労働契約法の無期転換

Q.有期労働契約が5年を超えると、自動的に無期労働契約に変わりますか

パンの製造小売業を営んでいます。従業員は15名で、全員がパート労働者です。従業員とは1年毎に労働契約を取り交わしていますが、更新を繰り返した結果、勤務期間が既に7年以上になる従業員もいます。ところで、法律上、労働契約の期間が通算5年を超える場合、次の契約からは期間の定めの無い労働契約(以下、「無期労働契約」と言います。)になると聞きました。そうすると、当社においても、該当する従業員は、既に無期労働契約に切り換わったということになりますか?

A.有期労働契約から無期労働契約への切り換え(無期転換)は、自動的にそうなるものではありません

期間の定めのある労働契約(以下、「有期労働契約」と言います。)は、使用者側の都合のみならず労働者側にも一定のニーズがあり、双方が納得できる良好な雇用形態とすることが重要です。これまで有期労働契約の期間終了時、契約が更新されず雇い止めとなることがある一方、契約が反復更新され、長期間にわたり雇用が継続するケースも少なくないなど、使用者と労働者との間で、雇用の終了に関する争いが繰り返し生じていました。そうした状況を踏まえ、有期契約労働者の濫用的な利用を抑制し、安定的な雇用を実現することを目的として、改正労働契約法(以下、「同法」と言います。)第18条が、2013年4月に施行されました。同法は、同一の使用者との間で有期労働契約が更新されて通算5年を超えたとき、労働者からの申込みにより、無期労働契約に転換できることを定めています。これを一般的に無期転換と言います。ところで、有期労働契約であることに伴い労働者にとって有利な労働条件が定められていることもあります。そこで、無期転換は自動的にそうなるのではなく、あくまでも労働者の申込みが要件です。設問の有期労働契約の期間が通算7年以上の従業員も、自動的に無期労働契約とはならず、本人が申込みを行って初めて無期転換できます。一方、使用者は、有期労働契約の期間が通算5年を超える労働者から無期転換の申込みがあったとき、それを拒むことはできません。無期転換の時期は、申込み時の契約期間が終了する日の翌日です。

無期転換を回避するには?

仮に、就業規則等において、無期転換した従業員に適用すべき定年規定が定められていない場合、従業員が自ら退職を申し出なければ、いつまでも在職することが可能です。そうなると、使用者にとって様々な負担が生じるので、予め無期転換の回避について対策を講じておくことが大切です。その対策は、次のようなものがあります。

(1)契約期間の終了時が通算5年目となる年の契約に際して、今回の更新が最後であることを予め伝えます。そうすることで、従業員にも次回更新への期待がなくなり、雇用の終了に関するトラブルを防止することができます。

(2)通算5年になる前に、任意の時点で6ヵ月以上のクーリング期間(雇用しない期間)を設けます。例えば、通算3年を経過した時点で、一旦雇用を終了します。そのときの理由は、契約期間の終了に伴う雇い止めです。そして、6ヵ月以上を経過した後、改めて有期労働契約を結びます。これによって、通算期間は一旦クリアされます。ただし、クーリング期間が6ヵ月に満たない場合はクリアされないので、注意しましょう。

(3)なお、60歳を定年と定めたうえで、65歳まで1年毎の有期労働契約を締結している企業においては、都道府県労働局に「第二種計画設定届」を提出することで、定年後引き続き雇用する人については5年の通算期間から除外できる特例が設けられています。