短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用拡大
Q.短時間労働者の社会保険加入要件が変更されたと聞きました
当社の従業員数は30名です。所定労働時間は1日7時間・週35時間、休日は土曜日、日曜日です。従業員のうち5名は非正規社員の短時間労働者で、1日5時間・週25時間、1か月15日勤務で雇用契約を結んでいます。
当社の場合、短時間労働者についても健康保険や厚生年金保険(以下「社会保険」と言います。)へ加入していますが、最近、短時間労働者の加入要件が変更されたと聞きました。どのような変更でしょうか?また、当社に影響はありますか?
A.短時間労働者の社会保険の加入要件が明確化されました
その事業場でフルに働く正社員に比べて、就業時間が短い労働者を短時間労働者といいます。これまで短時間労働者が社会保険に加入する要件は、次のとおりでした。
○ 就業規則や雇用契約書等で定める短時間労働者の所定労働時間(「1日又は1週間の所定労働時間」及び「1月の所定労働日数」)が、正社員のそれらのおおむね4分の3以上であるかどうかを一つの判断基準として総合的に判断する
このように「おおむね」とか「総合的判断」など、あいまいで解釈の余地ある書きぶりであったため、その時々の担当者の裁量次第で加入が認められたり又は認められなかったりという実態がありました。この基準が、平成28年10月1日以降、次のように明確化されました。
○ 1週の所定労働時間及び1月の所定労働の日数がフルに働く正社員の4分の3以上であること
つまり、余計な解釈や裁量が入らない書きぶりに改めたということですね。
さて、設問の会社における短時間労働者の1週及び1月の所定労働時間を見ると、正社員に比べ4分の3を下回っていることが分かります。これまでは、「おおむね4分の3以上」という判断基準によって社会保険への加入が認められていました。しかし、今後は改正後の基準によるため、所定労働時間が正社員の4分の3未満で働いている短時間労働者は社会保険へ加入することができないことになります。
それでは、既に社会保険に加入している短時間労働者の方々は改正後の基準に則り平成28年10月1日に資格を喪うのでしょうか?
答えはNoです。
施行日前から被保険者資格を有しており、施行日以降も引き続き同じ事業所に使用されている間は、引き続き被保険者資格を有します。(短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集:日本年金機構)
したがって設問の会社の短時間労働者で、施行日前から社会保険に加入している方への影響はありません。ただし、今後雇い入れる方が同じ条件で短時間労働に携わるときは、社会保険への加入は認められなくなります。
ところで、常時従業員が501人以上の会社は、事情が異なります。短時間労働者が4分の3以上の基準を満たさなくても次の4つの要件を満たしたときには、社会保険へ強制加入となります。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)雇用期間が継続して1年以上見込まれること
(3)月額賃金が8万8千円以上であること
(4)学生でないこと
今回の法改正により常時従業員が501人以上の事業場について短時間労働者の社会保険の適用が拡大されました。今後はそれ以下の事業についても適用対象とするよう検討が行われています。