法改正の動き

労働基準法の改正により賃金請求権の消滅時効期間が5年に延長される見通しです

民法の一部を改正する法律(以下「改正民法」と言います。)が、令和241日から施行されることに伴い、施行日以降の契約に基づく債権の消滅時効期間は原則5年に統一されます。旧民法の債権消滅時効は契約ごとに異なり、使用人の賃金請求債権の消滅時効は1年で、労働基準法は労働者の権利保護の観点から、賃金請求債権の消滅時効期間を2年に延長する例外的取扱いを定めていました。しかし、改正民法の施行により、このままでは労働基準法が民法を下回る逆転が生じてしまいます。そこで、賃金請求債権の消滅時効期間を改正民法と合わせて5年に延長するとともに、当分の間経過措置を講ずることが、今国会で審議されています。仮に成立したとすれば、令和241日から、賃金請求権の消滅時効期間、割増賃金未払い等に係る付加金の請求期間、退職手当請求権の消滅時効期間、賃金台帳等の書類保存義務は、いずれも5年となります。ただし審議中の法案は、使用者への影響を考慮し、退職手当請求権を除き、当分の間、消滅時効期間を3年としています。

高年齢者雇用安定法の改正が見込まれています

現在、高年齢者雇用安定法に定める高年齢者雇用として、事業主は65歳までの雇用確保を義務付けられています。しかし、今後は70歳までの雇用を求められることが見込まれます。現在審議中の法改正が成立した場合、令和3年4月以降、65歳から70歳までの高年齢者の就業確保措置として、①定年引上げ ②継続雇用制度の導入 ③定年廃止 ④労使で同意した上での雇用以外の措置の導入(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度) のいずれかを講ずることが努力義務とされます。これらは、近い将来に義務規定となるものと考えるべきでしょう。

 

雇用保険法等の一部を改正する法案も成立の見通しです

また、雇用保険法の改正も次のとおり見込まれています。

現在、60歳時に比べて賃金が75%未満に低下した被保険者には、本人の請求により、65歳を限度として、高年齢雇用継続給付金が支給されています。高年齢者雇用安定法が求める70歳までの高齢者雇用を後押しする観点から、令和7年度からこれらの給付は縮小されます。

一方、令和3年4月から65歳から70歳までの高年齢就業者確保措置の導入に対する支援を雇用安定事業に位置付けることが検討されています。具体的には、措置を講じた事業主への助成金支給となることが見込まれています。

こうした一連の動きに合わせ、令和2年4月1日から高年齢者への雇用保険料の免除が廃止されます。給与計算の際、注意が必要です。