最低賃金の改正、改正労働者災害保険法

最低賃金が改正されます

首都圏における新たな最低賃金と引き上げ額は次のとおりです。

都道府県名

最低賃金(引き上げ額)

発効年月日

千葉県

925円(2円)

令和2年10月1日

東京都

1,013円(0円)

埼玉県

928円(2円)

神奈川県

1,012円(1円)

最低賃金法が施行されたのは、昭和34年(1959年)4月1日のことです。法律に基づいて賃金の最低限度額を定め、労働者に対し、その額以上の賃金支払を使用者に義務付ける制度です。仮に、労働者、使用者双方の合意の下に、最低賃金より低い賃金を定めても無効であって、使用者は最低賃金との差額を支払わなければなりません。民法に定める契約自由の原則の例外であり、強行法規又は強行規定と呼ばれるものです。違反した場合、最低賃金法により50万円以下、及び労働基準法により30万円以下の罰金を課せられることがあります。

最低賃金は、国の中央最低賃金審議会が示す引き上げ額を目安に、都道府県の地方最低賃金審議会から地域の実情を踏まえた審議・答申を得、異議申出に関する手続を経て、厚生労働省都道府県労働局長が決定します。国・地方とも、審議会は公益代表・労働者代表・使用者代表、それぞれ同数の委員により構成されます。

安倍首相の「全国平均1,000円の最低賃金を目指す」との方針の下、近年は3%前後の引き上げが続いていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響による雇用・経済の厳しい状況に鑑み、今年度、中央最低賃金審議会は目安を示さず、地方審議会に判断を委ねました。その結果、引き上げ額は1円~3円と、リーマンショック後の平成21年以来の低水準となっています。北海道、東京都、岐阜、京都、大阪、広島、山口の7都道府県が引き上げを見送った反面、若年層の流出を防ぐ観点等から、東北や山陰、四国、九州の各県が2円~3円引き上げているのが注目されます。また、改定後の最低賃金の全国平均は902円と、1円のアップにとどまりました。

最低賃金を満たしているか確認する方法を、千葉県を例に示します。

〇 正社員(週40時間勤務)の1カ月の給与=基本給+手当

これが、163,818円(925円×177.1時間)を下回っていると、最低賃金を満たしていない可能性があります。なお、計算の際には、次の手当は含まれないことにもご注意ください。

(1)精皆勤手当 (2)通勤手当 (3)家族手当

(4)時間外、休日労働の割増賃金、及び深夜労働手当

 

労働者災害保険法が改正されました(令和2年9月1日施行

近年、政府は、労働者の副業・兼業を促しています。年々増加傾向にある副業・兼業に従事する労働者の労災補償を手厚くする観点から、労働者災害保険法(以下、「同法」と言います。)の改正が行われました。

同法第1条において、副業等に従事する労働者を、「事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(『複数事業労働者』)」と定義づけ、それらの業務上及び通勤途上の被災を対象として、複数事業労働者(以下、単に「同」と言います。)療養給付、同休業給付、同障害給付、同遺族給付、同葬祭給付、同傷病年金、同介護給付の各制度を新たに設けました。

改正の重要なポイントとして、保険給付額の算定方法の見直しが挙げられます。これまで、二以上の事業に使用される労働者が、労災により給付を受ける際の補償額は、被災事業のみの賃金をベースに算定していました。改正後は、被災事業と非被災事業、それぞれの賃金額を合算して算定します。仮に三の事業に従事する労働者であれば、三の事業それぞれの賃金額を合算します。

こうしたことから、二以上の事業に使用される労働者が労災給付の申請を行う場合、事業主の証明は被災事業場が、平均賃金算定内訳は使用している事業場それぞれが作成することとなります。