キャリアアップ助成金・正社員化コース
Q.インターネットで「キャリアアップ助成金」を知りました。この制度を活用して、パート社員を正社員へ転換したいと思います。具体的な手続や注意事項等のご教示をお願いします
ドッグランとカフェを併設した事業を営んでいます。正社員1名に加えて、この4月からパート社員1名を採用しました。給与体系はどちらも時給で、賞与はありません。社員が少ないので、就業規則は作成していません。ところで、インターネットでパート社員を正社員に転換すると助成金がもらえることを知りました。額が結構大きいので、この制度を利用して、正社員へ転換したいと考えています。具体的な手続や注意点等を教えてください。
A.転換を実施する前に、予め「キャリアアップ計画書」を作成して提出する必要があります。また、就業規則を整備する必要があること等にも注意してください
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者など、いわゆる非正規社員のキャリアアップを促進するため、正社員への転換や処遇改善の取組を実施した事業主を助成するものです。非正規雇用労働者を正社員へ転換した事業主に対しては、「キャリアアップ助成金・正社員化コース」があります。人手不足の中、優秀な人材を確保したいという事業主のニーズは大きいことから、様々な助成金の中でも、活用率は高いという印象です。
この助成金を活用するとき、最も肝心なのは、転換を実施する前日までに「キャリアアップ計画書」を作成して、厚生労働省の都道府県労働局か又はハローワークへ提出することです。次に、就業規則を整備して、その中に正社員への転換に関する規定を盛り込む必要があります。具体的には、転換制度の対象とする従業員の要件、例えば勤務期間や、転換するに当たっての面接や試験など社内手続、転換を実施する時期等に関する規定です。これらの規定がないと、助成金は支給されないので、漏れのないようにしましょう。
令和4年10月1日から、本助成金の対象となる正社員及び非正規社員の定義が一部変更されたことにも注意が必要です。正社員の定義として、それまでの「同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用される労働者」に「ただし、賞与又は退職金制度、かつ昇給が適用されている者に限る」と付記されました。つまり、正社員であっても、賞与又は退職金制度が適用され、かつ、昇給が実施されないと、本助成金の対象となりません。一方、非正規社員の定義については、それまでの「6か月以上雇用している有期又は無期雇用労働者」から「賃金の額又は計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等の適用を6か月以上受けて雇用している有期又は無期雇用労働者」に変更されました。正社員及び非正規社員について、それぞれ就業規則が作成され、それらは内容が異なるものであるとともに、非正規社員の就業規則は6か月以上運用されていなければなりません。法令上、就業規則の作成・届出の義務を負うのは常時10名以上の従業員を使用する事業場で、設問のケースは作成していないとのことです。本助成金を活用することを目的として、敢えて就業規則の作成・届出を行い、また、現在はないという賞与を支給するのは、かなりハードルが高いように思います。
令和6年度から「キャリアアップ助成金・正社員化コース」の支給額は大幅に拡充されました。しかしながら、制度が厳格化された結果、不支給の事例が目に付く状況です。改めて現在の制度内容を取りまとめると、次のとおりです。
(1)主な支給要件
①賃金の額又は計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等の適用を6か月以上受けている非正規社員を正社員にしたこと
②正社員については、昇給を実施し、賞与又は退職金の支給対象になっていること
③正社員転換前後の6か月間の総賃金を比較して転換後3%以上賃金が上昇していること
(2)中小企業に対する支給額
①有期雇用労働者を正社員に転換:80万円(40万円×2期)
②無期雇用労働者を正社員に転換:40万円(20万円×2期)