退職者の傷病手当金

Q.休職期間が満了し退職する社員がおります。傷病手当の受給期間はいつまでですか

弊社は、就業規則において私傷病による休職制度を定め、休職期間は1年間。その間は、賃金8割支給としています。現在、メンタル不調で休職中の従業員がいますが、休職期間満了日までに復職の見込みが立たず、自然退職となると思われます。退職にあたり、その後の補償となる傷病手当金について説明したいと考えました。傷病手当金は、支給開始日から通算1年6か月受給できるとありますが、起算日は退職日の翌日か、あるいは休職開始日のどちらですか?また、その他、本人に伝えるべきことがあればご教示ください。

A.傷病手当金の起算日は、傷病手当金を受給した初日です。また、雇用保険の受給延長や退職後の年金・健康保険についてもお知らせした方がより親切でしょう

傷病手当金は、病気休業中の被保険者及びその家族の生活を保障する制度です。病気やけがのため会社を休み、事業主から十分な報酬が受け取れない場合、被保険者の請求に基づき保険者が支給します。昨今はコロナ感染症により、本制度の利用事例が増加しています。傷病手当金受給の要件、支給金額、支給開始日並びに支給期間は次のとおりです。

(1)要件; ① 私傷病により働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日あること(3日には土日・祝日や有休による欠勤を含む)

② 休んだ期間について、事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けていないこと

(2)支給金額: 一日当たり、支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

(3)支給開始日: 会社を休んだ日が連続して3日を満たした日の翌日から支給

(4)支給期間: 傷病手当金を受けた初日から通算1年6か月

さて、設問についてです。従業員は、会社の休職制度に基づき、休職中も賃金を受給していました。したがって、前記(1)②の要件を満たさないので、傷病手当金は支給されません。そうすると、受給開始は退職日の翌日以降となります。また、「通算1年6か月受給」の起算日は実際に支給があった日です。言い換えると、退職し報酬の支給がなくなった日の翌日から通算1年6か月受給できます。

ところで、退職者の傷病手当金受給については、特に注意が必要です。(1)①の退職日前、3日連続で会社を休んでいることがポイントです。仮に、休職中の従業員が、退職日に諸手続のため会社に赴き、それを出勤とカウントされると、連続3日の休みが成立せず、受給資格を失います。現実には、挨拶や私物整理のために出社するのが通例と考えられますが、その場合も勤務管理上は休職措置のまま退職したという取扱いにすることが肝心です。

一方、退職者が傷病手当金を請求するには、被保険者期間、すなわち就業期間が1年以上あることが要件となります。

この他、従業員に伝えれば、より親切と思われることを掲げます。

〇 退職後の求職期間中、雇用保険から求職者給付(失業手当)を受給できます。受給可能期間は、原則として離職翌日から1年間。ただし、病気のため就労困難な状態が30日以上続いた場合、受給期間延長の手続をすれば最大4年間まで延長できます。住居地を管轄するハローワークに申請します。

〇 健康保険は、退職後2年間に限り、在職時の被保険者資格を任意継続できます。在職中、健康保険料は事業主との折半ですが、任意継続の場合、全額自己負担です。それでも、国民健康保険と比較すれば、保険料が安くなる可能性があるので、保険料を比較して選択するように伝えた方が親切でしょう。

任継継続申請は、必ず退職後20日以内に届け出る必要があります。協会けんぽの場合、任意継続は住所地の協会けんぽ、傷病手当金は在職時の協会けんぽに届け出ます。

〇 年金保険料です。退職後は、国民年金(60歳未満)の加入手続が必要。仮に、支払困難な場合、免除制度も伝えましょう。