年次有給休暇制度Q&A

Q弊社は、就業規則において私傷病による休職制度を定めています。現在休職中の従業員が、間もなく休職期間を満了して復職する予定です。ところで、使用者は、休職明けの従業員に対しても、年次有給休暇のうち年5日については、時季指定をして取得させなければならないのでしょうか?.病気休職から復職した従業員にも年次有給休暇5日を取得させなければなりませんか?

A.履行が可能な限り年に5日の年次有給休暇を取得させます
年次有給休暇制度(以下「有休」と言います。)は普及定着していますが、未だに問合せを受けたり誤った運用を目にしたりすることが少なくありません。そこで、有休について、改めて確認します。
先ず、年休を付与する要件は次の2つです。
(1)雇い入れの日から起算して6か月間継続勤務していること
(2)全労働日の8割以上出勤していること。
有休の権利があるのは、フルタイム勤務の正社員のみではありません。週1日だけのパートタイマーでも上記の要件を満たしていれば、有休を付与する必要があります。また、全労働日とは、それぞれの従業員が労働すべき日です。仮に、土・日・祝日が休みの従業員であれば、6か月間の総暦日数から土・日・祝日の合計を差し引いた日数が全労働日にあたります。8割出勤のカウントの仕方ですが、主な注意点を以下に取りまとめてお示しします。
・休日出勤した日:労働日から除外
・私傷病休職した日(労働義務免除規定あり)
:労働日から除外
・慶弔休暇した日(労働義務免除規定あり):労働日から除外
・事業主都合による休業の日:労働日から除外
・有休取得の日:出勤した日扱い
・遅刻・早退の日:出勤した日扱い
・産前産後、育児・介護休業の日:出勤した日扱い
・業務災害による休業の日:出勤した日扱い
これらに注意して計算した結果、全労働日の8割以上出勤していれば、勤続6か月を過ぎた時点で有休を付与します。その後は、1年毎に出勤率を計算して要件を満たしていれば、新たな日数の有休を付与することとなります。
さて、設問についてです。改正労働基準法(以下、単に「法」と言います。)に基づき、2019年4月1日以降、年10日以上の有休を付与される労働者に対して、年5日については、時季を指定して取得させることが使用者に義務付けられました。もちろん、従業員が自ら時季を指定して、5日以上を取得すれば問題ありません。取得しそうにない場合、使用者が時季を指定して有休を取得させる必要があります。病気等により休職中で、有休の付与期間中一度も復職しなかった場合など、使用者にとって義務の履行が不可能な場合は法違反にあたりません。ただし、有休の付与期間中に復職したとき、次の付与日までに労働日が5日以上あり、義務の履行が可能な場合は、法の定めるところによって、5日の時季指定・有休取得義務を果たさなければなりません。
法改正から3年余り、有休の取得日数を付与日数で除した有給取得率は、令和2年度に56.6%と3年連続で50%を超え、昭和59年以降では過去最高となりました。法改正前と比較すると3.9%ポイントの上昇です。とはいえ、政府が掲げる「令和7年までに有休取得率70%」の目標には、まだまだ遠いのが現状です。