健康保険の傷病手当金Q&A

Q.会社は、休日(業務外)にけがをして欠勤している社員に対し賃金の補償を行う必要がありますか?

社員が日曜日に友人とテニスをして、アキレス腱を断裂しました。病院で診察を受けた結果、全治1か月、2週間の入院治療が必要と診断され、しばらくの間会社を休むことになりました。社員が休日にけがをして休んだ場合でも、会社には賃金を補償する義務はありますか?

A.会社には、賃金等を補償する義務はありません。

労働者が業務上の病気やけがが原因で治療や休業をした場合は、事業主が労働者の治療費及び休業中の賃金を補償しなければなりません。ただし、実務上は、労働者が、事業主が加入している国の労災保険に請求をし、労災保険から補償を受けることがほとんどです。

一方、休日や業務以外に起きた病気やけがに対する治療費や賃金の補償は、事業主に義務づけられてせん。したがって、労働者が業務以外で病気やけがの療養のため、長期休業をすることになった場合には、賃金が喪失または減少することになります。

そのような事態が発生したとき、健康保険には被保険者の所得を保障するための制度があります。賃金の補てんを目的に給付される「傷病手当金」です。傷病手当金についてご説明しましょう。

傷病手当金の給付を受ける条件はなんですか?

傷病手当金は、次の4つの条件に該当した場合に給付を受けることができます。

(1)業務外の病気やけがの療養のため休んでいること。

(2)今までの労務に就けない状態であること。

(3)待期(法令上、「待機」ではなくこの字を使います)期間が完成していること。

(4)健康保険の被保険者であること。

待期期間とはなんですか?

待期期間とは、けがや病気のため労務に就けない状態にある日のことを言い、その日が連続して3日間になると待期期間が完成します。例えば、連続して2日間休んだ後、3日目に出社して労務に就けば、待期期間は完成しなかったことになります。

待期期間は、その期間が有給か無給かを問わず、祝日や休日も含みます。つまり、休日にけがをしてその日に医師の診察をうければ、休日でも待期期間の1日目になります。

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(出所:協会けんぽホームページ)

傷病手当金はいつから、いくら支給されますか?

傷病手当金は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額が、休業4日目から支給されます。標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する額です。また、給与の支払があって、その給与が傷病手当金の額より少ない場合は、傷病手当金と給与の差額が支給されます。

いつまでもらえますか?

傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月です。これは、1年6ヵ月分支給されるということではありません。1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やけがにより仕事に就けなくなった場合、復帰期間は1年6ヵ月に算入されます。また、支給開始後1年6ヵ月を超えた場合は、依然として仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金2.jpg

(出所:協会けんぽホームページ)

手続の方法を教ええてください

事業場を管轄する全国健康保険協会支部(協会けんぽ)または加入している健康保険組合に、「健康保険傷病手当金支給申請書」を提出します。申請書には、医師の証明と署名・押印が必要です。

また、初回申請分には休業した期間を含む賃金計算期間とその期間前1カ月分の賃金台帳と出勤簿の写しを添付しなければなりません。