感染症に伴う学級閉鎖等や子の行事参加(入園式、卒園式及 び入学式)を対象に加える。