慶弔休暇の法令上の位置付け

Q.従業員に対し、慶弔休暇は与える義務はありますか?あるとすれば何日か、また、注意点等はありますか?

従業員6名の会社です。先日、従業員の一人が父親の葬儀等のために年次有給休暇を取得しました。これまで事例がなかったので意識していませんでしたが、事業主に従業員に対し慶弔休暇を与える義務はありますか?あるとすれば、日数や注意点等をご教示ください。

A.慶弔休暇は法令上の義務付けはなく、事業主の裁量次第です

従業員に与える休暇には、事業主に対し法令に基づいて付与を義務付けているものと、事業主の裁量により任意で与えるものとがあります。法令上の義務付けがある休暇は次のとおりです。

(1)年次有給休暇(労働基準法第39条)

(2)子の看護休暇(育児介護休業法第16条の2)

(3)介護休暇(育児介護休業法第16条の5)

したがって、慶弔休暇は法令上付与すべき休暇に当たらず、事業主の裁量に委ねられています。

一般財団法人労務行政研究所は、令和6年4月~6月、全国証券市場の上場企業及び上場企業に匹敵する非上場企業の合計5124社を対象に実態調査を行いました。それによると、代表的な慶弔休暇といえる結婚休暇及び忌引休暇について、制度があると回答した企業は99.7%でした。つまり、ほぼ全ての企業は慶弔休暇制度を設けています。この調査の対象は、主として大企業でしたが、中小零細企業でも制度を設けている事業場は少なくないと考えられます。また、就業規則等の位置付けはないものの、慶弔時の休暇を得ることは、社会通念上当然のことと認知されていると思います。

今後新たに慶弔休暇制度を導入するとして、その際の規定の仕方等の注意点等を、前述の調査結果を参考に示します。

① 付与日数は、歴日とするか労働日とするか

② 付与日数は、何日とするか

③ 有給とするか無給とするか

④ 起算日や取得期間等の取決めについて

以下、それぞれについてのポイントです。

① 慶弔休暇を付与するにあたって、日数のカウントの判断に迷うことがあります。日数の付与単位は暦日か、それとも労働日か、明確にしておくことが大切です。仮に、5日間の慶弔休暇として、暦日付与では間に休日があると、それらの休日は休暇5日間に含めてカウントします。一方、労働日付与では、休日はカウントしません。休暇+休日となるので、従業員にとっては暦日付与と比較して連続した休みの取得が可能です。因みに調査結果によれば、付与単位を暦日としている企業26.7%に対して、労働日としている企業66.4%でした。

② 調査結果によれば、結婚休暇の平均付与日数は、本人の場合(5.2労働日、暦日5.7日)、子どもの場合(労働日・暦日とも1.8日)でした。また、忌引休暇は、死亡者が配偶者(5.6労働日、7暦日)、同子ども(5.4労働日、7暦日)、同父母(5.5労働日、7暦日)。また、喪主・非喪主により付与日数を区別している企業では、喪主(5.8労働日、暦日6.2日)、非喪主(3.9労働日、4.1暦日)となっています。

③ 調査結果によれば、95.5%の企業が「慶弔休暇は全て有給」

④ 調査結果によれば、結婚休暇の起算日や取得期限を定めている企業は59.4%。そのうち起算日は入籍日(54.5%)、挙式日(2.8%)、入籍日又は挙式当日(31.5%)。また、取得期限は1年以内(61.2%)が最も多い一方、10日以内(3.4%)との結果でした。また、今回調査の対象ではありませんが、企業によっては、入社後一定以上の期間勤務している社員を慶弔休暇の対象とする旨の規定を設けている事例があります。

これらの他に留意すべき点として、「短時間労働者及び有期労働者の雇用管理の改善等に関する法律」は、正社員との不合理な待遇並びに差別的な取扱いを禁止しています。慶弔休暇を設ける場合も、それを念頭に制度設計することが大切です。また、今後は、同性婚や事実婚等への対応を求められること等も考えられます。