時間外労働・休日労働に関する労使協定(1)

Q.残業をさせるには、労働基準監督署長への届出が必要ですか?

私はデザイン事務所を経営し、各種印刷物のデザイン・製作やホームページの製作等を行っています。これまで家内と2人で事務所を切り回していましたが、

このところ得意先も増え注文等も多くなったので、従業員を1人雇いました。勤務は10時から19時(休憩1時間)で、ときどき残業してもらうことがあります。

先日、知人から、従業員に残業させるには労働基準監督署長への届出が必要と聞きました。

従業員は1人しかいないのに、必要ですか?

また、必要な場合、どんな届出をすればよいですか?

A.法定労働時間を超えて労働させる場合は、届出が必要です

先ずは、労働時間、残業時間とはそもそも何か、確認しましょう。

法律は「使用者は、労働者に休憩時間を除いて1週について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならない。」と定め(労働基準法第32条)、

限度時間の1週40時間及び1日8時間を法定労働時間(特例対象事業場※注は1週44時間)といいます。

一方、質問に「勤務は10時から19時(休憩1時間)」とありますが、これを所定労働時間といい、法定労働時間をはじめ法律に違反しない限りにおいて、使用者がそれぞれ定めることができます。

法定労働時間は、一部の事業を除き、原則として全ての事業に適用され、それを超えて労働させたとき、その分が残業時間となり、残業させる場合は労働基準監督署長(以下「労基署長」といいます)

への届出が必要です。届出を行わず労働(残業)させた場合、使用者は6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられるときがあります。

届出の内容は?

質問のように従業員が1人しかいなくても、届出を怠ることはできません。また、届出の内容は、次の2つです。

(1)労使協定(労働基準法第36条に定めていることから、36(サブロク)協定と通称しています)を結び、協定書を作成すること

(2)管轄の労基署長に時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号)を提出すること

ただし、(2)の協定届(様式第9号)に労働者側が署名捺印していれば、それは(1)の労使協定書を兼ねるものとして、別途協定書を作成する必要はありません。

なお、届出とは別に、雇用契約、就業規則等において時間外労働・休日労働残業についてきちんと定めておく必要があります。

(1)の労使協定は誰と、また、何について結ぶの?

労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と使用者とが書面(労使協定書)により協定を結びます。この場合、「労働者」とは管理監督者を含む全ての労働者である、とされていますが、派遣労働者は除かれます。派遣労働者を残業させる場合は、派遣元の労使協定に基づく必要があり、派遣先の労使協定を根拠として残業を命じることはできません。

また、協定に盛り込むべき内容は次のとおりです。

時間外又は休日労働をさせる必要のある

①具体的事由

②業務の種類

③労働者の数

④一日及び1日を超える一定の期間についての延長することができる時間と休日については日数

⑤協定の有効期間

※注:常時10人未満の労働者を使用する商業、保健衛生業及び接客娯楽業等