解雇と雇止めの相違について

Q.労働契約を更新せず、クレーム。どう対応すれば?

当社は、卸売業を営んでいます。従業員は5名で、うち4名は雇用期間の定めのないいわゆる正社員、残り1名は有期労働契約社員です。有期労働契約社員とは1年毎の労働契約を取り交わし、これまでに3回更新しました。近年の業績低迷に伴い業務量も減少しているので、次回の更新はないと申し渡しました。ところが、その社員から「契約更新がないのは納得できない。解雇ではないか?」と強く抗議され、対応に困っています。納得を得るにはどうすべきでしょうか?

 

 

A.基本は、話合いで解決することが大切です。ただし、契約を更新しないことは「解雇」にはあたらず、「雇止め」です。

期間の定めの有る労働契約(有期労働契約)により雇用する社員を有期労働契約社員、通称契約社員等と言います。契約期間の長さは事業主、従業員双方の合意次第で、1年間、半年間、2ヶ月間等、様々です。ただし、3年を超える期間の契約はできません。

契約時点で契約期間が明示され、双方がその期間に合意していれば、トラブルになることは、本来、考えにくいと思われます。また、当初契約どおり更新なしで労働契約を終了させても、少なくとも法的には問題ありません。それでは、どのような場合、トラブルに発展するのでしょうか?

現実に発生しているトラブルは、そのほとんどが契約更新を繰り返していた場合です。つまり、これまで契約を更新していたのに、更新しない場合です。これを、使用者からの「雇止め」と言います。

「解雇」は、既に成立した契約の途中、使用者が一方的に労働契約を解約することです。これに対し「雇止め」は、有期労働契約社員の契約を更新せず、結果的に雇用関係を打ち切ることです。「解雇」もそうですが、「雇止め」に関する判例も多数に上ります。

さて、使用者はなぜ有期労働契約を更新するのでしょう?本来、契約期間満了と同時に雇用関係は終了します。使用者は、業務上の必要があれば、新しい従業員と新たな有期労働契約を締結できます。しかし、使用者としては、既に業務内容を知りその処理に習熟している従業員の方が業務上有益なので、有期労働契約を更新するのです。すると、従業員には次回も更新されるとの期待が生じます。その期待が裏切られた時、つまり、「雇止め」になった時、使用者への不満がトラブルへと発展するのです。

有期労働契約の場合における「雇止め」は、改正労働契約法に定める無期転換の場合を除き、本来は使用者側の任意の判断です。ただし、これまでの判例では「雇止め」が無効とされたケースも少なくありません。そこで、判例等において雇止めを有効と認めた事例の判断基準を紹介します。

(1)当該従業員の雇用の臨時性が高いこと

(2)更新の回数が少ないこと

(3)雇用の通算期間が短いこと

(4)更新の都度、きちんと契約書を取り交わしていたこと

(5)更新する場合及び更新しない場合の判断基準を示していること

(6)雇用継続の期待を持たせる言動をしていないこと

設問のケースでは、上記の判断基準に照らして対応すべきです。

たとえば、それまでの更新では意思確認等の機会を持たず、使用者が一方的に契約書を作成していた等、更新手続が形式的と認められる場合、「雇止め」無効とされる可能性があります。

また、設問のケースでは、従業員が「雇止め」に強い不満を抱いていることが窺がえます。それまでに、契約更新を期待させるような言動はなかったでしょうか?

そうした中で、問題を円満に解決するには、使用者は先ず契約を更新しない理由を丁寧に説明することが必要です。業績の低迷や具体的な業務量の減少の状況等について、理解を得るよう努めなければなりません。それでも理解を得られない場合、次善の策として、今回に限り更新するが、次の更新はないことを予め伝えておく等の対応も考える必要があります。