65歳超雇用推進助成金

Q.定年を65歳以上に引き上げると、助成金がもらえると聞きました

金属加工製造業を営んでいます。従業員は8名です。定年は60歳で、既に希望者全員に対し65歳まで雇用する継続雇用制度を導入しました。少子高齢化の一層の進行等により、新たな人材確保がますます困難化することを懸念しています。そこで、定年を65歳まで延長しようと考えていたところ、定年年齢を引き上げると助成金の適用があると聞きました。本当でしょうか?

 

A.「65歳超雇用推進助成金」の対象となる可能性があります

平成28年10月19日以降、労働協約又は就業規則によって65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入のいずれかの制度を実施した事業主を対象とする「65歳超雇用推進助成金」が創設されました。

事業主に支給される助成金の額は次のとおりです。

65歳への定年引上げ 66歳以上への定年引上げ又は定年の廃止 希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入

66歳~69歳

70歳以上

100万円

120万円

60万円

80万円

また、助成の対象となる事業主は、次の9つの要件をすべて満たす必要があります。

(1)雇用保険適用事業所の事業主であること

(2)平成28年10月19日以降において、労働協約又は就業規則による定年の引上等制度を実施していること

(3)定年の引上等の制度を規定した際に経費を要したこと

(4)定年の引上等の制度を規定した労働協約又は就業規則を整備     していること(就業規則は助成金申請日の前日までに労働基準監督署に提出していること)

(5)高齢者等の雇用の安定等に関する法律(同法第8条又は第9条)に違反していないこと

(6)助成金申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1名以上いること

(7)助成金の審査に必要な書類等を整備、保管していること

(8)助成金の審査に協力すること

(9)申請期間内に申請を行うこと

 

さて、上記の指定された諸要件のうち、本当にポイントとなるのはどこでしょうか?

 

先ず確認すべきは、現に60歳以上の従業員がいるかどうかです。60歳以上の従業員がいないか又は60歳以上の従業員がいたとしても雇用期間が1年未満又は雇用保険に加入していない場合、助成金の対象事業主になりません。

 

次に、平成28年10月19日以降、定年引上等の制度を導入したとして、その際に経費が発生していなければなりません。私の立場からは言い難いのですが、例えば、社会保険労務士等に規則の作成を依頼し、その代金を支払ったか又はコンサルタント料を支払った等の実績が必要です。申請の際にあたっては、発生した経費の確認のために受託先との契約書、請求書、領収書等の添付が求められます。

 

また、定年の引上等の制度を規定した就業規則は平成28年10月19日以降から支給申請日の前日までに管轄労働基準監督署に提出していなければなりません。

 

助成金の申請期間は、定年引上等の制度の実施日の翌日から起算して2か月以内です。必要書類を添付し、各都道府県の「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」の支部高齢・障害者業務課に提出します。

 

 

助成金を目的に定年延長等を導入するのは本末転倒ですが、労働情勢にかんがみ、65歳を超える従業員の雇用を検討している企業は少なくないものと考えます。その際には是非活用したい助成金ですね。