労働条件通知書の交付義務

Q.労働契約書の交付を忘れると、契約無効になりますか?

急な退職者がありましたが、幸いにもすぐに新しい従業員が見つかり、仕事を引き継いでもらえました。ところが、2か月を過ぎた今になって、労働契約書を交付していないことに気が付きました。今のところ、本人からも特に要求はありません。この場合、労働契約は無効になりますか?

 

A.労働契約は有効ですが、労働基準法違反にあたります

 

労働者を採用する際、言い換えれば労働契約の締結にあたり、労働契約書(書面)の有無は労働契約の成立自体に影響ありません。したがって、口頭であっても労働契約は成立します。しかし、入社後や退職時など後日になって、労使当時者間の労働条件をめぐる認識のズレがあると、「話が違う」として、往々にしてトラブルとなり得ます。

そこで、労働基準法は、労働契約の締結時に使用者が労働者に対し、労働時間や賃金など一定の重要な労働条件を書面で明示することを義務づけています(労働基準法第15条第1項)

 

 書面で明示しなければならない労働条件は?

書面での明示が義務づけられている労働条件は次の5項目です。

なお、ファクシミリやメールによる交付は認められません。

(1)いつからいつまで(期間)

労働契約の期間に関する事項

(2)どこでなにを(場所と内容)

就業の場所・従事する業務の内容に関する事項

(3)何時から何時まで(労働時間と休み)

始業・終業時刻、所定外労働の有無、休憩時間・休日・休暇、交替勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

(4)いくらで

賃金の決定・計算・支払いの方法。賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

(5)退職に関する事項(解雇の自由を含む)

 

また、パートタイマーについては、その他、①昇給の有無、②退職手当の有無、③賞与の有無を明示することが義務づけられています。(パート労働法第6条)これらの3つは、本人が希望すれば、ファクシミリやメールで明示することも認められています。

労働条件の明示義務に違反すると?

労働契約の締結時に、労働基準法で義務づけられる労働条件を明示していない場合、同法違反として30万円以下の罰金の対象となり得ます。ただし、先に説明したとおり、労働契約の効力に影響はありません。

忘れてしまったことは、いまさら仕方がありません。今後のトラブルを回避するためにも、直ちに労働条件を書面で明示し、労働者に交付しましょう。