ベースアップと昇給の違い等
Q. 昇給とベースアップとの違いは何ですか?また、新卒社員を募集する際、初任給の相場を知るにはどうすればよいですか?
起業して数年です。社員は、全員、私が他社から引き抜いてきた者です。賃金はそれぞれの前職を超える額となるよう設定し、昇給も毎年度実施しています。ところで、春になるとベースアップが報道等で話題となります。昇給とどう違うのでしょうか?
また、今後、新規学卒社員を募集したいと考えていますが、初任給の設定が悩みです。参考となるデータを教えてください。
A. 昇給は、原則として、既定の給料表に基づいて行われます。一方、ベースアップは基本給を一律に引き上げ、給料表自体を改定することです。
企業各社の昇給やベースアップは、春季労使交渉(春闘)の主要テーマとして、毎年、大きなニュースとなります。このため、言葉としては広く知られていますが、改めてこの二つの違いを問われると、正しく答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか?
さて、昇給、ベースアップのいずれも給料が上がる点は同じです。昇給は、文字どおりに給料が引上げられることです。昇給の基準は、勤続年数や個人又は企業の業績評価に応じて等々、企業毎に様々です。原則として、予め定めてある給料表に基づいて行われますが、給料表がない場合もあります。
一方、ベースアップは、個々の社員の評価等に関わらず、物価や有効求人倍率など社会経済状況を踏まえて、基本給を一律に引き上げ、給料表自体を改定することです。仮に2%のベースアップを実施したとして、その場合の給料表の改定は、例えば次のようになります。
【令和4年給料表】
勤続年数 | 基本給(円) | |||
大卒男子 | 大卒女子 | 高卒男子 | 高卒女子 | |
1年 | 210,000 | 200,000 | 170,000 | 165,000 |
2〃 | 213,000 | 203,000 | 173,000 | 168,000 |
3〃 | 217,000 | 207,000 | 177,000 | 172,000 |
~ | ||||
20〃 | 306,000 | 300,000 | 250,000 | 230,000 |
【令和5年給料表(2%のベースアップを実施)】
勤続年数 | 基本給(円) | |||
大卒男子 | 大卒女子 | 高卒男子 | 高卒女子 | |
1年 | 214,200 | 204,000 | 173,400 | 168,300 |
2〃 | 217,260 | 207,060 | 176,460 | 171,360 |
3〃 | 221,340 | 211,140 | 108,540 | 175,440 |
~ | ||||
20〃 | 312,120 | 306,000 | 255,000 | 234,600 |
令和5年に2%のベースアップを実施した結果、全ての社員の基本給が一律2%引上げられました。このように、ベースアップとは給料表の改定です。したがって、給料表のない企業の場合、そもそもベースアップという考え方が成り立ちません。
例年8月、厚生労働省は、ベースアップを含めた賃上げ率の結果を公表しています。今年の賃上げ率は3%台が確実で、30年ぶりの高水準と見込まれます。また、ベースアップについても、前年度の0.4%から大きく伸びるものと思われます。
ところで、一度ベースアップすると、後日のベースダウンは労働条件の不利益変更にあたり、極めて困難です。そこで企業は、昇給幅の拡大や一時金の支払に対して、ベースアップにはより慎重となりがちです。
A.初任給の設定は、行政の資料が参考になります。
初任給(採用時給与)の設定は、難しい問題です。企業の基礎体力がベースになりますが、相場より低いと良い人材が集まりません。
賃金相場は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」が一つの参考になります。業種別・年齢別・学歴別・都道府県別など細かく集計されています。また、地方公共団体も、独自に調査をしています。千葉県HPは、毎月、「勤労統計調査地方調査結果」を公表しています。賃金を考える際の参考として、ご活用ください。