年次有給休暇の前倒し付与等

Q.年次有給休暇を入社日に5日、6箇月経過後に残り5日を付与することに法的な問題はありませんか?

当社は、年次有給休暇(以下「有給」と言います。)の付与について、労働基準法(以下「同法」と言います。)に則り、入社して6箇月経過後に10日付与、その後は付与日から1年毎に勤続年数に応じ加算した日数を付与しています。近年、人材獲得競争が一層厳しさを増す中、社員から他社との差別化の一環として、入社後6箇月を待たずに、有給を入社日に5日、6箇月経過後に残り5日を付与してはどうかとの提案がありました。有給の前倒し付与や分割付与に、法的な問題はありませんか?また、仮に、違法にあたらないとして導入する場合、注意点等があればご教示ください。

A.有給を前倒しで付与すること等は違法にあたりません。ただし、前倒しで付与した日から1年経過後に新たな有給を付与しなければならないことに注意が必要です。

政府は、労働者一人当たりの平均有給取得率について、令和10年度までに70%を目指すとしています。取得率は年々上昇傾向で、令和5年度は過去最高の65.3%となりました。有給の制度を改めて確認すると、同法第39条において、次のとおり定めています。

(1)使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、継続又は分割した10労働日の有給を与えなければならない。

(2)その後は、最初の付与日から1年毎に全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、継続勤務年数に応じた有給を加算して付与しなければならない。

また、継続勤務年数に応じて加算する有給は、下表のとおりです。

6個月経過日から起算した継続勤務年数 加算する有給(労働日)
1 1
2 2
3 4
4 6
5 8
6~ 10

そこで、設問の答えを言うと、有給を前倒しで付与することに法的な問題はありません。同法は、使用者が遵守すべき最低の基準を定めるものです。使用者の規定がそれを下回れば違法であり無効ですが、上回っていれば違法にあたりません。さて、有給を前倒しで付与する場合、前倒しした期間は全て出勤したものとしてカウントします。例えば、入社3箇月後に5日、6箇月後に5日の有給を付与する場合、入社日から3箇月は全て出勤したものとされます。ただし、6個月後の付与にあたっては、特段の定めがない限り、同法に則り、入社後3箇月以降6箇月までの出勤日数が所定労働日の8割以上であることが要件となります。次に、有給の分割付与は、同法第39条の定め方から、可能であることは明白とされています。

有給の前倒し等を導入するときの注意点としては、次年度分の付与日は前倒しの付与日から1年を経過した日となることです。つまり、付与日を入社日に前倒ししたので、入社1年後に継続勤続年数に応じた1労働日を加算し、新たに有給11日(労働日)を付与することとなります。

労働新聞社によると、調査集計した会社のうち約3割が入社時に有給を付与しているとのことです。有給の前倒しが直ちに求人対策の強化につながるかは分かりません。しかし、早い段階で有給の権利を行使できれば、急に体調を崩したときや急用等に対応する上で、少なくとも労働者にとって安心材料の一つにはなるものと思われます。