解雇予告期間中、業務災害が生じた場合の解雇日

Q.解雇予告期間中、業務災害が生じた場合、解雇日を変更する必要はありますか?

製造業を営んでいます。先日、ある従業員が、不注意から機械の操作を誤り、大量の不良品を発生させてしまいました。当社の就業規則には懲戒解雇の規定がないので、1221日に解雇予告を行い、翌年121日付で解雇することとしました。ところが、118日、この従業員が機械に接触して受傷する業務災害が発生しました。療養に1か月以上を要し、出勤可能となるのは早くても31日との診断です。このような場合、既に解雇予告を行った後であっても、解雇日を変更する必要はありますか?また、変更する必要があれば、具体的にはどうするべきでしょうか?

 

A.解雇予告後であっても、業務災害により休業する期間及びその後30日間は「解雇制限期間」となります

懲戒解雇であれば、処分が告知された時点で即時に効力を発揮し、猶予期間等を設ける必要もありません。しかし、設問のように、懲戒解雇について就業規則等で定めていなければ、処分は行えないとされます。これは、懲戒が企業組織内の秩序保持義務違反に対する制裁罰であることにかんがみ、刑法における罪刑法定主義の考え方を準用するものと捉えることができます。

 

さて、通常の解雇であれば、労働基準法(以下「同法」と言います。)第20条に定めるとおり、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。予告期間は、民法の一般原則に則り、予告日の翌日より起算して暦日30日を満了するまでで、その翌日が解雇の効力発生日にあたります。要するに、予告日から解雇日までの間に中30日を設ける必要があり、暦日ですから、休日や休業日を除く必要はありません。

一方、同法第19条は「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(中略)は、解雇してはならない。」と定めているので、この設問は、同法第20条と第19条が競合した場合の考え方を問うものと言えます。

 

結論から言うと、その場合は第19条が優先され、既に解雇予告を行った後で、その予告期間が満了に近づいていたとしても、それらは一切考慮されないこととなります。

 

設問の場合であれば、業務災害が発生した118日からその療養のために休業した期間、及び出勤するか又は出勤可能な状態となった日から起算して暦日30日を満了するまでの期間は、解雇制限期間として解雇を行うことはできません。なお、「療養」とは治癒(症状固定)であり、同法及び労働災害保険法上の療養・休業補償の対象と同じです。治癒後の通院等があっても、その分を延長する必要はありません。

 

それでは、仮に、業務災害にあった労働者が、 期間の定めのある労働契約を締結している者であって、療養期間中に契約期間が満了した場合はどうでしょう?

その場合、期間満了による労働契約の終了(雇止め)は解雇にあたらないため、解雇制限期間は適用されません。したがって、仮に療養期間中であっても、満了に伴い自然に契約終了することとなります。