家族がインフルエンザに感染。社員に有給休暇を取得させてもいいですか?

Q.家族がインフルエンザに感染した職員を休業させるとき、有給休暇を取得させてもよいですか?

今年も、インフルエンザの流行が心配される季節になりました。

当社の従業員には、日頃からうがい・手洗いの励行、マスクの着用など感染の予防に努めさせており、今のところ感染者はいません。しかし、ある従業員の子供がインフルエンザに感染し、現在、自宅で療養中とのことです。万が一のことを考えて、従業員に数日間の休業を命じたところ、休業中の賃金について質問を受けました。

有給休暇を取得させても問題ないでしょうか?

 

A.使用者は、休業手当を支払う必要があり、有給休暇の取得を強制することはできません。

従業員自身がインフルエンザに罹患して出勤できないときと、感染の疑いのある従業員を使用者の判断によって休業させたときとでは、賃金の対応が異なります。本人が罹患し、医師の指示により出勤を見合わせた場合は、有給休暇を取らなければ欠勤扱いとなります。その場合、本来、使用者は賃金を支払う義務はありません。

一方、家族が罹患したなど感染者と濃厚に接触していても、本人にインフルエンザの症状がなければ職務の継続は可能です。職務の継続が可能な従業員を使用者の判断で休業させれば、それは「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。したがって、使用者は休業手当を支払う必要があります。(労働基準法第26条)

なお、新型インフルエンザや大規模な集団感染等のケース等で保健所の要請等により休業させる場合は、一般的な「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しないとして、休業手当の支払義務は生じないとされています。

有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものです。設問のように、使用者が一方的に取得を強制することはできません。

 

休業手当の計算の仕方を教えてください。

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない(労働基準法第26条)」とされています。平均賃金は、月給者の場合、休業した日の直前の賃金締切日から前3箇月間に支払われた賃金の総額をその期間の総日数(暦日)で割りかえして計算します。

 

《計算例》1月に入って休業。賃金締切日は月末。

(1)前3箇月間の賃金総額=676,300円

①12月31日に締めた賃金…225,600円

②11月30日に締めた賃金…201,800円

③10月31日に締めた賃金…248,900円

(2)総日数(暦日)=92日

①12月…31日

②11月…30日

③10月…31日

 

平均賃金=676,300円÷92日=7351.08円(小数点第2位未満切り捨て)

休業手当(1日当たり)=7351.08円×0.6=4.411円(1円未満四捨五入