退職代行会社から届いた退職申出への対応

Q.従業員から退職代行会社を通じて退職申出がありました。初めてのことで対応に困っています。注意点を教えてください

従業員から、退職代行会社を経由して退職願が提出されました。弊社の就業規則は、自己都合退職の場合、1カ月前までに人事部長へ退職申出書を提出するよう定めていますが、退職願の日付は、退職予定日の2週間前でした。就業規則に則った申出とさせたいと考えますが、退職願を拒むことはできますか?そもそもこのようなことは初めてで、対応に苦慮しています。注意点等をご教示ください。

A.本人の意思であれば.申出を拒むことはできません。また、民法上、退職の申出から2週間を経過すると、その時点で雇用契約は終了します

本人に代わり退職意思を伝える退職代行サービスの利用件数が増加しているとの報道を、近年目にします。退職代行「モームリ」によれば、同社への依頼件数は、本年4月1日134件、大型連休明けの5月7日は256件でした。こうしたサービスを利用する主な理由として、退職を認めてもらえない、言い出しにくい、単に面倒臭い等が挙げられています。利用者のほとんどは、会社と直接接触せずに退職することが目的のため、ある日突然、業務引継等は一切行わないまま出社しなくなるというパターンが通例です。その結果、会社は手続やその後の業務継続等に苦慮することとなります。

ところで、そもそも第三者の申出は退職意思として有効なのでしょうか?結論から言うと、本人の意思であると確認できれば、第三者からの申出も有効です。就業規則との関係については、民法第627条第1項において、期間の定めのない場合、いつでも解約(退職)の申出を行うことができ、申出から2週間を経過すると雇用契約は終了する旨を定めています。したがって、就業規則に抵触していても退職は有効です。仮に、会社が就業規則違反にあたる退職によって損害を被った場合、賠償を求めることはできますが、損害額の立証等は困難なため、あまり現実的とは言えません。

退職を代行する方法又は依頼先としては、次の3つがあります。それぞれ法的権限が異なっていることに注意が必要です。

退職代行者(依頼先) 法的権限
弁護士 弁護士法に基づき、依頼人の代理として交渉が行える
労働組合 労働組合法に基づき、団体交渉が行える
民間の退職代行会社 依頼人の代理は行えず、依頼人の使者としての行為のみが行える

さて設問は、民間の退職代行会社から申出を受けたということです。その場合、弁護士や労働組合と異なり、代行会社は依頼者の代理行為は行えません。行えるのは、あくまでも使者として、本人に代わり意思を伝達することのみです。したがって、代行会社からの申出であれば、それが本人の意思か否かの確認が重要です。自署押印のある退職届及び印鑑証明書の提出を求め、退職が本人意思であることを確認します。また、代行会社の受任内容を示す委任状等も必要です。本人意思が確認できれば、具体的な退職手続に進みます。社員証や被服など会社の貸与物を返還させる一方、社内に私物が残っているときは引き取りを求めます。後日のトラブルを避けるため、第三者の立会いの下、本人に直接引き取らせることが望ましいのですが、難しい場合は、本人了解を得て着払いで返送します。その場合も、リストを作成して双方確認する、実物を写真に収める、など返送漏れ等がなかったことを証明できるようにします。なお、本人と連絡が取れないときは、私物の保管期限及び期限を過ぎた場合は廃棄する旨を、内容証明郵便で送れば良いでしょう。