採用後間もない社員への解雇予告手当
Q.採用後間もない社員を服務規律違反で解雇するとき、解雇予告手当は必要ですか?
当社は、新規採用者について、入社後3か月間は試用期間としています。一方、中途採用者は、前職での実績等を考慮した上で、試用期間を設けない場合もあります。
この度、試用期間を設けずに採用した社員が、入社早々に遅刻を繰り返しました。過去にそうした事例はなく、今後とも何らかのトラブルを発生させるのではないかと懸念されたため、入社から一週間後に即日解雇しました。
この場合、解雇予告手当は必要ですか?
A.解雇予告手当を支払う必要があります。
労働基準法第20条は、「使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と定めています。
つまり、従業員を解雇する場合、30日前までに解雇の予告をすることが原則です。予告が30日前までに間に合わなかったときは、代償として、間に合わなかった日数分の解雇予告手当を支払いなさい、という趣旨です。したがって、労働者を即日解雇する場合は、平均賃金の30日分を解雇予告手当として支払わなければなりません。
一方、次の人には、解雇予告手当を支払うことなく即日解雇ができるとされています。
(解雇予告の除外)労働基準法第21条
① 日日雇入れられる者
② 2箇月以内の期間を定めて使用される者
③ 季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
④ 試の試用期間中の者
つまり、有期契約で雇用期間の短い人、及び試用期間中の人については、即日解雇する場合であっても、解雇予告手当の支払いは必要ありません。
言い換えれば、解雇予告手当支払の要不要は、その社員が上記の①~④に該当する者がどうか次第ということになります。
さて設問の場合ですが、当該社員には試用期間がありませんでした。したがって、解雇予告の支払除外者に該当しません。
試用期間を設けなかったばかりに、1週間しか勤務していない社員に別途30日分のお金を払わなければなりません。なんとも不合理なようにも思えますが、法令上仕方がありません。
試用期間中であれば、解雇予告手当の支払いは不要ですか?
それでは、試用期間中の社員であれば、いつの時点で解雇しても、解雇の予告及び解雇予告手当の支払は必要ないのでしょうか?
労働基準法第21条(解雇予告の除外)第1項のただし書は、「解雇予告の除外は、試しの試用期間中の者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては適用しない。」と定めています。すなわち、試用期間が2週間を過ぎた時から、解雇の予告及び解雇手当の支払が必要になります。
こうしたことから、企業側としては次のような防衛策を講じておくべきでしょう。
(1)新規採用者には、必ず試用期間を設けること
(2)試用期間中の者を解雇する場合は、必ず採用後2週間以内に行うこと