育児・介護休業法の改正

男性の育児休業取得を促す育児・介護休業法改正がありました

近年、世界的な喫緊の課題といえば新型コロナウイルス感染症対策ですが、わが国におけるそれと同等か又は更に深刻な課題として、少子高齢問題が挙げられます。本年6月に厚生労働省が公表した2020年の人口動態統計によれば、合計特殊出生率は1.34と前年の1.36より低下。出生数は840,832人と過去最少レベルです。バランスの取れた人口構造は、社会保険労働制度の基盤です。子を産みやすい・子育てしやすい環境づくりが一層強く求められています。

そうした中で、先日、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育介法」と言います。)が改正されました。主なポイントは次の4つです。

(1)男性の育児休業取得を促進するため、出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みを新設(育介法第9条の2)

原則として休業の2週間前までに事業主に申し出ることによって、子の出生の日から8週間を経過する日の翌日までに4週間以内の期間を定めて取得できます。この休暇は、2回まで分割して取得することができます。休業期間中は、雇用保険から出生時育児休業給付金が支給されます。また、これまで休業中の労働者を労働させることはできませんでした。労使協定を締結している場合に限り、この制度に基づいて休業中の労働者が合意した範囲で、労働させることが可能になります。今後厚生労働省令(以下、単に「省令」と言います。)によって就業可能日の上限等を定めるとしています。

なお、条文中「男性に限る」旨の文言はありません。しかし、女性は、労働基準法の定めるところにより、産後8週間(本人申出により6週間とすることも可能)の産後休業を義務づけられていることから、男性を前提とする制度と解釈できます。公布後1年6か月以内の政令で定める日から施行されます。

(2)雇用環境の整備等(育介法第22条)

事業主は、労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境を整備するために、次のいずれかの措置を講じることを義務付けられます。

① 従業員に対する育児休業に関する研修の実施 ② 育児休業に関する相談体制の整備 ③ その他、今後省令で定める措置

また、事業主は、本人又は配偶者が妊娠・出産した旨を申し出た労働者に対して、面談での制度説明や書面による制度情報の提供など、今後省令で定める方法で個別の周知に努めるとともに、労働者が育児休業の取得を控えることがないような形で意向確認をすることを義務付けられます。令和4年4月1日から施行されます。

(3)育児休業((1)の新たな制度を除く。)を、2回まで分割して取得することを可能に(育介法第5条2項)

これまで育児休業は、原則として養育する子が1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)まで取得可能でしたが、分割して取得することは認められていませんでした。今回の改正により、2回に分割することが可能になりました。つまり、(1)で述べた新たな制度を合わせて、男性労働者は子の出生から8週間までに2回、1歳までに2回、計4回に分割して育児休業を取得できるようになります。公布後1年6か月以内の政令で定める日から施行されます。

(4)有期雇用労働者の取得要件の緩和(育介法第5条)

これまで、期間を定めて雇用される有期雇用労働者が、育児休業の取得を申し出るための条件の一つとして、1年以上雇用されていることがありました。今回の改正により、1年以上雇用されていなくても、養育する子が1歳6か月に達する日以降も引き続き雇用されることが明らかであれば、申し出ることが可能になります。令和4年4月1日から施行されます。

以上の4点に加えて、従業員1,000人以上の企業においては、育児休業等の取得の状況の公表が義務になります。公表内容は、今後省令で定めることとしており、令和5年4月1日から施行されます。