年次有給休暇と出勤率の関係
Q.私傷病で長期欠勤した社員にも、新たに有給休暇を付与すべきでしょうか?
入社5年目の社員が、今年の10月1日に年次有給休暇付与の基準日を迎えます。この社員は現在、精神疾患による休職中で既に2ヶ月間欠勤している状況です。当社では、長期欠勤者の有給休暇の新たな付与について特に定めをしていません。この場合、基準日には新たに有給休暇を付与しなければなりませんか?
A.就業規則上、特例がなければ欠勤として処理し、新たに有給休暇を付与しなくても問題ありません。
労働基準法第39条において、「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」と定めています。付与する年次有給休暇は継続勤務年数1年ごとに増え、6年以上勤務した場合の法令に定める年次有給休暇は20労働日です。その後は、何年勤務しても増えません。また、年次有給休暇与の要件は、勤続年数に加えて、「全労働日の8割以上出勤」です。
なお、全労働日とは、会社の休日を除いた日、つまり、従業員が出勤すべき日です。仮に設問の会社の休日が土曜、日曜、祝日、年末年始(5日間)、夏季休暇(3日間)とした場合、全労働日は1年で238日(従業員の雇入れの日により若干異なります。)です。その内の8割出勤とは、言い換えれば欠勤2割未満ということです。上記の前提で言うと、欠勤日数の上限は47日です。
さて、従業員は既に2ヶ月間休職とのことですから、全労働日の2割以上の欠勤にあたり、年次有給休暇の付与要件を欠いています。したがって、会社としてこの従業員に対し新たな年次有給休暇を付与する法令上の義務はありません。
ただし、就業規則等において、「私傷病による欠勤期間は、年次有給休暇の出勤率の計算の際に出勤したものとみなす」等の規定があれば、その期間は、たとえば賃金の支払等の有無に関わらず、年次有給休暇の出勤率の計算上は出勤日とカウントします。
法令上、欠勤しても出勤したものと見なされる日はありますか?
法令上、欠勤(就労が全くなかった日)しても、年次有給休暇の出勤率の計算上は出勤日としてカウントすべき日は次のとおりです。
(1)業務上の疾病により療養の為、休業した期間
(2)育児・介護休業の期間
(3)産前・産後のために休業した期間
(4)無効な解雇期間
つまり、上記以外の欠勤は、年次有給休暇の出勤率の計算において出勤日として取り扱うか否かは事業主が任意に定めることができます。繰り返しますが、労働関係法令において私傷病による休職の取扱いは定めがないのと同様に、欠勤日の取扱いについても事業主に委ねられているのです。
こうしたことから、設問のケースのように私傷病による欠勤日の有給休暇の出勤率の計算上の取扱いについては、就業規則に特段の定めがない限り、欠勤日と計算して問題はありません。