小売業等の労働災害増加傾向

Q.小売業等で労働災害が増加していると聞きました。どのようなケースでしょうか?また、労働災害防止計画とは何ですか?

小売業を営んでいます。労働災害は製造業や建設業で多く発生しているイメージがあり、弊社にはあまり関係のないことと受け止めていました。ところが、昨今、小売業等で労働災害が増加していると聞き、意識を改める必要性を感じています。小売業等で増加している労働災害とは、具体的にどのような内容ですか?また、労働災害防止計画という言葉も耳にしました。どういうものですか?

A1.小売業等でも転倒による死傷者数が増加しています。

厚生労働省が公表した資料によれば、労働災害による死亡者数は全産業で減少に向かい、令和4年度は過去最少の774人でした。その一方で、休業4日以上の死傷災害は、建設業を除く全ての産業で増加傾向にあり、令和4年度の死傷者数は132,355人と、過去20年で最多となりました。なお、死亡者数、死傷者数とも、コロナウイルス感染症に起因するものを除いた数値です。

設問の小売業における死傷事故を類型別に見ると、「転倒」が全数の37%、「動作の反動・無理な動作」15%、全産業を通じて最も多い「墜落・転落」は10.9%、「交通事故(道路)」9%となっています。「転倒」による死傷者数は、全産業で増加傾向です。とりわけ小売業の場合、転倒災害の被災リスクが高いとされる50歳以上の女性が雇用者に占める割合が26%と、全産業平均18.2%に比して高いことが、死傷者数の押上げ要因となっているものと推定されます。

これらの結果等を踏まえて、令和5年4月から取組を進めている第14次労働災害防止計画においては、中高年齢の女性労働者に対して、転倒災害の発生が多い状況や、それを防止するためのチェックリストについて周知に努めること等が盛り込まれています。

A2.労働災害防止計画は、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項等を定めた中期計画です。5年毎に見直しを行い、新たな計画を策定しています。

労働災害防止計画は、労働災害を減少させるために、国・事業者・労働者等の関係者が重点的に取り組む事項等を定めた中期計画です。安全衛生活動を推進する際の実施事項や目標等が示されています。1958年に初めて策定されましたが、その背景には戦後の高度成長期における産業災害や職業性疾病の急増がありました。その後、社会経済情勢や技術革新、働き方の変化等、その時々の課題に対応しながら5年毎に見直しを行ってきました。第1次から現在の第14次計画に至るまで、関係者が協働して取組を推進してきたことにより、わが国の労働現場における安全衛生の水準は大幅に改善され、労働災害の減少に貢献しています。

第13次の計画期間にあたる令和4年度の労働災害発生状況を見ると、死亡者数774人は計画目標である2017年比15%減を上回る20%減でした。一方、休業4日以上の死傷者数132,355人は、5%減の目標とはほど遠い9.9%増という結果でした。

 

【第13次労働災害防止計画の目標及び達成率】

目標及び《達成率》
死亡者数15%以上減少(2017年比で令和4年までに。以下同じ)

《20%減少》

重点とする次の業種について死亡者数15%以上減少

《建設業13%減少》

《製造業12.5%減少》

《林業30%減少》

休業4日以上の死傷災害5%以上減少

《9.9%増加》

重点とする次の業種について休業4日以上の死傷災害5%以上減少

《陸上貨物運送業12.7%増》

《小売業18.2%増》

《社会福祉施設46.3%増》

《飲食業12.3%増》